軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

264.パズルマッシュルーム

ヒールベリーの村。

草だんごを作って満足したのか、コカトリス達は帰り支度を始めていた。

「ぴよー」(いい運動になったー)

「ぴよよー」(ちょっとたぷが減ったかもー)

なお作った草だんごは布に包んで渡しておく。

おやつに食べてくれ。

「んじゃ、ぼくもそろそろ帰るねー」

ひょいとテテトカがコカトリスに抱えられる。

……テテトカが歩くより、抱えられて移動するほうが早いからな。

玄関口でテテトカ達を見送る。

「ばいばーい」

「ぴよー」(さよならー)

「ぴよっ」(またねっ)

「ウゴウゴ、またね!」

「お疲れ様です!」

「相談ありがとう、助かったよ」

「はーい……ではではー」

手を振るテテトカがぴよぴよと一緒に帰っていった。

「さて……ウッド、ちょっといいか?」

「ウゴ、大丈夫だよ!」

「……どきどき」

俺とアナリアとウッドが改めてリビングの椅子に座る。

「草だんごの件、テテトカにちょっと聞いてきた」

「ウゴ……! わかった?」

「赤黒いキノコ――ベリーマッシュルームが原因だそうだ。これが真紅の品質でないと、ビッグ草だんごはうまくいかないらしい」

ウゴウゴ、とウッドが頷く。

「ウゴ、あの小さいキノコのかけらが重要だったんだ」

「そう……そして問題は真紅のベリーマッシュルームが簡単に手に入らないことだ」

それから俺は真紅のベリーマッシュルームがザンザスの第三層でしか手に入らないこと、それはかなり困難なことを説明した。

しかし、さきほどアナリアと話してひとつ確認できたこともある。

俺の説明が一段落したところで、アナリアが補足する。

「でも……ウッドの力なら第三層の深部から、真紅のベリーマッシュルームを手に入れることは可能だと思います」

「……ウゴ?」

「この村には経験豊かな冒険者もいますしね」

アラサー冒険者とハットリなら、引率として十分な経験と知識があるらしい。

というより彼らは第六層まで到達している。

しかしそこまで頻繁に潜らないのは、リターンが見合わないからだ。

特にザンザスのダンジョンは状態異常の対策と治癒手段がないと奥へ進めない。

だが状態異常のポーションは高騰しており、ダンジョンで手に入る素材の価値と釣り合わないのだ。

「逆に言えば、ウッドの状態異常耐性を活かせば進みやすい……ということでもある」

「ウゴ……なるほど」

そして俺の悩みどころでもある。

多分、頑張れば真紅のベリーマッシュルームは手に入るのだろう。

問題は……うまく言えないけど、誰がそれを判断すべきか。

第三層に行ったことのないウッドだろうか?

それとも親である俺か、第六層の深部まで到達したステラだろうか?

「ウッド、真紅のベリーマッシュルームがなくても草だんごは作れる。ちょっと手の大きさには合わないけど……作れはする」

「ウゴ……そうだね」

そこでウッドは俺を見つめてくる。

「ウゴ。でも出来るなら、ララトマには最高の草だんごをあげたい……」

「そうか……」

「……うるっ」

アナリアが感動しているみたいだな……。

本当に何かあったのか?

