軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

52.失敗。

魔石の強化実験の結果が出た。

最初に結果が分かったのは、力を籠めてから2ヵ月と4ヵ月放置した魔石だ。

道具を作っているセブンティーンとナインティーンの所で毎日使ってもらったが、どうやらどちらも駄目だったみたいだ。

「やっぱり、力の使い方が問題みたいだな」

力を籠めてから2ヵ月の魔石は、魔石の中に力が留まっていた時期が短いのが原因とも考えられる。

でも、もう1つの4ヵ月放置した魔石の方は、力を使い切るまでに1ヵ月以上かかったので5カ月は魔石の中に力が留まった事になる。

リーダーに強化された魔石について聞いた時、1ヵ月放置して4ヵ月で使い切った魔石があった。

つまり5ヵ月間、魔石の中に力があれば問題ないという事になる。

でも、今回は失敗した。

この事から、使い方が重要だと判断できる。

「力を、どう消費するのが良いんだろうな」

魔石に力を込めてから10日、20日、30日の結果はまだ出ていないけど、きっと駄目だろうな。

使い方が、最初の2個と同じだから。

しかも、魔石に力が留まっていた時期が短い。

「あぁ~、どうしよう」

力の使い方なんて……ただ、使い切ればいいんじゃないのか?

力の減るスピードが問題なのか?

それとも……駄目だ。

全く何も思い浮かばない。

「はぁ、気分転換に散歩しようかな」

使用済みの魔石と報告書を棚に置くと、リビングから出る。

ウッドデッキから、庭を見る。

翼と風太が訓練をしている。

どうやら今日の2人の相棒は、のろくろちゃんらしい。

2人が魔法で攻撃を仕掛けると、のろくろちゃん達もそれぞれ相手に向かって攻撃を放った。

のろくろちゃんの攻撃弾と言っていいのかは不明だが、放った物は真っ黒で禍々しい印象を受けた。

翼が風太の攻撃を避けながら、白い盾を作りのろくろちゃんからの攻撃を防いだ。

「へぇ、白い盾から浄化魔法の力を感じるな。と言う事は、浄化魔法で白い盾を作ったんだ」

子供の発想は、凄いよな。

あっ、風太がのろくろちゃんの攻撃に当たった。

うわっ、風太の全身が真っ黒になった。

あれは、一気に呪いが全身に回ったな。

あぁなると、全身の動きが鈍くなるはずだ。

「早く風太に浄化魔法を掛けないと」

あれ?

風太から呪いが消えている。

あぁ、自分で浄化魔法を掛けたのか。

良かった。

「いや、ちょっと待った。のろくろちゃんが攻撃?」

今、当たり前のように見ていたけど、のろくろちゃんが攻撃出来るなんて初めて知ったんだけど!

あれ?

でも、風太達が驚いている様子はないな。

もしかして、のろくろちゃんが攻撃出来る事を知っていたのか?

……えっ、俺だけ知らなかったとか?

まぁ、いいけどさ。

「それにしても、のろくろちゃんが進化するなんて驚きだな」

そういえば、そろそろのろくろちゃんの体を作る事が出来るだろうか?

