軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118.騎士にとって恐るべきこと

ララトマとテテトカが話し終わった後――ララトマから村に移住したいとの申し出があった。

どういう話し合いだったのかはわからないが、テテトカが村の良さをアピールしてくれたらしい。

嬉しいことだ。

実際に暮らしている人からの口コミで住民が増えるのは、俺のしてきたことが間違ってない証しでもある。

ララトマは期待に目をきらきらさせていたし。

「テテトカおねーちゃんから聞きました! わたし達も地上に移り住みたいです!」

「ああ、もちろん歓迎だ」

「ありがとうございますです!」

大樹の塔はまだ余裕がある。

ララトマ達も塔に住むことになった。

階層は分けないとだが、ドリアード全員が入るスペースはあるのだ。

元々テテトカとララトマのグループは知り合いだったらしいし、同居も問題ない。

むしろ一緒に暮らせることに喜んでいた。

地下のコカトリスも大樹の塔の裏にある宿舎で暮らしてもらうことになった。

姉妹と対面すると、コカトリス達はもこもこと抱きあい――

「ぴよっぴー」(よろしくー)

「ぴよ!」(こちらこそ!)

「ぴよっぴ!」(ありがとー!)

みたいな感じだな。

この光景を見たぴよ博士のレイアは頷きながら、

「コカトリスは温厚で仲間思いですからね。うまくやるでしょう」

「異なる群れが合流しても争いが起きないんだっけか……」

「そうです! お詳しいですね!」

「ふむ、ディアの為に勉強したからな。まぁ、目が光る以外は特に変わったコカトリスでもなさそうだし」

「食料の関係で体格は小さかったみたいですが、いずれ大きくなるでしょう」

なんにせよ、仲良くやれそうなのはいいことだ。

そうそう、あとはライオン像だな。

機能停止させたライオン像は好きに使っていいらしい。

親交も兼ねて、塔で草だんごをこねこねしながら聞いたんだが……。

こねこね。

こねこねこね。

テテトカもララトマも、ライオン像が自分のモノという意識がないようだな。

二人に意見を聞いても、どう見てもピンと来てない。

「あの像はひめさまとコカトリスさんが持って地下に行っただけですしー」

「最初からあそこにあったんです。特にわたし達もなにもしてないです!」

「……ドリアードは関知していないということか」

ララトマの草だんごの作り方も、テテトカによく似ている。こねるリズムが一緒だ。

こねこね。

「とりあえず、わたしは見送っただけー……」

「わたしもたまに触ってましたけど、それだけです」

「ふむ、そういうことなら有効活用させてもらうか……。ありがとう」

「いえいえー」

「お役に立てたのなら!」

あの像は歴史的にはかなりの価値がある。

解析が終わったら、どこかの博物館や研究機関に引き取ってもらうことになるだろう。

ライオンの騎士は――新しく作る冒険者ギルドに置くのもいいかもな。

ちょうど目を引く飾り物が足りないとは思っていた。

乳白色で綺麗だし、領内の地下で見つかったものでもあるしな。

うん、悪くなさそうだ。

そして時系列で整理すると……。

・最初にひめさまと呼ばれる魔法使いとコカトリスがいた。

・テテトカ達が今の森のある場所に移住してくる。

・ひめさまとコカトリスが、ライオン像を作る。

・このライオン像の設置が終わってから、ひめさまとコカトリスは去っていった。

・その後、ララトマ達が移住してくる――テテトカ達がいるとは知らずに。

もっとも、それぞれの出来事の間にどれだけ時間が流れていたか分からない。

なにせドリアードが覚えていないからな……。

「ララトマが住み始めた当初から、あのライオン像と地下空間があったんだな」

「ええ、ですです。むしろひめさまとコカトリスというのは知りませんです」

「へー、じゃあ少しズレがあったんだねー」

「そういうことだな……」

だとすると、ララトマは地下通路のことをほとんど知らない。

女王から言われて、来たときには全て揃っていたわけだ。

「あのコカトリス達は……最初からあそこにいたのか?」

「はいです。わたし達が来る前から、地下に住んでました」

「ふむふむ……」

コカトリスに事情は聞いてみるけど、望みは薄いな……。

地下空間をざっと調べてわかったことはみっつ。

