軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63.守る力。

―オウ魔神視点―

上空を見上げる。

呪界王の配下達が、見事に結界を張った。

そして、結界が張られてから3日目。

呪界王の力が補給され、結界は無事に継続された。

結界の道具を作ったセブンティーンが、予想より結界の維持に力が要らないと驚いていた。

俺としては、魔石から出ている力がいつまでたっても衰える事なく強く濃い事に、驚いていたが。

少し離れた場所で、歓声が上がった。

見ると、親蜘蛛という魔物がどこからか魔族を保護して連れて来たようだ。

そして、その魔族達が知り合いの魔族達と喜び合っている。

ここ数日、よく見られる光景だ。

「笑って、泣いている」

今までの魔界ではありえない光景。

この結界内では、魔族達が生き生きしているように見える。

もう一度、上空を見上げる。

この結界の中にいると、心が落ち着くのが分かる。

「魔神力と闇の魔力なんだけどなぁ」

魔神力と闇の魔力は、力が強い者に強く影響を与える。

魔族達が、この力の影響で凶暴にならないのは、力が弱いからだ。

逆に魔神になると、影響はでかく制御できない者は凶暴化し狂っていく。

今残っている魔神達は、それなりに自分の心を制御できる者達だ。

ギュア魔神とドルハ魔神も、しっかり制御はしている。

ただ、欲深いのだ。

「オウ魔神、他の星にも結界を張っていいかな?」

ナインティーンの声に振り向くと、既に結界を張る道具を持っている。

それに笑ってしまう。

「既に道具を持って聞くのは、どうなんだ?」

俺の言葉にナインティーンは首を傾げる。

「断らないと思って」

まぁ、確かにそうだけど。

「でも、必要なのか? 魔族が住む事ができる星は、この星だけだ。他の星は、魔神力と闇の魔力の流れがおかしくて、彼等は住むことが出来ない」

この魔界には、全部で24個の星がある。

でも、魔神が住める星は6個、魔族が住める星はこの1個だけだ。

魔界にある全ての物は、元は神国にあった物だ。

魔神も魔族も星すらも、神国で生まれ、そして不要とされたものだ。

そのため、魔界にある物はどこか壊れている。

「全ての星を見てきたけど、主の力で問題は解決すると思うよ」

んっ?

ナインティーンの放った言葉が、理解出来なかった。

主とは呪界王の事だな。

その呪界王の力で問題が解決?

「冗談か?」

「ちがうよ、本当に。星を調べたけど、星の一部が未完成なものが多いんだ。今の主の力だと、それぐらいなら修復出来る。だから、問題は解決出来るんだ」

「星の修復は神でも難しいだろう?」

だから奴らは、失敗作を魔界に捨てる。

他の神達に見つかる前に。

「まぁ、そうだね」

「呪界王は出来るのか?」

「うん。主の持つ力が主の思いも形にしてくれるから」

「その言い方はおかしくないか? まるで呪界王の力には意思があるような言い方だ」

「あるから」

「…………」

「どうしたの?」

聞き間違いではないよな?

「力に意思があるのか?」

「うん。主が何度も自分の力に声を掛けるから、意思を持ったみたい」

そんな事で、力が意思を持つのか?

あり得ないだろう。

「まぁ、普通はあり得ないけど。それを成してしまうのが主だよ」

「はぁ。想像をはるかに超える力が、意思を持つか」

俺の言葉に、嬉しそうな雰囲気で頷くナインティーン。

彼の主は、本当に凄いのだな。

「力が意思を持っている事にも驚くが、星を修復までする力の強さも凄いな」

「確かに強いね。だって主は全ての力を『守る力』に変えたから」

「そうなのか?」

というか、力を変える?

どういう事だ?

「うん。だから主は、攻撃魔法は使えないんだ」

「えっ、……それは誰にも言うべきではない!」

まさか、こんな重要な事を聞くことになるとは。

それにしても、攻撃魔法が使えない?

守りに全ての力を使ったからなのか?

遠くで叫び声が聞こえた。

その声は恐怖に染まっている。

慌てて、叫び声が聞こえた方へ駆ける。

横を、道具を抱えたナインティーンがついて来る。

「やっぱり来たか」

叫び震える魔族達の奥。

結界の外側に、魔神達がいた。

既に攻撃態勢を取っている。

「やはり、魔族達を集めるのは駄目だったか」

ゴルア魔神も来たようだ。

少し離れた場所から、声が聞こえた。

「すぐに攻撃に対応できるように――」

「大丈夫だって」

ゴルア魔神の声を遮るように、ナインティーンが少し大きな声で叫ぶ。

ゴルア魔神や周りにいる魔族達の視線が、ナインティーンに集まる。

「ここを守る結界は、主が張ったものだから大丈夫」

んっ?

