作品タイトル不明
67.敵対する魔神たち2。
―ギュア魔神視点―
窓から、巨大な壁を見る。
マギファ魔神の言う通り、あれは結界だった。
調べに行った魔神達の報告から、あの結界がこの星の半分を覆っている事も分かった。
そう、膨大な魔力を必要とする結界なんだ。
「もう6日目だぞ」
それなのに、結界が消える気配が無い。
見張りにつかせている魔神達から、結界に流れる力に不安定なところは見られないと報告がきている。
どうしてだ?
結界の維持には、膨大な魔力が必要だ。
ゴルア魔神や、奴の仲間がどんなにうまく力を合わせたとしても、既に限界に来ているはず。
もしかして結界の方に何か仕掛けがあるのか?
オウ魔神が、何か創ったのか?
「くそっ」
あの結界が出来てから、魔族達の姿が消えた。
どうやってあの結界内に避難をしているのか分からないが、既に多くの魔族達が集まっている。
「結界さえなくなれば。そう、あの結界さえなくなれば……」
もしかして、見せかけだけという事は無いか?
問題無いように見せているだけで、実際は既に限界になっているのでは。
「……攻撃させてみるか」
そうだ、攻撃をすれば分かる。
数名の魔神が攻撃をすれば、あの結界の強度が分かる。
もし、問題の無い結界だとしても、何度も攻撃をすれば傷が付く。
そして、その傷が付いた場所を集中的に攻撃すれば、いずれ結界は壊れるだろう。
「そうだよ。待つ必要は無い」
コンコンコン。
「入れ」
「失礼します。研究所から報告書です」
配下の魔神が部屋に入ってくると、1枚の紙を差し出した。
研究所からは2日前にも報告書が来た。
それなのに、もう次が?
不思議に思いながら、受け取った書類を確かめる。
「はっ?」
どういう事だ?
研究所にいた、実験中の魔族達が消えた?
「ひっ」
書類を持って来た魔神が、数歩後ろに下がったのが分かったが、怒りが抑えられない。
2日前、奴等の力を俺に譲渡できそうだと、報告がきていた。
ようやく研究の成果が出たと思ったのに……逃げられた?
「誰が逃がした?」
「私には、わかり、ません」
震えている魔神に舌打ちする。
そういえば、どうして書類での報告なんだ?
こういう問題は、ここにきて説明するものだろう。
「研究所の奴らは?」
「……消えました」
それは、消えたのではなく、逃げたんだろう、俺から。
体の内側から、ふつふつと力が溢れる。
目の前にいる魔神の震えがひどくなるが、抑えられない。
「どうした? 落ち着け」
不意に聞こえたマギファ魔神の声に、視線を向ける。
いつもと変わらない様子に、少し気持ちが落ち着く。
「悪い。研究所の魔族が消え、研究をしていた魔神達が逃げた」
「何?」
マギファ魔神は、震えている魔神に出て行くように言うと、俺が持っていた報告書を読んだ。
「あの研究所には、ギュア魔神が結界を張っていたな」
そうだ。
あの研究所は、俺が結界を張っていた。
……俺の結界が破られた?
「俺より力が強い魔神が関わっているという事か」
そんな魔神は多くない。
誰が俺の邪魔をした?
「ギュア魔神、落ち着け。力が暴走している」
そうだ、こういう時こそ落ち着かないと。
「あの結界が現れてから、おかしな事ばかり起こる」
俺の言葉に、マギファ魔神が窓から外を見る。
「魔族達がいた場所で、不気味な生き物が目撃されている」
不気味な生き物?
それは、ゴルア魔神を見張らせていた魔神が言った言葉と同じだな。
まさか本当に不気味な生き物がいるのか?
「それで」
「どうやらその生き物は、魔界の者ではないみたいだ」
魔界の生き物ではない?