この世界にも慣れてきたから、以前に作った事がある魔石でのろくろちゃん達にゴーレムを作ろうとしたんだよな。

桜にも、もう一度のろくろちゃんに体を作って欲しいとお願いされたから。

でも魔石に上手く力が馴染まず、作れなかった。

原因はおそらく、俺の力が安定していなかったからだろう。

呪界の世界になってから、ずっと俺の力はかなり不安定だったから。

でも今は違う。

これまでにないほど、俺の力は安定していると言える。

だから、今ならのろくろちゃんに、新しい体を作ってあげられるはずだ。

よしっ、とりあえず1体を作ってみるか。

「必要なのは、空の魔石だな」

散歩を止めて、先ほど魔石と報告書を置いた棚に向かう。

棚から、カゴに入った空の魔石を2個取り出して、ソファに座る。

座ると弾力があり、とても座り心地が良い。

この座り心地は、スプリングを使用しているからだ。

農業隊のイレブンが、スプリングを手にしている時は、本当に驚いた。

話を聞けば、イレブンが家具作りに力を注いでいるそうだ。

ときどき意見を求められるのだが「問題ないよ」では、許してくれない。

何が良くて、何が駄目なのか。

しっかり意見を言わないと、離してくれないのだ。

まぁ、頑張って意見を言うけど、満足している家具の不満や不備を探すのは大変だ。

「まずは、魔石に力を馴染ませて……」

魔石の1個を両手で包み込むと、手の中に向かって力をゆっくり移動させる。

あっ、良い感じに魔石に力が行き渡ったな。

「次は、形だな。え~……どうしようかな?」

しまったな。

のろくろちゃんに形の希望だけでも聞けばよかった。

でも前に失敗した時、大丈夫と言いながら落ち込んでいたから、ちゃんと出来ると分かってから声を掛けたかったんだよな。

「どうしたのだ?」

えっ?

声のした方を見ると、飛びトカゲが不思議そうに首を傾げていた。

「久しぶりだな」

龍達は、ここ半月ほどこの世界を離れていた。

理由は、神国の龍達との交流と意見交換らしい。

神獣ではない飛びトカゲ達の事が心配だったが、神国の龍達は温かく迎え入れてくれたそうだ。

「お帰り、元気だったか?」

「あぁ、いろいろと有意義な話を聞けたよ」

あれ?

「有意義な話」と言った時、なんだか背中がゾクッとしたんだけど気のせいか?

そっと、飛びトカゲを窺う。

「どうした?」

俺の視線に気付いたのか、俺を見て首を傾げる飛びトカゲ。

いつも通り、優しい目をしている。

でも、気になるから、

「神国で悪さなんてしてないよな?」

俺の言葉に、面白そうに笑う飛びトカゲ。

「ハハハッ。何を心配しているのかと思えば、大丈夫。今回は、話を聞いただけだ」

飛びトカゲを見る。

まぁ、彼がそう言うならそうなんだろう。

んっ?

今回は?

……気にしない事にしよう。

「そうか。それならいいんだ。無駄な争いは遠慮したいからな。これからも注意してくれ」

これからも頼むね。

「それなら、いまだにこの世界に潜り込もうとしている神の手先をどうにかするのが先じゃないか?」

飛びトカゲの言葉にため息が出る。

そうなんだよな。

いい加減諦めればいいのに、いまだに呪界に侵入しようとする馬鹿どもがいる。

まぁ、神が指示を出しているんだろうけど。

「彼等も、指示に従っているだけだろうからさ。それに、一つ目達の実験には役立っているはずだから」

「実験にならないぐらいポンコツだと、農業隊のフォーが叫んでいたぞ」

ハハハッ。

その通りだから、何も言えない。

「まぁ、いずれ呪いの空間ぐらいは突破出来るさ」

「えっ。まだ最初の空間から出られていないのか?」

俺の言葉に飛びトカゲが、驚いた声をあげる。

そうなんだよ。

そろそろ最初の空間の情報だって集まっているはずなのに、神族は最初の空間を突破出来ていない。

まぁ、トレント達の呪いの研究には役だっているみたいだけど。

でも、そろそろ次の空間に行って欲しいものだ。

「ところで、何をしているんだ?」

「んっ?」

飛びトカゲが俺の手元を見ているのに気付く。

あっ、力を馴染ませた魔石の事を忘れていた。

「のろくろちゃん達に体を作ろうと思ってさ」

「あぁ。主の力が安定したから、出来るな」

飛びトカゲには、魔石と力の関係について話した事は無かったけど、気付いていたんだな。

「うん。それで試しに1体作ろうと思ったんだけど、形まで考えていなかったから、どうしようかと思ってさ」

「それなら俺の姿はどうだ?」

飛びトカゲの姿?

……うん、いいかもしれない。

「ありがとう。飛びトカゲのイメージで作ってみるよ」

飛びトカゲのイメージを作っていくと、手の中の魔石がぐにゃりと形を変えていくのが分かった。

しばらくすると、魔石の動きが止まる。

そっと、手の中を見る。

「よしっ、出来た」

手の中の魔石を、テーブルに載せる。

自分でも驚くほど飛びトカゲにそっくりに作る事が出来た。

あとは、のろくろちゃんに入ってもらって様子をみよう。