作品タイトル不明
286.建設計画書
ヒールベリーの村。
朝、小鳥の鳴き声で目を覚ます。
体を起こして……うーんと体を伸ばしてみる。
肩こりや腰痛がないのが本当に何よりだな。風邪もあまり引いたりしないし、かなり頑丈な性質らしい。
「ウゴ……おはよう、とうさん」
「おはよう、ウッド」
ぐぐっとウッドも体を起こす。
本来なら俺を抱きかかえるようにステラがいて、そのすぐそばにディアとマルコシアスがいる。
予定では……今日で芸術祭の準備は終わりのはずだ。芸術祭中のゲストへの応対は、ホールドとザンザス側にある程度任せる手はずになっている。
理由は単純で、今回来るゲストの多くはすでにホールドや北の国とパイプがあるからだ。
なので、そのほうが恐らくスムーズなのだ。
貴族間の繋がりは、そう簡単に得られるものではない。何回もの縁が必要である。
俺としては、村を宣伝するきっかけになればいいなぁ……くらいだし。すぐに結果が出る話ではないが、積み重ねていけば大きな話にも繋がっていく。
……とはいえ、物寂しい気持ちはある。ステラ達がいないせいなのだが、我慢しないといけない。
「ウゴウゴ、朝ご飯食べる?」
「ん? ああ、食べようか」
一緒に台所に立ち、朝ご飯を作って食べる。
メニューは健康野菜サラダとハム、そして朝からしゃっきりオレンジである。
今日は地下通路の探索はお休みにして、準備に当てるようにしている。馬車や物資を調整し、効率よく進むためだ。
「ウゴ……馬車で三つ目の地下広場に行って、さらに先にも馬車で行く?」
「そう、ある程度先行しておくんだ。そして新しい地下広場から地上に出たら、狼煙で知らせる」
「ウゴ! そうすると馬車が来る……帰りも速くなるね」
「準備は必要だが、最終的にはこっちのほうが速くなるだろう。ザンザス側からも地下通路が見つかって、両方から進めばさらに効率的かもだが……」
「ウゴ、向こうから道は見つかってないんだよね?」
「探索しているが駄目なようだな。まぁ、もう少し進めば変わるかもしれない」
今のところ、村の地下広場からザンザスへは最短経路を進んでいるように思える。
このまま進めば、当然北からザンザスへと入っていく。接続点の候補も絞られる。
もしザンザスから地下通路へ入れれば、探索速度は飛躍的に早くなる。
「ウゴ、楽しみだね!」
パズルマッシュルームはウッドにとって脅威ではない。むしろ活躍できて嬉しいというか……やりがいを感じてくれているみたいだな。
よしよし。
冒険者か……。そういう道もいいだろう。なにせステラという大先輩がいるんだし。
◇
朝ご飯を食べて用意を整え、俺達は家を後にした。
書類仕事もしないといけないからな。
「ぴよぴよ」(もにゅもにゅ)
お散歩コカトリスがもにゅもにゅしながら歩いている。
……パズルマッシュルームを食べながら歩いているらしい。どうやら気に入ったようだな。
村の入口ではナールとブラウン達が明日の準備をしている。
「おはようございますにゃ!」
「おはようございますにゃん!」
「おはよう、皆」
「ウゴ、おはよう!」
足の早い馬を選んで、物資を積み込み始めているな。物資も馬車を使えば、持ち運びを少なくできる。
その分、地下通路をちょっと速く進めるからな。
「すまないな、準備は順調か?」
「いえいえですにゃ! 準備は滞りなく、ですにゃ」
「速度重視なら第三の地下広場まであっという間ですにゃん。明日はかなりの時間を探索に使えると思いますにゃん」
「ウゴウゴ、ありがとう!」
「どういたしましてにゃ!」
その後、少し打ち合わせをして俺はウッドと別れる。ウッドは残って積み込みの手伝いとアラサー冒険者との打ち合わせだ。
パズルマッシュルームとかへの対処法もあるからな。魔物相手の戦闘法なら、彼のほうが先生として適任であるし。
「ウゴ、頑張ってね!」
「ウッドも気を付けてな。それじゃ、また午後に!」
「ウゴウゴ〜」
そうして俺は冒険者ギルドに向かう。
朝ということもあって、人はまだ多くない。
もう一、二時間すればかなり混み合ってくるだろうが。
「ん……?」
ロビーのベンチにちょこんと座っている人物がいる。イスカミナだ。
彼女がこの時間に冒険者ギルドにいるのは珍しいな。大抵、何か報告があっても午後にやってくるし。
「おはよう、イスカミナ。今日はどうかしたのか?」
「おはようございますもぐ! 魔導トロッコの計画、概要作りましたもぐ!」
バッグを掴み、アピールするイスカミナ。
仕事が早い……。昨日の今日だぞ。
まぁ、走り書きか用紙一枚二枚くらいだろう。詳細を書く時間はないし。
「わかった。執務室でじっくり見よう」
「ありがとうございますもぐー!」
執務室に行くと、イスカミナがごそごそと書類を取り出した。
……分厚い。
十五……いや、二十枚くらいある。
「もぐ、とりあえずは魔導トロッコ設置の準備や必要資材やら、おおざっぱなスケジュールですもぐ!」
「すごいな……一日でできたのか?」
「もぐ! ちょっとずつ書き溜めてたもぐ!」
ありがたい話だ。
俺にとっては予想外の魔導トロッコだが、イスカミナは可能性を探っていたらしい。
「じゃあ、早速読ませてもらおう」
「もぐ、よろしくお願いしますもぐ!」
読み込むのにはそこそこ時間が掛かりそうだが……でもある程度までは把握しておきたい。
と、まず表紙を見るとでかでかと書いてあるな。
なになに……?
……ふむ。この村らしいというか……。
『ぴっぴよ鉄道(仮) 建設計画書』