とりあえず判断そのものは俺がしないほうがいいか。ダンジョンに行った経験もないからな。

「……ベテラン冒険者に聞いてみて、行っていいかどうか確認しよう。それからでも遅くないだろう」

「ウゴ、わかった……!」

「本当はステラと一緒に行けば安全安心なのかもしれないが……」

だけど俺の言葉にウッドはもじもじする。

「ウゴ……なんだかそれは、恥ずかしい」

……そうだよな。

俺も好きな女の子のプレゼント選びに、親は来てほしくないもんな……。

それから草だんごの後片付けをしていたところ、また玄関がノックされた。

また来客か。今日はたくさん来るな……。

ウッドが玄関口に行くと、そこにはアラサー冒険者が立っていた。

「こんにちはですぜ」

「ウゴ、いらっしゃい!」

「こんにちはです……!」

珍しい来客だな。

「こんにちは……少し散らかっているが、入ってくれ」

リビングではまだ後片付けを続けている。

まぁ、もう少しで終わりだが。

「おや、草だんご作りですかい?」

「ああ、久し振りにだな。それより……何かあったのか?」

アラサー冒険者が俺の家に来るのは本当にまれだな。

たまに釣りには行くのだが、そういうときは広場で待ち合わせが多いし。

「レイアがいれば彼女にも報告したんですがね……。地下通路の件、覚えてますかい?」

「もちろん。ずーっとザンザスまで繋がっているかどうか調べてるんだよな」

報告は受け取っているが、ここ最近はめぼしい成果はないようだった。

トラップや崩落を警戒しながらなので、非常にゆっくりとしか進めない。

とはいえ着実に前進してはいるはずだったが。

「……もしかして、何かあったのか?」

「ええ、地下通路の地面にこれがあったんでさ」

そう言うと、アラサー冒険者が懐から小さなキノコを取り出した。

傘は黄色で、シメジみたいな形と大きさである。

そしていわゆる白い柄の部分がちょこんと分かれていた。

ふむ……これはわかるぞ。

パズルマッシュルームだな。

魔物の一種で、ザンザスの第三層にいると本には書いてあった。

黄色とか青色とか緑色とか色々あって、下手に刺激するとお互いにくっついて毒を撒き散らす。

接触する傘の色の組み合わせで毒が決まるので、付いた名前がパズルマッシュルーム。

同じ色同士の接触は安全で、素早く対処できれば最小限の手間で済む。

本当にパズルゲームみたいな魔物なのだ。

だがこれがいるということは……。

アナリアも身を乗り出して、パズルマッシュルームをまじまじと見る。

「こ、これは……! 間違いないです!」

「ああ、まさにパズルマッシュルームですぜ」

「ウゴウゴ、これが……?」

「でもまだ、距離的にはザンザスのダンジョンに到達していないはずだよな」

俺の言葉にアナリアがふんふんと答える。

「パズルマッシュルームはこの足の部分で歩きますからね。もしかしたら、ダンジョンを超えて生育しているかもです」

「ザンザスのダンジョンにいるパズルマッシュルームはもっと大きいんで……人の背丈くらいのも珍しくないんですがね」

この歩くシメジが人の背丈くらいか。

ゲームの中ではそんなもんかーくらいだが、実際に見ると驚きだろうな。

「こいつは動いていたのか?」

「いいえ、ほとんど反応はなしでしたねぇ。やはり魔力が足りなくて成長しきれないんでしょうぜ」

「パズルマッシュルームも魔物ですからね。やはり魔力が豊富でないと大きくはならないのでしょう」

「ウゴ……でもこのキノコがいるということは……」

「これ以上の深入りはよくよく考えないと行けない……ということか」

パズルマッシュルームは単体ではほとんど危険がない魔物だ。フラワーアーチャーのほうがよほど厄介である。

マズいのは、密閉空間でたくさんの個体が現れたときと言われている。

お互いに接触して、パズルマッシュルームが連鎖爆発を起こすのだ。

そうなると状態異常を巻き起こす胞子が舞い散ることになる。

野外なら逃げればまだ大丈夫だが、ダンジョン内ではそうは行かない。

迷路状の第三層にパズルマッシュルームが生息しているのだから。

「まだコイツラは小さいし、ほとんど動かないですがね。だけど新人冒険者に歩かせるわけにゃ行かないですぜ。なにせ万が一状態異常に引っ掛かると大赤字だ」

アラサー冒険者が腕を組む。まぁ、これは報告程度か……。

実際、まだ危険はないのだから。より慎重にということなのだろうな。

「状態異常ポーションを用意して、これまで以上に慎重に進めば大丈夫か?」

「コツがわかれば、どうってことはないですからね。パズルマッシュルームは囲まれてパニクるのが一番やばいんでさ」

「なるほどな……」

「でも朗報でもありますぜ。あの通路が空振りの可能性はこれで低くなりやしたからね」

「そうですね、パズルマッシュルームはこの辺りだとザンザスにしかいません。第三層と地下通路が繫がっている可能性は高くなりました……!」

「ウゴ、それなら……!」

ウッドがぐっと拳を握る。

「俺も地下通路を進みたい!」