軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

121.捉えた。

―ロープ視点―

「皆、準備は大丈夫?」

俺の言葉に、視線を向ける孫蜘蛛達と子蜘蛛達。

彼等は、のろくろちゃんの作る結界に守られているため真っ黒な姿をしている。

「のろくろちゃんの作る結界に違和感は無い? ちょっとでもいつもと違ったら脚を上げて教えて」

皆を眺めながら質問をするが、問題は無いようだ。

「今日の仕事は重要だから、気を引き締めて」

皆の前脚がパッと上がる。

凄いな、練習したわけではないのに上げる角度が揃ってる。

「今日の調査は、主が気にしている『声』の出所を調べる事。オウ魔界王が結界の外に出たら、おそらく声が聞こえてくると思う。その声には力が含まれているはずだから、その力を捉えて欲しい。ただ、何も起こらない可能性もあるけどな」

俺の言葉に前脚を上げて応える蜘蛛達。

「もし、声が含む力を捉えたら俺にすぐに知らせて欲しい。それと自分の周りにいる仲間にも知らせて欲しい。あと、少しでも不穏な物を感じたらすぐに手を引いて、安全を確保。絶対に、危ない事はしないように」

深追いして蜘蛛達に何かあったら主が悲しむから、それは絶対に駄目だ。

「では、今日は宜しく」

俺の号令に、四方に散っていく蜘蛛達。

どの蜘蛛達も、闇を見事に使いこなして神国を自由に動き回っている。

今日も、神達にはバレずに仕事が出来そうだな。

「さてと、あと20分かな」

手に持っていた小型のパネルを起動させて、魔界の様子を見る。

今から20分後に、声を聞くためにオウ魔界王が結界の外に出る。

何が起こっても対応できるようにしておかないと。

主があれだけ気にしている声だ。

きっと何かある。

「そろそろみたい」

パネルに、オウ魔界王が結界の外に出るのが見えた。

「皆に合図を送って」

傍にいる子蜘蛛を見ると、前脚が上がった。

「ありがとう」

よしっ、準備は調った。

あとは、オウ魔界王からの合図が来るのを待つだけだ。

パネルに映し出されているオウ魔界王をジッと見る。

合図を見逃すわけにはいかないからね。

神国には、魔界より多くの神がいる。

そのため、あちこちから神力を感じる。

この中から、声が含む力を探るのはちょっと大変。

しかも声が含む力が、神力なのか光の魔力なのかも分からない。

もしかしたら、別の力の可能性だってある。

でもおそらく神力だと思う。

神国で一番強い力だからね。

パネルの中のオウ魔神が片手をあげるのが見えた。

「合図だ!」

傍にいた子蜘蛛が、仲間達に知らせたのが視界の隅に見えた。

ここまでは順調だ。

あとは、力を捉えるだけだ。

「……あれ? 誰からも合図が来ない?」

オウ魔界王から合図が来てから、既に数分。

神国にいる蜘蛛達から、合図が来るはずなのに来ない。

力を捉える事が、出来なかったのか?

神力を中心に調べるように言ったのが、駄目だった?

でも、魔界に影響を及ぼすほどの力を持っているのは神力だ。

光の魔力では弱い。

もしかして感知していない力があるのか?

クイッ。

「えっ?」

腕を引かれて慌てて視線を向けると、傍にいた子蜘蛛がパネルを指している事に気付いた。

「どうした? あっ!」

パネルには、体勢を崩して胸元を押さえているオウ魔界王の姿が見えた。

サブリーダーがすぐに結界を張って守ったが、意識が無いように見える。

調査はここまでだな。

「皆に、えっ?」

今、微かに不安定な力を感じたような。

ピッ。

ピッ。

ピッ。

「合図が来た!」

合図を送って来た場所は?

「創造神がいる場所から?」

今回の調査は、神国の王である創造神に許可をもらっている。

その時の様子から、創造神は声について知らないと判断したけど。

騙されたのか?

