軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

338.アリアリのアリ

その日、俺は自宅でソファーに腰掛けながら書類の束を読んでいた。

日は落ちて夜になっている。昼間の時間もだんだん長くなっているように思えた。

「ふむ……」

「……レイアからの書類ですか?」

ステラは俺の太ももの上に、あごを乗せている。

つまりうつ伏せなのだが……体重はかかっていない。ちょっと変わった体勢である。

「お見合い会の提案書だな」

「ウゴ、もう着ぐるみ持ってきてたよ」

ウッドは綿の上で本を読むディアとマルコシアスを撫でている。

最近、ディアの知識欲はかなり凄い。北の地に行ってからだな。

「ぴよ! 『恋する人の待つ町を旅立って、戦士は荒れ狂う大河へと向かう。リヴァイアサンが潜む、死の大河へと』ぴよ!」

ディアが本の一節を読み上げる。

おお、言えてる!

「完璧な発音ですね……!」

「ちゃんと読めてるじゃないか!」

「ウゴ、難しい字も読めてる!」

「ぴよよ! ありがとぴよ!」

子犬姿のマルコシアスが、ディアの読んでいるところを解説する。

「この『恋する人』というのが、実は母上のことなんだぞ」

「えっ?! 知りません……!」

ステラが頭をがばっと上げる。

「そうなのぴよ?」

「そうなんだぞ」

「そうなんですか……!?」

「いや、またきっとステラの名前を勝手に使ってる物語だろう……? リヴァイアサン絡みの魔物退治で、そんな話があった」

どうどうとステラの頭を撫でる。

落ち着いたステラがまた俺のふとももに頭を乗せる。

「その通りなんだぞ。母上が前に、リヴァイアサンをぽこぽこした話が元になっているみたいなんだぞ」

「なるぴよ!」

「なるほど……」

マルコシアスがディアを撫で、俺がステラを撫でる。

「問題はこのお見合い会、運営側がコカトリス着ぐるみ着用とあることだが……」

「ぴよぴよするんですね……」

俺の頭の中に、コカトリス着ぐるみがぽにぽにと歩き回る光景が思い浮かぶ。

ガチガチに緊張した参加者達を、つぶらな瞳のコカトリス着ぐるみが見守るのだ。

「うーん、これはアリなのか?」

「アリアリのアリ……かと!」

ぐりぐりとステラがあごを俺のふとももに押し付ける。

「コカトリスのふんわり柔らかな、癒やし雰囲気に囲まれて……美味しい果物でも食べながら談笑すれば、成功は間違いなしです!」

「そうだなぁ……」

なんとなく、そんな気がしてくる。

「顔が見えなければ緊張も薄れるでしょうし、いいこと尽くめかと……!」

「……そうだよなぁ……」

そんな気になってきた。

「しかしレイアも強気だな。着ぐるみを投入しようとは……」

俺は書類の束の、最後らへんまでを読んだ。

そこにはこう書いてある。

『ザンザスではコカトリス着ぐるみを進行役にした会合を実施済みです』

……お、おう。

それならまぁ、いいのか……?

ステラの顔を覗き込む。彼女はすでにきらきら、わくわくしていた。

この顔は……。

「……何かしようとしているのか?」

「ぎくっ」

「い、いえ……私もこっそり着ぐるみで混ざろうだなんて、考えてもいないです」

「考えてる顔だぞ」

「顔ぴよ」

「ウゴ……かあさん……」

「うっ、だめですか……?」

「こういう恋愛行事には、さほど興味ないと思ったが……」

俺の言葉にステラが小首を傾げる。

「ええ、まぁ……さほどありませんが……」

ないのか。

「しかしヒールベリーの村の盛り上げ余興係としては、見過ごせるものでもなく……」

「盛り上げ余興係……」

「ボール十個でジャグリングとか、絶対に盛り上がると思うんですよね」

「中身がバレるぞ」

「はっ!?」

どうどうとステラの頭を撫でる。

「まぁ、いいんじゃないか? お見合い会みたいなのは、やる必要があるとは思っていたし」

「エルト様……!」

俺はそこで意気込む。

これはチャンスだ。村に新しい風を呼び込む、いい機会なのだ。

「やろうじゃないか、ぴよぴよなお見合い会!」