作品タイトル不明
53.する~。
「のろくろちゃんは庭にいたよな」
完成したゴーレムを持って庭に向かう。
ちょうど休憩中だったのか、子供達は果実水を飲んでいた。
「主だぁ。どうしたの? あれ、それは何? 小さい飛びトカゲだ」
太陽が傍に駆けて来ると、俺が持っている物を見て驚いた声を上げた。
そして、太陽の言葉が気になったのか、他の子供達も寄って来た。
「あ~、それって魔石で作ったゴーレムでしょ? ははっ、本当に飛びトカゲだ」
雷の言葉に頷く。
「今回は飛びトカゲの形にしてみたんだ」
「凄い、そっくり」
「本当だね」
翼の言葉に紅葉も頷く。
そして紅葉がそっと、俺の持つ魔石で出来た飛びトカゲに手を伸ばした。
「あれ? まだ、のろくろちゃんは入ってないの?」
「今から、のろくろちゃんに協力してもらうつもりなんだ」
俺の言葉に紅葉が、周りを飛んでいるのろくろちゃんに視線を向ける。
「それならぼくがする、する~」
太陽の傍を飛んでいた黒い球体が、目を見開いてぐっと俺に近付く。
そして目の前で上下に揺れる。
これって、アピールなんだろうな。
ちょっと……いや、かなり不気味だけど。
「ありがとう。助かるよ。ただ、上手く体に入れるか分からないんだ。それでも大丈夫か?」
「わかった、わかった~。きっと大丈夫。きっと~」
自己主張の激しい子が2人、いるみたいだな。
「じゃ、入るね~。入るぞ~」
えっ、もう?
止める間もなく魔石で作った飛びトカゲの中に、スーッと入っていくのろくろちゃん。
その様子を、子供達と一緒に固唾をのんで見守る。
前に失敗した時は、魔石が弾けてしまったんだよな。
お願いだから、弾けるなよぉ。
「「「「「…………」」」」」
皆が見守る中、のろくろちゃんが入った飛びトカゲの尻尾がピクリと動いた。
「あっ! 今、動いたよね!」
桜の言葉に、全員が頷く。
「のろくろちゃん、大丈夫か? 体は動かせそうか?」
翼の言葉に、パタパタと尻尾が大きく振られ、次に体が動きだした。
最後に、周りを見るように頭が動いた。
その動きに子供達が「わっ」と盛り上がる。
その声に驚いた様子ののろくろちゃんは、ふわりと空中に浮かんだ。
「飛んだぁ」
風太が嬉しそうに、ゴーレムの飛びトカゲに手を伸ばす。
それを、するりと躱すゴーレムの飛びトカゲ。
「あっ、逃げた」
何度も手を伸ばす風太と、それをするりするりと躱すのろくろちゃん。
その動きを見ていると、問題ない事が分かる。
というか、前の時よりスムーズに体が動いているような気がする。
気のせいかな?
「「「「「すご~い」」」」」
子供達が、風太の手をすり抜けるのろくろちゃんに声をあげる。
風太は少し悔しそうだ。
「主、凄く綺麗だね」
「えっ? あぁ、鱗か」
桜の言葉に、魔石で作った飛びトカゲを見る。
細部まで真似て作ったので、鱗まで再現されている。
そしてその鱗に、風太の手を躱す度に太陽の光が当たって、キラキラと光っていた。
「確かに綺麗だな」
俺の言葉に、桜だけでなく紅葉と月も頷く。
「のろくろちゃん、動きにくいとか、違和感を覚えるようなところはあるか?」
俺の言葉に、目の前に飛んできたのろくろちゃん。
自分の体を見る動作をすると、首を横に振った。
「ないの。ないよ~。動きやすい。ぐるぐるだね~」
「そうか。よかった」
成功したみたいだな。
「とびとび。ちょっと庭まで競争しよう」
とびとび?
桜、もしかしてこののろくろちゃんの名前か?
まぁ、分かりやすくていいのかな?
