軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

183.エルフの国へ

スティーブンの村。

朝になり出発の時間になった。

ステラ達の見送りに、村長と黒竜騎士団の面々が並ぶ。

「昨晩はどうもありがとうございましただ……。色々と教えていただきまして。ヒールベリーの村とは、なんとも面白そうな所で」

村長がにこにこ顔である。

そしてすでにステラ達は気付いていた。

昨晩石を買ったナナが村長を少しからかうように、

「実はヒールベリーの村のこと、誤解してなかったでしょう? 話の種に、面白そうな話を言っていただけ」

「へへぇ、お見通しで……」

「おかげでだいぶ会話は弾んだけどね」

「人を埋める領主様なんて、いるわけありませんや。ゆえに話には持ってこいでして。不快に思われたなら、すみませんだ」

「なるほどなんだぞ。勉強になったんだぞ」

ぺこりと頭を下げる村長。

ラダンもわかっていたのか、納得顔である。

確かに娯楽の少ないだろうこの辺りでは、離れた村の事情は格好の話題だ。

全くヒールベリーの村を知らない旅人は、きっとこの話題に食い付くだろう。

知っている人間は、逆に訂正のために食い付く。

いずれにせよ話の種になるという寸法だ。

「いえ、こちらこそ気を使ってもらいました。ご飯もお部屋も良かったです」

そう言うと、ステラがナナに目線を送る。

ナナがお腹をごそごそしてお世話になったお礼の記念品を取り出した。

その記念品を見た、黒竜騎士団の面々が震え上がった。

もちろん、ナナが収納から取り出したのはバットである。

ステラはそのバットをナナから受け取ると、村長へうやうやしく手渡しする。

「こちら、お世話になったお礼です……!」

すすっと渡されるバット。

村長はとりあえず受け取るものの、よくわからず戸惑う。

「へ、へへぇ……これはご丁寧にありがとうございますだ。しかし、これは……?」

「バットです……!」

力強く言い切るステラ。

「今回のフラワー種を倒すのにも、大いに役立ちました」

「ほ、ほう……! なんとも頼もしい! ですが、これには特に魔力はない様子。ど、どうやって使われたので?」

おそるおそる尋ねる村長と顔を手で覆うラダン。

ステラは腰に差したデュランダルを手に取り、構える。

「こんな感じです……!」

びゅん、とステラが軽くスイングする。

「ほほぉ……なかなかのものですだ」

「ええ、これでフラワー種の撃ち出す種を弾き返すんです!」

「……へ?」

村長が固まる。

「いえいえいえ。そんなこと、出来るわけが……」

「出来ます……!」

ぐっとステラが拳を握る。瞳もめらめらと燃えていた。

「ただ、すぐには難しいでしょう。振り方にも色々とありますし。詳しい説明をしている時間はありませんが、ザンザスの冒険者ギルドに問い合わせてもらえれば……」

早口で言うステラの気迫に、村長が頷く。

頷いておいた方がいいと本能が言ってきたからだ。

ステラは満足した顔で、黒竜騎士団の方に向き直る。

「では黒竜騎士団の方々も、お先に失礼いたします。ご武運をお祈りいたします」

「お祈りするんだぞ!」

「色々とツッコミたいだろうけど、よしなに」

ラダンもとりあえず頷いておく。その方が無難だと思ったからだ。

ステラがナナからもう一本、布教用バットを受け取る。流れるような早業であった。

ステラがラダンへとバットを渡そうとする。

「……荷物にならなければ、どうでしょう?」

ラダンは……黙って受け取ったのであった。

それからステラ一行の旅は続いた。

村から離れたところでばびゅんして、東へ東へと進んでいく。

幸い、天候は悪くない。

今日は距離を稼げるだろう。

と、ステラがあるところで足を止めた。

「それで、ここを進むんですか? この川の上を……」

三人の目の前には大きな川が流れている。川にはまばらに船の姿もあった。

「そ、そうだよ」

背中にいるナナの声が少し震えている。

その理由をステラは知っていた。

「……ヴァンパイアは泳げないのでは?」

「うん、僕も泳げない」

きっぱりとナナが言い切る。

ヴァンパイアは日光の他に水にも弱い。大抵のヴァンパイアはカナヅチだ。

「その着ぐるみは、防水じゃないのかだぞ?」

「防水だよ。潜水もできる。でもそれとこれとは別だ。本能的なもんなんだよ……」

「じゃあ、無理してこの上をばびゅんしなくても……」

振り返るステラに、ナナが首を振る。

「いいや、ここから先は魔物密集地帯と村が多い。衝突を避けるなら、小分けに進むしかなくなる。川の上なら船しかないから安全だし早く行ける」

「ふむ……わかりました。怖かったら言ってくださいね」

「……大丈夫。この着ぐるみは浮くからね」

そんな感じで川の上をばびゅんしながら、進んでいく。

飛び上がり、赤い軌跡を残しながら空を駆ける。

そして川に着水する寸前に、魔力をみなぎらせたステラは水面を蹴る。

その様子にナナが驚く。

「川を踏み台にしてる……!?」

「慣れると意外に楽しいですよ!」

水面を蹴りながら、ばびゅんばびゅんして川をどんどん東へ進む。

また村に泊まる頃には、かなり周囲の風景も変わってきた。

木々は太くなり、茂みは深くなる。肌寒さはまるでない。

ジャングルに近くなってきたのだ。

くんくん、とマルコシアスが鼻をきかす。

「ヒールベリーの村もかなりのものだったけど、この辺りも植物の匂いがすごいぞ」

「エルフの国は雨も多いですし、暖かいですからね。植物がよく育ちます」

「懐かしいね。前に来たときは驚いたものだけど……今来ても、緑の濃さと多さに驚くよ」

特に問題なく、エルフの国々の入り口までステラ達は辿り着いたのだ。

明日にはクラリッサの所へと行けるだろう。

感慨深く、ステラはつぶやく。

「……久し振りの故郷、ですね」

バットの布教

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