作品タイトル不明
103.星を貰いたい
創造神の答えを持って呪界に来たフィオ神に、お酒を勧める。
「ありがとう。それで、いつ頃会えそうだ?」
「創造神は早い方がいいと思っているようだ。言葉にはしないけどな」
いや、言葉にしないと駄目だろう。
周りに察知してくれというのは、誤解を生むからな。
「分かった。俺の方はいつでもいいし。オウ魔界王も問題ないだろう」
忙しいけど、数時間ぐらいなら空けられるだろう。
ドルハ魔神達に少ししわ寄せが行くかもしれないけど、まぁ頑張ってもらおう。
「オウ魔界王とは、頻繁に連絡を取り合っているのか?」
フィオ神の言葉に首を傾げる。
どうしてそんな事を聞くのか分からない。
「まぁ、それなりに。彼を魔界王にしたのは、うちの子達だからね」
話を聞けば、用意周到に外堀を埋めて行ったみたいなんだよね。
なんて恐ろしい。
「えっ、翔は魔界王を選べるほど影響力を持っているのか?」
焦ったフィオ神に、首を横に振る。
「違うから、落ち着け。世界が違うんだから、そんなに影響力を持っているわけが無いだろう」
俺は呪界の王であって、魔界はただのお隣さんだ。
まぁ、魔族達がよく遊びに来て色々学んで帰るから、繋がりはあるけど。
ただ、それだけだ。
「しかし、オウ魔神を魔界王にしたのは翔の仲間なのだろう?」
「魔界を落ち着かせるためには、魔界王を早々に決める必要があった。そして、その適任がたまたまオウ魔神で、たまたま俺の知っている者だったというだけだよ」
うん、無理があるな。
ほらっ。
フィオ神にも呆れた表情をされてしまった。
でも、本当に俺が魔界に影響力を持っているなんて誤解はして欲しくない。
俺は呪界の事で精一杯なんだから。
「はぁ、詳しくは聞かない。ただ、オウ魔界王のお陰で魔界は落ち着いた」
「あぁ」
「そのお陰で、神国に対しての憎しみが薄れた」
それに関しては、不思議だよな。
王が代わっただけで長年抱いていた憎しみや恨みが弱まるかな?
まぁ、魔神力と闇の魔力に変化があったみたいだから、そのせいもあるだろうな。
あと、サブリーダーが言っていた結界にぶつかっている力。
あれが気になるところだな。
「あっ、そうだ。魔界にいる神族なんだけど、無事に回復してきたって」
「そうなのか? では、そろそろ戻って来るんだな」
ホッとした様子のフィオ神に、ちょっと申し訳なくなる。
「それが、帰る気がまだないらしい」
そう、魔界にいる神族達は、今のところ帰る様子がない。
「はっ?」
俺の言葉に、驚いた表情をするフィオ神。
まぁ、そうなるよな。
「仕える神に思うところがあるみたいだぞ。自分達をいつも蔑ろにしているのだから、いなくてもいいだろうって。まぁ本心は『思いっきり困ればいい』だな。凄い嫌われっぷりだな」
この話を、お茶会でした時は「その気持ちが理解出来る」と多くの神族が賛同していた。
つまり、神の横暴さに困っている神族が多いという事だ。
そう言えば、親玉さんがこれを賭けの対象にしていたな。
神の中で、誰が一番に音を上げるか。
……これについては内緒にしておこう。
「はぁ、神の態度か」
「神の横暴さについてはロープから聞いているけど、酷いぞ。力があっても、仲間や支える者がいなければ何も出来ない事を、神達は理解しないとな」
力が全てだとしても、仲間がいなければ虚しいし、
支える者がいなければ、孤独で気が狂う。
「分かっている。最近は注意も頻繁に行っているんだが……」
フィオ神を見ると、頭を抱えている。
きっと彼も、神達の態度には困っているんだろうな。
「そういえば、フィオ神の部下とは会った事が無いな。いないのか?」
アイオン神の部下にはよく会うけどな。
「2人いる。今度紹介するよ」
「ありがとう。嫌われていないよな?」
俺の質問に、神妙な表情をするフィオ神。
何か思い当たる事でもあるのか?