「どこから来たんだ? いや、神国から落ちて来たんじゃないのか?」
「最初はそう思ったが、神国から何かが落ちてきたら小さくても気付く。神力が魔界に流れるからな」
そうだったな。
神国から落ちて来た者は、神力を含んでいるからすぐに気付く。
「だったら、どこから?」
「考えられるのは、呪いの世界だ」
新しく出来た世界か。
「今、呪いの世界について調べている。もしかしたら、あの結界にも関係しているかもしれない」
他の世界の者が、魔界に関わるとは思えないが。
でもマギファ魔神が、気にしている以上は調べた方がいいのだろうな。
―ドルハ魔神視点―
窓から見える結界を睨み付ける。
結界が張られて6日目。
まだ、結界の力が衰えたという様子はない。
どうしてだ?
ゴルア魔神や周辺の魔神達だけでは、維持は出来ない。
もしかして協力者が?
「ちっ! 誰かいるか」
「はい、こちらに」
すぐに反応する魔神に、少し気持ちが落ち着く。
「結界を見張らせている魔神達に、すぐに攻撃を開始しろと言え」
「はっ、すぐに」
結界内に魔族がいると分かり、すぐに結界を破壊し、魔族を連れてくるように指示した。
だが側近の魔神から、まずは調査した方がいいと言われ、指示は見張りへと変更した。
今日で結界が張られてから6日目。
そろそろ、攻撃を仕掛けてみてもいいだろう。
攻撃すれば、あの結界の強度が判明する。
絶対に、魔力には限界がきているはずなのだ。
今、攻撃をすればもしかしたら結界が壊れるかもしれないな。
例え壊す事が出来なくても、傷は付けられるだろう。
そうなれば、その場所を集中的に攻撃すればいい。
それであの結界は崩壊し、終わりだ。
「壊れる瞬間でも見るか」
窓から、結界を見る。
しばらくすると、結界に少し変化が見えた。
だが、それ以上は何も起こらない。
「んっ? 今、確かに変化があったよな?」
もう一度、結界を見る。
気のせいだったのか?
「攻撃はまだなのか?」
もうしばらく待つが、やはり結界に変化は起こらない。
その事に、どんどんイライラしてくる。
すぐに攻撃をしろと言ったのに、何をしているんだ?
もしかして、見張らせていた魔神達が逃げたのか?
……まさかな。
バン。
「失礼します」
慌てて入って来た、部下を睨み付ける。
だがいつもならそれで震える部下が、俺の傍まで走って来る。
「攻撃を仕掛けましたが、魔神達は死にました!」
はっ?
「その後、なぜか結界の外に魔族と見た事が無い生き物が現れたため、控えていた魔神が攻撃をしたのですが、こちらの魔神達も死にました」
どういう事だ?
「失礼します」
魔神達を見張らせていたピーリー魔神が部屋に入ってくる。
「攻撃を仕掛けた魔神が死んだと聞いた。本当か?」
「はい。魔神達は白い光と共に消えました」
死にゆく光か。
「結界を攻撃したあとに、何があった?」
なぜ、攻撃を仕掛けた魔神が死んだ?
結界は攻撃を防ぐものだ。
それに、
「見た事が無い生き物というのは、なんなんだ?」
俺の言葉に、ピーリー魔神は少し考える。
「魔神達の攻撃は間違いなく結界にぶつかりました。ですがぶつかった瞬間、魔神達にその攻撃が跳ね返ったように感じました」
攻撃が跳ね返った?
「あと見た事が無い生き物ですが、結界内に多数その存在を確認しました。別の形をした生き物もいるようです。そして、その生き物が隠れている魔族達を保護して回っているようです」
見た事が無い生き物が2種類?
神国から落ちたのか?
いや、ここ数年は神力を感じていないから、違うな。
となると、どこから?
「呪いの世界か?」
呪いの世界が出来た事は、知っている。
どんな者が、その世界を統べているのか知らないが。
「調べた方がよさそうだな」