軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

温泉を入り終えて

おばさんがハイテンションストリーキング全裸バトル。

6階層の湯で、そこそこきれいなおばさんになっていなければ即死の光景だったぜ。

俺は裸で草原を駆け抜ける隊長を見てそう思った。

「つーか、一度この人達の戦闘力を具体的に見てみたいんだけどな、20階層以下を探索する騎士の強さを」

あきらかに第2部隊より強いのは間違いない、今の10階層の湯と11階層の湯を行き来させて、少々インチキに鍛えあげた事を考慮しても。

今の第2部隊の娘達が、全裸の素手で9階層のモンスターをぶちのめせるようには思えない。

ペタちゃんいわく、30階層に到達したダンジョンはまだ世界に存在していない。

つまりこの人たちのレベルでも、30階層は無理という事なのか?

「ペタちゃん、世界最大のダンジョンって28階層なんだよね?」

「まあ、一応そう聞いてるけど、その階層もう埋めてる可能性もあるわよ。

なにしろ27階層まで下りてこられる人間がこの世にほとんどいないみたいだからね。

マスターが前に懸念した通り、28階層を作ってもその階層の存在が赤字になるのは確実だから。

だって誰もそこを探索できないんだもの」

うーん、このトウジ隊長が率いる部隊って何階層まで探索可能なのだろうか?

別にこの人たちが世界最強の存在ってわけでもないだろうから、そのあたりはよくわからない。

セパンス国に限っても、男の騎士団の第1部隊のほうが戦力規模も上だろうしな……たぶん。

もっとも男の騎士団は国防の関係上、将軍にも話を通さないと動かせないので、完全にユーザ陛下の直属である女騎士部隊のように気軽に温泉を調べてこい、とは言えないらしいが。

「ねえマスター、これ飲んでみて、最高に美味しいコーヒーの飲み方を思いついたの!」

「なにこれ、普通のコーヒーに見えるけど……熱っつ!」

常識を超えた温度だが、グラグラ煮立った飲み物を一気飲みしても今の俺の身体はダメージが入ったりすることはない。

俺は何百度あるかわからない謎のコーヒーを飲んでみる、喉の奥にまで強烈な熱さがガツンと来るのは人生では経験がなく妙な気分だ。

そして飲んだコーヒーが喉の奥で一気に気化して湯気を放ち、芳醇な香りが鼻を抜けていく。

「熱さで喉に刺激を与えて、飲みこむのと同時に気化して、香りを強烈に楽しめるの」

「ああ~~、たしかに美味いなこれは、こんなの俺も今まで飲んだことないよ、うん、美味しい」

ストレートな褒め言葉にペタちゃんが、フフンと胸らしき部分を突き出して喜ぶ。

「でも人間はこんなの飲んだら死ぬからな?」

「死ぬの!?」

「これ、200度以上の温度にしてるでしょ? 人間は90度くらいの温度でも一気にがぶがぶ飲んだら喉が焼けてダメージ食らうんだから、こんな高温の油より熱いコーヒーなんて飲んだら確実に死ぬよ。