「……たぶん、大丈夫……だと思う。ただ……この頃は、仕事が多すぎるかもしれないから不満はあると思う」
仕事の量か。
問題が色々あり過ぎたからな。
「あと――」
「まだ何かあるのか?」
フィオ神が眉間に皺を寄せて俺を見る。
悪いけど、今日の目的はこれだから。
「神国に、確認されていない星があるんだけど知っているか?」
「……んっ?」
不思議そうに首を傾げるフィオ神。
「落ち神やその仲間から逃げた神や神族がいるんだ。彼等のいる星は、普通では認識されないように特殊な結界が守っている。だから、確認されていないんだけど、知っているか?」
「あの噂は本当だったのか?」
フィオ神が唖然とした顔で呟く。
そして、俺を見る。
「噂は知らないけど、星があるのは本当だ。俺はその星の者達と知り合う事が出来たんだけど、彼等も星も貰いたい。この事で、創造神に許可を頂きたいんだ」
「貰う?」
フィオ神は少し考えこむと、ハッとした表情をした。
「神国から、呪界に星を移動するのか? そんな事が可能なのか?」
「たぶん出来るよ」
魔法でイメージしたけど、問題なく出来たからな。
あと、他にもあるんだよな。
「神達の管理が行き届いていない星があるよな。それらの星も、呪界に貰いたいと思っている」
「管理が行き届いていない星か」
神の大量処分で起こった、深刻な神不足。
急いで神を育てたとしても、星を守るまでには相当な時間が掛かるそうだ。
そのため、管理できずに問題が起きそうな星がいくつもあるとロープが確認している。
だから、その星も呪界に貰おうと思っている。
「呪界に来た星は、誰が守るんだ? 翔か?」
「いや。龍達だよ。彼等の力を存分に活かしたいんだ」
呪界で鍛えまくったせいで、ありえないほどの力を得た龍達だからな。
それを腐らせておくのは勿体ない。
「あぁ、あの異常な力を持った神獣達か」
フィオ神が庭に視線を向けると、子供達と遊んでいる水色を見る。
やはりフィオ神から見ても、あの力の強さは異常か。
「星の移動……。正直に言えば、複雑な気持ちだ。でも、落ち神のせいで隠れるしかなかった神達の事を思えば、彼等が賛同するなら、それもありなんだろう」
フィオ神は、考えが柔軟だよな。
「あと、管理できずに暴走しかかっている星だが、それを引き受けてくれるのは、嬉しい。ただ……」
問題は神達だな。
呪界に肯定的な神もいるけど、不快に思っている神も多い。
だから、この提案には反発がある事は予想できる。
「神だけで問題が解決出来るなら、言わないけどな」
俺の言葉に、溜め息を吐き頷くフィオ神。
「呪界に対して反発している神達は、現実が分かっていない。未だに自分達の力は、偉大で素晴らしいと考えているからな」
「だったら、その偉大で素晴らしい力を持っている神達に、暴走しそうな星を任せてみたらどうだ?」
「それは……星を失う事になる可能性がある」
「それを、受け止めるのも神の役目だろう?」
自分がどこまで出来るのか、しっかり把握してもらわないと。
文句ばかり言っていても、何の役にも立たないからな。
「それに星によっては、既に命が失われているところがある。そこを任せれば、失うのは星だけだ」
「神国の事をよく知っているな」
「お隣さんが不安定だと、こっちにも影響がある。被害が生じる前に、現状をしっかり把握しておくのは、世界の王の役目だろう」
「……」
フィオ神がジッと俺を見る。
それに首を傾げる。
「いや、呪界王なんだと思ってな」
「まぁ、そうだな」
まだまだだけど、王としての自覚が少しは生まれているのかもな。
「よしっ」
フィオ神が立ち上がるのを見上げる。
「今の話を全て、創造神に伝えて来るよ」
「宜しく」
フィオ神の事だ。
数日で答えを持って来るだろう。
星の移動か。
楽しみだな。