軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

召喚された意味

「ただ、聖女様にシーナ様の料理を食べていただくのはいいかもしれません」

ハストさんの言葉に、ふむ、と考える。

聖女であるしずくちゃんに私のごはんを食べてもらう。

それの意味することは――

「私のごはんを食べれば、しずくちゃんのスキルが使えるようになるかもしれない、ってことですよね」

そう。私のスキル『台所召喚』はスキルを強くする力もある。

だから、今はスキルを使えないしずくちゃんでも、私のごはんを食べればスキルが使えるかもしれない。

「はい。もし、聖女様がスキルはあるのに、その力が弱く使うことができない場合、シーナ様の料理の効果があるうちは使えるかもしれません」

「ですよね」

「あと、もし、聖女様が僕みたいな体質だとすれば、僕と同じように体が強くなれば、スキルを使えるかもしれない」

「うん。レリィ君みたいに、スキルが強すぎて、体に合っていなかった場合も使えるようになるんだもんね」

スキル『台所召喚』はすごい。汎用性がある。

まだわからないことも多いスキルだけど、もし、しずくちゃんが今、言ったような二つのパターンに当てはまっていた場合、私のごはんを食べれば、スキルが使えるかもしれない。

「これまでは、近づくこともできなかったけど、しずくちゃんが北の騎士団に来たら、食べてもらえる可能性があるってことなんですね」

「はい。王宮では聖女様は手厚く保護されていました。基本的には特定の者しか会うことはできず、口に入れるものも厳しく管理されています。しかし、ここは北の騎士団。特務隊が来るとは言っても、チャンスを作ろうと思えば、いくらでも作れます」

ハストさんの言葉に、なるほど、と頷く。

特務隊の目をかいくぐり、しずくちゃんに私のごはんを食べてもらう。

そうすれば――

――聖魔法で結界を張り直すことができる。

そのことを思えば、胸の鼓動が大きくなった。

――もしかして。

――私はそのためにここにいるのかもしれない。

胸がドクドクとうるさい。

でも、それに相反して、なぜか頭はスッと冷静になっていく。

ただの巻き込まれ召喚だと思っていた。

でも、もし、私が召喚されたことに意味があるなら。

……それが、しずくちゃんが聖女のスキルを使うために必要なのだとすれば――

胸の鼓動は大きくなり、頭はその音を客観的に認識している。

その不思議な感覚に集中していると、ふと、ハストさんの優しい声がした。

「シーナ様。あまり深く考えないよう。聖女様がなぜスキルを使えないのかはいまだにわかっていません。ですから、シーナ様の料理を食べれば、絶対にスキルが使えるようになる、とは、私は考えていません」

「はいl

「……むしろ、そのことを重要視するあまり、シーナ様のスキルが漏れることを危惧しています」

「そうだよ。スキルが使えるとか使えないとかは、本当はシーナさんには全然関係ないんだ。だから、絶対に食べてもらう! みたいなのじゃなくてさ、できれば、ぐらいでいいと思う」

「うん」

水色の目と、どこか心配そうな若葉色の目。

その二人にわかった、と頷き返す。

そして、ハストさんは話を続けた。

「シーナ様。私は聖女様が結界を張ることができればいい、と考えています。しかし、それはこの国のためや聖女様自身のためではありません。……ただ、そうすればシーナ様がもっと自由になれるのではないか、と」

「私が、ですか?」

「我ながら、なんて勝手な願いだろう、と思います。けれど、私は――」

ハストさんはそこで一度、話を止める。

そして、じっと私を見つめた。

「あなたが一番、大切だから」

優しくて、熱い水色。

その色がまっすぐに私を見るから、ドクドクとうるさかった胸が、次は違う音に変わった。

なにこれ。鼓動の振れ幅。

「あ、りがとうございます」

冷静に、落ち着いて、返事をしたつもり。

でも、ちょっとたどたどしくなってしまったし、顔にいたってはどんな顔をしていいかわからない。笑えばいいのかな。いや、もう、曖昧に笑うのもできているかわらかない。なんかもう、それさえも怪しい。

「シーナさん」

そんな私の腕にきゅっと与えられるあたたかな重み。

うん。しってる。このあとあれがくるな。

「僕はもう、身も心もシーナさんに奪われてるから。はじめて、も」

はい。きました。語弊。

うっとり顔の美少年。私のやわらかいところが削られるヤツ。

「うん……ありがとう」

一体、なにに対してのありがとうなのか。

自分でもよくわかってはいない。

なぜなら、さっきまで冷静だった頭の中は、今はなぜか靄がかかったようになっているからだ。頭の中身の振れ幅。

「おい、話は終わりか?」

そうしていると、出窓からまーくんがけっと言いながら、話をまとめていく。

「じゃあ、とりあえず、シズクが来るから準備をして、上手くいけばこいつのよくわかんねぇ料理をシズクに食べてもらうってことでいいのか?」

「ああ、そういうことだな」

「……その時にシズクの意志が尊重されるなら。俺は邪魔はしない」

「もちろん、しずくちゃん自身がどうしたいのかっていうのが一番、重要です」

うんうん、と頷く。

とにかく今は、しずくちゃんが、なぜ北の騎士団に来たいと思ったのかすらわかっていないのだ。

とりあえず、スキルの使用についてや、今後の指針のようなものはできたから、あとはしずくちゃんが来てから、いろいろと考えていけばいいだろう。

「では、これからは、しずくちゃんがここで快適に暮らせるように整えていくことにして……」

話し合いの終了ということで、胸の前でパンと手を打つ。

そして、実はこの北の騎士団に到着してから、ずっと気になっていたことを切り出すことにした。

「あの」

今、言うことじゃないかもしれないけど。

「そろそろ、ここの厨房に入ってもいいですかね?」

ごはんが、作りたいです!