作品タイトル不明
117.目的は何?
ロープから、呪いを固めて出来た黒い塊についての報告を受けた。
今のところ、黒い塊は全部で5個見つかった。
神達の集まりで見た、黒い塊の力に怖気づいた神が2柱。
黒い塊の処分に困っているそうだ。
1柱は、考え中。
残りの2柱は使う時を模索中らしい。
そして黒い塊だが、どうやらある者が創造神を狙う神達に渡したみたいだ。
ただし創造神になりたい全ての神に渡されたわけでは無い。
ロープの調べた情報から、目的の為なら手段を選ばない神達が選ばれていた。
「神達について、かなり詳しく調べているな」
目的の為なら手段を択ばない神かどうかなんて、時間を掛けて調べないと分からないだろう。
ロープのように記憶装置を自由に見られれば別だろうけど。
「うん、俺もそう思う」
俺の言葉にロープが頷く。
創造神になりたいと思う事は、神である以上おかしい事ではないらしい。
しかも驚く事に、5、6百年に1度は創造神になれるチャンスがある。
その方法は、選挙。
神の支持が創造神より多い場合は、創造神の入れ替えが行われるそうだ。
成功した神は未だにいないそうだが、選挙期間はかなり凄い事が起こるらしい。
詳しくは教えてくれなかったけど、呆れた様子だった。
ちなみに、この選挙に神族達は参加できない。
お茶会で選挙の事を聞くと、神族達の不満や意見が沢山聞けた。
一番多かった意見は「神国の事なので、我々も参加したい」というものだった。
まぁ、そう思うのは当然だな。
神族がいないと神国は成り立たない。
それなのに、神国のトップを決める選挙に参加できないのだから。
「黒い塊を渡したという存在は、何が目的なんだろうな。『創造神になる夢を叶えてあげたい』なんて、可愛い理由では無いだろうし」
「ははっ。そんな理由だったらいいよね。でも違うだろうな。黒い塊をばらまいた神達が全員使ったとしたら……神国の崩壊が目的かな?」
ロープの意見に眉間に皺が寄る。
神国の破壊。
神がそれを考えるだろうか?
でももし、破壊が目的なら……いや、違うな。
「破壊が目的なら、自分で壊すだろう」
「あっ、そっか」
何が目的だとしても、誰かの気持ち次第だなんて変だよな。
実際、力を見て2柱は扱いに困っているし。
「目的は不明だな」
「うん。黒い塊を渡した存在を探しているけど、全く手掛かりが無いんだよな。それも不思議なんだけど」
「そうだな」
ロープたちの捜索から隠れる事が出来るなんて、凄い力を持っている神か?
でも、それほど凄い力を持っているなら、創造神に名乗りを上げそうだけどな。
ん~、表に出られない存在?
罪を犯した神?
「主。処分に困っている神と接触して、黒い塊を手に入れて来る予定だけどいいかな?」
「あ~、それなんだけど。フィオ神から創造神に報告してもらおうと思っているんだ」
ロープは密かに回収したいみたいだけど、有効活用させてもらいたい。
「えっ? 創造神に?」
「うん。もちろん最終的には、呪界に持って来るけど。回収は、創造神から指示を受けた神達にやってもらおうと思う」
神達に、創造神が持つ力の一端は見せられた。
あとは、創造神には隠し事は出来ないと、知らしめる必要があると思うんだよな。
何か事を起こそうとしてもバレている可能性があれば、抑止力になるから。
「ん~。しっかり見張りを付けるから、大丈夫かな?」
あっ、ちゃんと回収できるか見張りがいるから、孫蜘蛛達の負担が増えるのか。
「ごめん。見張りをしている孫蜘蛛達の苦労や負担を考えていなかった。のろくろちゃんも手助けてしてくれているんだったよな」
仲間達の負担を増やすのは駄目だ。
「皆、苦労や負担だとは思ってないよ。というか、皆は見張りを楽しんでいるから大丈夫」
「楽しんでいる?」
神国に行って闇に紛れて過ごしているんだよな?
かなり大変そうだけど、楽しいのか?
「バッチュが忍者みたいだと言ってから、誰がより優れた忍者になれるかと競っているんだよ」
忍者?
闇に潜んで情報を取る。
確かに、忍者の様だな。
それにしても一つ目のバッチュは、何処で忍者を知ったんだ?
あれっ?
そういえば昔、木と木の間を自由に行き来している子蜘蛛を見て忍者みたいだと思った事があったな。
懐かしい。
「主?」
「あっ、ごめん。楽しそうなのはいいけど、無茶だけはしないように注意して欲しい」
孫蜘蛛達は、結構いい性格をしているし無茶はしないと思うけど、もしもという事があるからな。
「分かった。任せて」
「ロープも無茶はしないように。神国には不安要素が色々ある。何が起こるか分からないから」
俺の言葉に神妙に頷くロープ。
そんな彼の頭をそっと撫でた。
どんな報告があるのか不安だったため執務室を使ったけど、天井を見て溜め息を吐いた。
自分の……いや、リーダーの理想がギュッと詰まった自分らしき存在に見降ろされていると、落ち着かない。
「じゃ! 親玉さんのところに行った後に、神国に戻るから」
「あぁ、気を付けて」
親玉さんに、孫蜘蛛達の働きを報告する約束があるらしい。
やっぱり自分の子供達の活躍は気になるんだろうな。
ロープを見送ってから、部屋の隅に待機しているリーダーを見る。
もう一度、お願いしてみようかな。
「リーダー。天井の絵を変える気はないか?」
「全くないです」
……はぁ。
俺の意見を一番聞いてくれるリーダーなのに、この点だけは折れないんだよな。
「もう少し豪華な衣装に変えようと思っています」
「えっ?」
チラッと天井を見る。
十分、キラキラしているけど?
これ以上にキラキラするの?
「このままがいいと思う。うん、これが一番だよ」
「そうですか? もっと華やかな方が主にぴったりだと思うのですが」
絶対に止めないと。
「いや、これでいい。この風格には、この衣装がぴったりだと思う」
「……そうですか? 主がそう言うなら」
よしっ。
あれ?
この絵を認めた事になるのか?
……もしかして、リーダーはわざと。
リーダーを見ると、不思議そうに首を傾げられた。
まさかね。
「主、どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」
うん。
偶然にそうなっただけだ……きっと、そうだ。
執務室を出てリビングに行くと、オアジュ魔神がガルムのアイとお茶を楽しんでいた。
アイの前には、果実を練り込んだパンケーキ。
ガルム達の好物の1つだ。
「お邪魔しているよ」
オアジュ魔神が手を上げるので、隣の椅子に座る。
「あぁ。ここに来るのは珍しいな」
「ははっ。そうかな?」
前にオアジュ魔神が此処に来たのはいつだっけ?
思い出せないけど、少し前だったはず。
「今日はどうしたんだ?」
「俺達の畑で育った野菜を持って来たんだ。それでこっちの畑で育った野菜を貰おうと思って」
「そうなんだ」
物々交換?
そんな事をしていたのか?
「初めての事だから、楽しみだよ」
あぁ、今回が1回目か。
オアジュ魔神の楽しそうな表情に笑みが浮かぶ。
「新しい大地とこっち側で育った野菜は違うのか?」
「あぁ、同じ野菜の種を植えたのに、育った物は色や形が違う物があるんだ」
へぇ、それは面白いな。
「明日にでも、オアジュ魔神の畑に行ってみても良いか?」
「あぁ、いいぞ」
明日の楽しみが出来たな。