ダンジョンコアやダンジョンマスター限定の料理だなこれは」

とうとうペタちゃんは、変な創作料理まで始めてしまったぞ。

たしかに美味しいが、こんな人外専用料理なんて覚えると、いずれ人間にとってよくないものを出しそうだ。

人間の熱さ耐性とか感覚で理解させる方法がないからむずかしいな……。

「地上じゃ再現不可能なダンジョン限定高温料理、ウケると思ったんだけど……ダメなのかぁ」

「まあ俺には美味しいから、時々作って飲ませてくれ」

そう言って俺は、この謎物理コーヒーを飲んで喉を高温で焼き、鼻と口から蒸気を吹き出す、超高温の吹き出した蒸気が時折発火し、さらに周囲に香ばしい香りが立ち込める。

……うーん、こんな悪魔の飲み物みたいなもんが普通に美味いから困る、俺も人外になったもんだ。

モニターの向こうでは、湯に浸かり終わった騎士たちが、9階層の入口までの帰還を始めていた。

帰還の最中、いつもしかめっ面だったあの隊長は、ずいぶんとにこやかな感じになっていつものトゲトゲしさが消えていた。

身体の痛みが消えたからか、神経を尖らせる必要が大幅に減ったらしい。

そして2日後、女騎士達がようやく9階層の入口まで戻ってきた。

10階層11階層は、この面子なら特になんの問題もなくするっと抜けていくだろう。

「それでは次の10階層の湯ですが、一時的にトレーニングの成果が上がる湯ではないか、という仮説が立てられています」

「仮説?」

「なにしろトレーニングの成果という目に見えにくいものですから、はっきりとそうだと言い切れないのですよ。

ですが、この数ヶ月で明らかに効果は感じられていますので、大まかにはその認識で間違っていないかと思います」

「だったら10階層の湯に浸かったあと戻ってきて、全速力で9階の湯まで走り抜いたほうがよかったんじゃないかい?」

「……たしかに。 まあ、これまでは畑の目印がありませんでしたからそんな事はできませんでしたが、今ならそれはできたかもしれませんね」

ヴィヒタ副隊長とトウジ隊長がそんな事を話していた。

たしかに言われてみればそうなのだが、できるんだろうか?

「それ可能なの? ペタちゃん」

「んーー? 10階層のトレーニング効果アップ機能は、階層が浅くなるほど瘴気が減って効果は弱まっていくと思うけど、9階ならまだそこそこ効果は残ってるんじゃないかしら」

つまり可能だと。

まあ、歪み治しの湯は何度も浸かる必要はないから、わざわざ9階まで戻るより11階層に行ってくれる方がいいだろう。

「10階層の湯までは何の問題もなく進めましたね、では浴槽へと入りましょう」

私達は、10階層の湯に浸かりました。

「ふう……で? ヴィヒタ、ここから先にあの広場に立てられてた変な運動場が待っているのかい?」

「はい、ここ最近はそことここを何度も往復させられている事で鍛えられている感じですね」

「……この湯から上がったら、あんたらの荷物を全部よこしな、私達が持つ」

「え?」

「この湯、鍛えられる効果が上がるんだろ? 私達も効果を実感したいんだよ」

そういうとトウジ隊長はニッと笑いました。

温泉から上がると、案内兼、荷物運びという役割で来ていた第2部隊の持っている荷物をすべて渡し、私達は身軽な状態になりました。

「よし、じゃあ急ぎで案内してもらおうか」

つまりトウジ隊長達は多くの荷物を持ったまま、私達、第2部隊に追いついてくるつもりなのです。

いいでしょう、全速力で案内いたしましょう、もう何度も何度も11階層は往復していますので温泉までならなんとか駆け抜けられます。

できうる限り全速力で案内してみせましょう!!

結果、久しぶりに吐きました。

もっと急げ急げと後ろから大荷物を持った集団にせっつかれて、実力以上に突っ走らされました。

なんでその荷物で私達に追いつけるんですか、この人たち人間ではありません。

「うえっ……、つ、着きまし、た」

「お疲れ様、お前たちなかなかに体力が付いてるじゃないか、想像以上だったよ、10階層の湯が運動効果をあげるっていうのは本当みたいだねぇ」

すごく嬉しそうな顔で、トウジ隊長がニコニコして、死にそうになっている私達を見ています。

他の第1部隊の方々も、お前たち結構やるじゃんみたいな顔で見ていますが、今は何も嬉しくありません、死にそうです。

「は……早く温泉に入りましょう、ここの湯は肌が綺麗になるだけではなく、体力回復効果もありますか……ら。 ……うえええ」

11階層の湯船に入りようやくひと心地つきます。

「はあああああ、死ぬかと思いました」「心臓がちぎれるかと思ったわ……」

そして第1部隊の方々も温泉に入り、11階層の湯の効果によって肌が若々しく綺麗になっていきます。

そのあまりに劇的な変貌には、皆様も目を丸くして驚いています。

私達も正直驚いています。

これが、あの、狂犬の群れのようだった第1部隊ですか?

シミが消え、シワが消え、傷痕が消え、10代の乙女のような美しい柔肌となった今。

……なんというか、今の私達の眼の前には、ただ目付きが鋭いだけのイケメン美女軍団がいました。