軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イケメンシロクマ

目玉焼きのおいしさは本当にすごい。

ちょっと焼きが甘くて、白身がしっかり固まっていなくても、それはそれでおいしい。

そして、弱火でしっかり焼いて黄身の火を通した完熟目玉焼きだって最高においしい。

そして、ベーコンのおいしさもすごい。

そのまま焼いてもよし、スープに入れてうま味を出すもよし。

そんな二つを贅沢にも一緒にした至福のメニュー! それがベーコンエッグ!

まずは表面だけ少し固くなった黄身にそっとフォークを入れる。

すると、黄身がとろっと流れてきて……。

それにこんがりと焼けたベーコンをつけて、口に運んだ。

「んっ、おいしい……」

香ばしいベーコンにもったりとした黄身の濃厚さがからむ。

目玉焼きの控えめな塩分も、ベーコンの塩気があればちょうどいい。

そして、なんせできたてあつあつ。湯気がゆらゆらと揺れる姿におなかも心もぽっかぽかだ。

知らず知らずのうちに笑顔になって、そのままパクパクと口に入れていく。

お皿に残った黄身を最後の一枚のベーコンにしっかりとつけて食べれば、あっという間に完食してしまった。

「ごちそうさまでした」

ソファに座り、左手でお皿を持ったまま食べていたから、手を合わせることはできないけれど、しっかりと食事の挨拶をする。

すると、手に持っていたお皿とフォークが光となって消えていった。

「おお……」

きらきら光る粒に思わず声が出る。

なにこれ、すごいな。スキルで出したものだから用がなくなったら消えるってことなのか。

まだまだ謎が多いスキル、『台所召喚』。

でも、知れば知るほどそのスキルに惹かれて行く。

……これって皿洗いしなくていいんだよね?

神かよ。

「……不思議なスキルだな」

消えたお皿とフォークに感動していると、正面から低い声がかかった。

……あ、そういえば、いるんでしたね。

「では、イサライ様、食事も済んだようなので、本題に入ってもよろしいですか」

最初に呟いた言葉とは違い、しっかりと敬語を使い、私をじっと見据える。

その目は鋭く、氷のような水色だ。

「はい。待ってもらい申し訳ありません」

ソファに座っている私から少し距離を取っている彼に少しだけ頭を下げた。

そう。私が台所から帰ってきた時にちょうど私のことを目撃した騎士である。

私の護衛をしてくれている彼は名前をウォルヴィ・ハストさんと言う。

銀色の短い髪に水色の目。顔つきこわい。体つきでかい。なんか強そう。

そんな彼はどことなくシロクマに似ている。たぶん。私基準ではすごく似ている。こうグアァア! とか言って両手を上げてアザラシを狩っているような感じなのだ。

鋭い目つきであまり表情を変えない。雰囲気はこわいが、よく見るとその顔は整っている。

よって、私は彼をイケメンシロクマと呼ぶことにした。心の中で。

そんなイケメンシロクマは見た目通りに無口ならしく、これまではほとんど話したことがなかった。

せいぜい挨拶と最初に会った時にした自己紹介ぐらいだ。

でも、今は向こうからこちらに聞きたいことがあるようで……。

まあ、突然目玉焼きを持った女が現れたら驚くよね、うん。

むしろ、私が食べ終わるまで待ってくれたことがすごいと思う。食べる私も私だけど、待ってくれたイケメンシロクマは案外、見た目と違い、心は優しいのかもしれない。

「イサライ様はスキルの確認をしたとおっしゃっていましたね」

「はい。ここでぼんやりしていても仕方ないし、せっかくだから試してみようと思って」

「『台所召喚』のスキルを使うと、イサライ様の体が転移する、ということなのですね」

イケメンシロクマの言葉にそうです、と頷く。

ベーコンエッグを食べる前に簡単に概要は説明しておいたから、イケメンシロクマも考えてくれていたのだろう。

「信じがたいですが、確かにイサライ様の気配はこの部屋から消えました。私は扉の前で待機していましたが、緊急事態かと部屋に立ち入らせていただきました」

「あ、そうだったんですね」

だから、私が台所からこの部屋に帰ってきた時にここにいたんだね。納得納得。

「イサライ様の姿は見つけられず、なにか手がかりはないかと部屋を見ていたのです。すると、イサライ様が目の前に現れた。本当に突然で、それがスキルの力だと言われれば納得するよりほかはありません」

イケメンシロクマが低い声で淡々と告げる。

でも、その言葉はなにやら不穏だ。

口振りが信じられないけど信じるしかない、仕方ない、みたいな感じだよね。

「あの、どうやら、私が別空間にある台所に召喚されるみたいなんですけど、こういうスキルはないんですか?」

私、普通にワープして普通に料理を作って普通に戻ってきたんだけど……。

「はい。私はスキルに詳しいわけではないので、絶対ではありませんが、聞いたことはありません。この世界を転移するような術は見つかっていませんし、やはり異世界から召喚された方はこちらの世界の枠にははまらないのかもしれません」

……そうか。夢のキッチンを作るぞ! と意気込んでたけど、そもそもワープできること自体がおかしいのか。

「イサライ様」

イケメンシロクマが鋭い水色の目で私を見る。

「スキルのことは内密にしたほうがよろしいかと」