そっと、とびとびと呼ばれたのろくろちゃんを見る。
「なまえ~、とびとび。だね~。だね」
本人が喜んでいるならいいな。
周りが何かを言う事はない。
庭に向かって走って行く桜を追う、とびとび。
そのスピードにちょっと驚く。
絶対に前に作ったのろくろちゃん専用ゴーレムより、いい物になってる。
「それにしても、どちらも速いな」
庭は訓練に使うため、それなりに広い。
それなのに、桜ととびとびは既に庭の真ん中に立っていた。
「今日の相棒は俺なんだけどなぁ」
庭を見ながら、太陽が肩を竦める。
そう言えば、とびとびの中ののろくろちゃんは、太陽の傍にいた子だったな。
くいっ。
んっ?
腕を引っ張られたので、視線を向けると紅葉がのろくろちゃんを差し出した。
「この子にも体が欲しい」
まぁ、こうなる事は予想済み。
前の時も、1体が成功すると次々と作る事になったからな。
「分かった。どんな形がいい?」
「ん~、やっぱり私がいい!」
あぁ、前回と一緒か。
という事は、子供全員分のゴーレムが必要だな。
「大きさは前と同じだけど、問題ないか?」
俺の言葉に嬉しそうに頷く紅葉。
それを周りの子供達が、ちらちらと見る。
「皆の分も作ろうか?」
「「「「やった~」」」」
太陽、雷、風太、翼がハイタッチをして喜ぶ。
紅葉と月は、桜に向かって手を大きく振った。
「どうしたの?」
桜ととびとびが走って戻ってくる。
「のろくろちゃん達に、新しい体が出来る事になったよ」
「やった~。あっ、主。のろくろちゃんが、凄く動きやすいって言ってたよ。大満足だって」
「そうか。それは、よかった」
使っているのろくろちゃんの感想が一番嬉しいな。
さて、子供達のミニチュア版を作りますか。
そう言えば、前の時より魔石に力が馴染むのが早かったな。
これだったら、以前より早く作れるかもしれないな。
「なぜだ?」
1体に掛かる時間は、確かに短くなった。
それなのに、ミニチュア版作りが終わらない。
「それでも、これが最後だ」
魔石に力を馴染ませ、ぐにゃりと魔石の形を変えていく。
頭を作って、次に体……脚が4本に尻尾……。
「出来た」
隣でジッと待っているアイを見る。
そして今出来上がった、ゴーレムを見る。
「よしっ、大丈夫そうだな。はい、お待たせ」
手の中のアイにそっくりのゴーレムを差し出す。
「主、ありがとう」
ゴーレムを銜えると、駆けて行くアイ。
視線を追うと、仲間達の下へ行ったのが分かった。
そしてしばらくすると、空中を走り回るアイの姿をしたゴーレムを見る事が出来た。
「最後の1体も無事完成。はぁ、終わった」
まさか、子供達だけでなく一つ目達や農業隊まで欲しがるとは思わなかった。
しかもそれが終わったら、飛びトカゲだけ狡いと龍達が集まるし。
で、龍達のゴーレムを作っていたら、コアとチャイが凄い勢いで駆けて来た。
しかも、いつの間にか後ろには親玉さんとシュリがいるし。
「あれには、ビックリしたよな」
チャイの分が終わったら、ちらちらこちらを窺うアイの姿が目に入った。
遠慮は必要ないと、最後にアイの分のゴーレムを作製。
さすがにちょっと疲れた。
「それにしても……凄い光景だな」
皆のすぐ傍を、魔石で作ったミニチュア版が飛び回っている。
「主、あるじ~」
んっ?
声に視線を向けると、近くの空中にとびとびがいた。
「とびとび、どうした? 体に不備なところでも出たのか?」
さっと、近くを飛ぶとびとびを観察する。
特に、動きに違和感はないけどな。
「大丈夫。大丈夫だよ~。する~とうごく。する~する~」
「そうなんだ」
する~?
スムーズに動かせるという事かな?
「ありがとう。ありが~と~」
満足そうに、飛び回るとびとび。
何となく、風太のように手を伸ばしてみる。
あっ、逃げられた。