ひとつ目、あの空間は魔力で人工的に作られている。地震でもびくともしない。

安全性はばっちりだ。

ふたつ目、ひっそりと奥へ続く通路があった。これについては後日調査。

ララトマはこの奥へはめったに行かず、何があるかは知らないようだ。

みっつ目、地下空間の隅にフラワーキャッスルの根があった。これはかじられており、すでに枯れている。コカトリスの餌になっていたみたいだな。

「だとすると、やはりキーパーソンはひめさまか」

「そういうことになりますかねー」

テテトカが話しながら、出来上がった草だんごを食べていく。

もぐもぐ。

見慣れた光景だな。

これで出来上がりの数が半分くらいになるんだが、ある意味安心する。

しかし、テテトカの草だんごつまみ食いを見たララトマは驚きの声を上げる。

「おねーちゃん……!? それ、わたし達以外の前でもやってたの!?」

「やってるよー。ごっくん。これがおいしいんだよね」

「ええー……でも他の人達の前じゃ……」

「いや、気にしないでいいぞ。俺も慣れてるからな」

そう言って、俺も自分で作った草だんごをつまんで食べる。

なかなかどうして、これがうまい。

間違いなくドリアードの流儀で、他でやったら怒られるけど。

「ほら、エルト様はドリアードをわかってるでしょ?」

「……馴染みすぎている気もしますです」

「まぁ、否定はしないが……」

でも出来上がったのをすぐ自分で食べちゃう、この背徳感。

意外とやめられない。

そう……前世で夜中にカップラーメンにお湯を入れて、そのまま食べたのに似ている。

もぐもぐ……。

「ララトマも食べよ、ねっ?」

「はわー……まさか人前でもこれができるなんて」

でも食べ出すと止まらない。

ララトマも結局、作った草だんごの半分を食べたのだった。

まずはひとつ、打ち解けられたかな?

まぁ、ドリアードと付き合うには、向こうの流儀に自然体で乗ればいいのだ。

一方、村の北側。

騎士の一団が土埃を上げて、村へと近付いていた。

彼らは黒竜騎士団。

王国でも七大騎士団のひとつ。

紛れもない名門騎士団である。

騎士達が、先頭を走る大男に声を掛ける。

「もうすぐ、ヒールベリーの村ですね。弟君とステラがいるという……!」

「いまこそ雪辱の時、Sランク冒険者などひとひねり! きっとトリスタン卿は卑怯な手で負けたに違いないのです!」

「我ら、ドラゴンをも討つ名門の騎士……! 次期団長と共に、屈辱の歴史を塗り替えましょう!」

血気盛ん。

さらには猪突猛進がぴったりの騎士の言葉。

だが先頭の騎士――エルトの兄、ベルゼルは小首を少し傾けながら、騎士達の勢いを抑えた。

「威勢がいいのは悪くないがな、使いの途中で立ち寄るだけだ。無礼があってはならんぞ」

「ええ……ですが、我らなら必ず……!」

「なんだか嫌な予感がするんだよなぁ。そのステラというのも、本当に強いんじゃないか?」

「尾ひれが付いているに決まっています! 伝説の半分でも事実なら化物でしょう……そんな人間はいるわけがありません」

一斉に頷く騎士達。

さらに彼らは続けて、

「コカトリス以外の魔物で、我らの魔法と剣に貫けぬものなどありません!」

「そうです……。ミスリルをも体毛で弾く、あの恐ろしいコカトリスでなければ恐れるに足りません……!」

「ええ、人里にはめったにいるはずのないコカトリス以外には必ずや勝利できます!」

コカトリスはほぼあらゆる魔法を防ぐ。しかも物理攻撃にも非常に強い。ドラゴンよりも攻撃力は低いが、タフなのである。

そのためコカトリスは普通の攻撃ではほとんど倒せない。貴族出身者にとって、実はドラゴンよりも恐るべき相手がコカトリスなのだ。

そして騎士になる過程に、ひとつの訓練がある。コカトリスの住む森で一晩明かすというものだ。

これは貴族の子弟から、非常に恐れられている。

なにせコカトリスには魔法が効かず、剣も無駄。なまじ知識があるゆえ、震えが止まらないのである。

コカトリスは温厚だがそれが近くにいると思うと、本能的な恐怖と生物としての格差を感じ取ってしまうのだ。

それがまぁ、訓練になるのだが……。

これが世に言う「コカトリス試し」である。

この騎士達も戦ったことはないが、コカトリスの逸話や戦闘力は叩き込まれていた。

そんな騎士達の言葉を聞いて、ベルゼルは一言。

「ふむ、まぁ……あまり気負うなよ」

彼らはまだ知らない。

コカトリスの楽園へ突入しようとしていること。