パネルを操作して、創造神がいる場所の近くを映し出す。

解放されたあの場所には、解放された翌日から神や神族達がひっきりなしに訪れている。

今日も、神や神族達の姿があるがおかしな行動をとっている者はいない。

「創造神の様子は? 彼の周りにいる神達の様子も気になる」

創造神の傍にいる孫蜘蛛に合図を送り、返信を待つ。

「来た。青色だから問題なしか」

セブンティーン達が作ったパネルには、青色ボタンと赤色ボタンが付いている。

これは、問題が起こった時にボタン1つで異常を知らせるために作られた物だ。

今回の様な場でも、問題が無ければ青、問題や異変があったら赤。

ボタン1つで返信が出来るので、仲間達からの評価もいい。

そして今回は青。

創造神のいる場所から声が含む力が感じられたが、彼と周りにいる神達に異変は無いという事だろう。

「そうなると、あの場所が問題という事か?」

それと合図が来る前に、微かに感じた不安定な力。

あれが、声に含まれる力なんだろうか?

創造神達は、あの力を感じなかったんだろうか?

一瞬だったけど、確かに感じた力。

見逃すとは思えない。

これは早急に、確認しないと駄目だな。

魔界をパネルに映し出し、オウ魔界王の様子を見る。

サブリーダーがすぐに動いたから、大丈夫そうだ。

「今日はここまでかな。皆に引き上げるように伝えてくれる?」

傍にいる子蜘蛛に伝えると、俺を見て首を傾げる。

あれ?

「どうしたの? 気になる事でもある?」

子蜘蛛の様子をジッと見る。

「あれ、この気配」

さっき感じた不安定な力と同じだ。

でも、何故?

オウ魔界王は既に結界の中にいるのに。

ピッ。

「合図?」

パネルを見ると、赤い光。

これは問題や異変が起きた時に調べる色。

何処だ?

「創造神の傍にいる孫蜘蛛からだ。行こう」

俺と子蜘蛛が急いで創造神のいる建物に向かう。

その間に、もう一度。

創造神の傍にいる孫蜘蛛から、異変が知らされた。

闇から闇に移動して、創造神のいる建物の中に入る。

中は解放されても静かだ。

創造神の傍で待機している孫蜘蛛のいる場所を確認すると、闇から出る。

そして、創造神のいる部屋の扉を思いっきり開けた。

バターン。

「おじゃまします!」

驚いた様子でこちらを見る、創造神と周りにいる神達。

そして、確かに感じる不安定な力。

部屋に入ると、さっきまで微かに感じていたその力を強く感じた。

「体に異変は?」

「えっ?」

俺の言葉に驚いた声を出すフィオ神。

部屋の中には、創造神、フィオ神。

そして第1位のガルアル神がいた。

「ロープ。どうしたんだ?」

「この部屋から、不安定な力を感じたんだ」

フィオ神の言葉に簡潔に答えると、創造神とガルアル神が焦った表情を見せた。

「3柱は、何か聞こえた? それとも、今までと考えが変わった?」

俺の質問に、創造神とガルアル神は首を横に振る。

「何事だ?」

部屋に入る扉は2カ所あるようで、別の扉が開きカシュリア神が入って来た。

そして俺を見ると、彼女の後ろにいた神達が武器に手を掛けた。

「やめろ。彼等は問題ない」

「大丈夫。神国を守るために、呪界から来てもらっている者達だ」

フィオ神の言葉と創造神の言葉に、神達は武器から手を放した。

「どうしたんだ?」

カシュリア神が俺を見たあとに、フィオ神に視線を向けた。

「声について話しただろう? その関連だ。この部屋から不安定な力を感じるらしい」

「えっ?」

フィオ神の返答に、カシュリア神が部屋の中を見回す。

そして首を傾げて俺を見た。

「この部屋には、創造神とフィオ神と我が兄のガルアル神しかいなかった。えっと、彼等は」

チラッとフィオ神とガルアル神を見るカシュリア神。

「何もしていないからな」

ガルアル神の言葉に頷くフィオ神。

3柱が創造神に向く。

「違う」

彼等の様子から、どうやらいい関係が築けている事が分かった。

それは良かった。

でも、力の発生源は何処だ?