「ナインティーンが持っている道具で、結界を張ったのでは無いのか?」

「この道具は、主の結界を大きく広げる道具なんだ」

「なるほ――」

「壊せ!」

道具について話していると、結界の外にいる魔神達が一斉に攻撃を仕掛けて来た。

しまった!

魔族達が、悲鳴を上げながら身を屈める。

バン。

バキューン。

「「「「えっ」」」」

バタバタバタ。

「「「「……」」」」

結界の外で、倒れる魔神達。

そして、彼等が白い光に包まれていく。

「あっ、死にゆく光! 一度は見たいと思ってたけど、こんなに早く見られるなんて」

興味津々という雰囲気で、結界に近付くナインティーン。

魔族達は、不思議そうに顔を上げて結界の外を見て驚きに声を上げた。

パッと辺りに、白い光が広がる。

光が消えた後には、倒れた魔神達が消えていた。

襲って来た魔神達が死んだのだ。

「ナインティーン。呪界王は攻撃魔法を使えないと言わなかったか?」

俺の言葉に頷くナインティーン。

それなら今、目の前で起こった事はなんなんだ?

「攻撃魔法は使えないけど、結界にぶつかった力をそのまま返すことはできるから。まぁ、この結界は、返す力が10倍になっていたけど」

つまり、さっきの魔神達は自分達の力を10倍にされて返されたのか?

確かに攻撃魔法では無い……かな。

「主は、守る事しか考えてないよ。自分の力で、誰かを害そうなんて一度だって考えた事はないよ」

「守る事しか」か。

「あれは」

マルアキス魔神の声に、彼の視線の先を見る。

こちらを震えながら凝視する魔神達の姿が見えた。

「かなり、怯えているな」

ゴルア魔神の言葉に頷く。

怯える魔神達を見ていると、面白くて笑ってしまう。

「オウ魔神?」

カチュラ魔神の不思議そうな声に、首を横に振る。

「なんでもない」

そういえば、ゴルア魔神だけでなくマルアキス魔神とカチュラ魔神も駆け付けたのか。

まぁ、結界が壊されたら魔族達が襲われるから焦ったんだろう。

それが結果は……やっぱり面白い。

「どうしたんだ?」

笑ってしまった俺に、ゴルア魔神が不審そうに見る。

「いや、いつも横暴な態度で周りを威嚇している魔神達が、あれだから」

結界の外で震えている魔神達を見る。

ゴルア魔神達や魔族達も結界の外に視線を向け、笑い出した。

それに不安そうな視線を向ける魔神達。

未だに何が起こったのか分かっていないのだろう。

それにしても、いつもの態度と違い過ぎて面白い。

「あっ、親アリ達が」

結界の外にいる魔神達の傍に、魔族を保護してきた親アリが姿を見せてしまった。

焦った俺達の前で、魔神達が攻撃をしかけ……倒れた。

そういえば、彼等にも呪界王の結界が張ってあったな。

白い光が通り過ぎるのを、腕で目を守りながら実感する。

「オウ魔神。そろそろ他の星にも結界を張っていいのか、返事が欲しいんだけど」

あぁ、そういえば聞かれていたな。

「いいけど、星に結界を張ってどうするんだ? 魔族達が住める場所を増やすのか?」

「そのつもり、それで農場を作る! サブリーダーから聞いたよ。この世界の食が問題だって」

あぁ、それか。

確かに、サブリーダーが持って来てくれたお菓子とかワインとか美味しかったよな。

「食べ物がおいしいと幸せになれるんだよ」

「そういうもんか?」

「うん。主が言ってたから間違いなし!」

「そうか。それより本当に星は修復されるのか?」

神すら出来ない事だ。

呪界王にだって、出来るとは限らない。

「大丈夫。星が安定しないと、誰も守れないでしょう? だから主の力は絶対に星を修復出来るはず」

あれ?

「もしかして実験も兼ねているのか?」

あっ、ちょっと視線を逸らした。

「ははっ、分かった。魔族達の住める星が増える事はいい事だからな。頼むよ」

「任せて~」

あの許可から約1ヵ月。

魔界王の執務室に、楽しそうに飛び込んで来たナインティーン。

まさかと思ったら、星の修復が終わったとの報告だった。

「さすがに早過ぎるだろう」

そして最近、気になる事がある。

結界の維持のために、呪界王の力が籠められた魔石が届くのだが、その魔石から感じる力がどんどん強くなっているような……いや、きっと気のせいだろう。