軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21.まずは簡単に。

―一つ目リーダー視点―

「お疲れ様でした。魔界に行って体調の変化はありませんか?」

「大丈夫!」

元気に前脚を上げる子蜘蛛に頷く。

もし影響があった場合は、主に申し訳がありません。

主は仲間をとても大切にしますからね。

「それは良かったです。ですが、数日はゆっくり休憩してくださいね。そして少しの変調でも、すぐに教えて下さい」

「……分かった」

今、少し間がありましたね。

「特訓はもちろん、訓練にも参加しては駄目ですよ」

「う~……どうしても?」

「はい。魔界は我々にとって未知の世界です。魔神力や闇の魔力が充満している事は問題ありませんが、あそこではこことは違い負の感情が渦巻いています。今のところ、影響を受けた者はいませんが、もしもという事があります。だから気を付ける必要があるのです」

「そっか。それなら仕方ないね。でも、数日ってどれくらい?」

「最低2日はゆっくりしてください」

たぶん、これぐらいが目の前にいる子蜘蛛の限界でしょう。

「それぐらいなら、たぶん大丈夫」

「たぶん」ですか。

少し目を光らせておきましょう。

「では、これが今回の報酬です」

子蜘蛛の前に、3本の瓶を置く。

瓶の中身は果実のジャムが入っている。

「ありがとう! じゃあ、またね! あっ、次も同じ報酬で調査しに行くから!」

ジャムを背中に乗せて2本の脚で支えると、嬉しそうに去って行った子蜘蛛。

おそらくこのままキッチンへ行くのでしょう。

あの子蜘蛛は、蒸かした芋系の野菜に甘いジャムを乗せて食べるのが好きらしいです。

美味しいと言っていましたが、他の子蜘蛛達は首を横に振っていました。

いえ、中には同じ好みの者もいましたね。

少数でしたが。

「前までは、全ての蜘蛛達が同じ物を好みましたが、最近はそれぞれ異なってきましたね」

これも、この世界がそして主が変わった事と関係があるのでしょうか?

「色々な事が変わり過ぎて、全てを把握するのはきっと無理でしょう」

「随分と弱気の発言ですね。リーダー」

声のした方を見ると、サブリーダーが大量の紙を持って洞窟内に作った作戦室となっている部屋に入って来ました。

「弱気ではなく事実を言っただけです」

私の言葉に、少し肩を竦めるサブリーダー。

「魔界に行った全ての者から話を聞き終わりました。これが報告書です」

サブリーダーから大量の紙を受け取り、机に置きます。

「体調に問題が起きた者はいませんでしたか?」

「大丈夫です。皆、今日から訓練に参加できるとはしゃいでいました」

そういえば、第一弾の調査団は、魔界から帰って来て今日で3日目でしたね。

はしゃいで訓練に向かう姿が思い浮かびますね。

……はしゃぎ過ぎて、無茶をしていないか後で見に行った方が良いかもしれないですね。

「リーダー。森の状態はどうですか?」

「今のところですが、魔物の増え方が元に戻りました。いえ、前に比べると少し成長が早いですが、異常な早さではなくなりました」

とりあえず、森は落ち着いたと言えるかもしれないですね。

ただ、主の力がまだ安定していません。

なので、また異常な事が起こる可能性があります。

「主の力が安定するまで、魔物の監視は続けます」

私の言葉に、頷くサブリーダー。

そして少し訊きづらそうに視線を泳がせる。

「どうかしましたか?」

「主の傍に行くと、ぞわぞわとしませんか?」

やはりサブリーダーも感じたのですね。

「少し前からですよね?」

オアジュ魔神とその家族が、この世界に来た辺りでしょうか?

あの時は、まだほんの微かな違和感でしたので、気のせいかと思ってしまいました。

まぁ、周りに警戒はしましたが。

「リーダーもですか?」

「はい。私も同じ状態になります。調べたところ、ぞわぞわと感じるのは我々ゴーレムだけです。飛びトカゲ殿、コア殿、チャイ殿に確認しましたが、『感じない』と言われました」

蜘蛛達やアリ達も同様でしたね。

「そうですか。あれは、なんでしょうか? 主の傍に立つと、足元からぞわぞわっとした感覚が襲ってきます。でも、それだけなんです」

そう、足元から何かが這い上がっているようなぞわぞわした感覚に襲われます。

でも、1回その感覚が通り過ぎるとあとは何も起こりません。

これは「たぶん」なのですが、

「我々は主によって作られました。なので、主の力が変化している影響を、受けているのでないかと考えています」

だから、主の力が安定すればあの現象も落ち着くでしょう。

「それほど心配は必要ないと考えていますか?」

サブリーダーの言葉に頷く。

主の力が我々に危害を加える事は無い。

私はこれを信じています。

「はい。主の力が安定すれば、受けている影響も消えると思います」

サブリーダーも同じだと思ったのですが、違ったのでしょうか?

「では俺達は、このまま様子を見ましょう。まぁ主の力なので、心配はしていなかったですが」

やはり同じでした。

「お願いします。あぁただ、主の力が安定してない事が広まるのは良くないですね」

「それですが、問題ないと思います。オウ魔神を観察している時に聞こえたのですが『俺が考えているより、彼の力が安定している』と言っていたんです」

「えっ? あのオウ魔神がですか?」

「はい」

彼はかなり力に鋭敏です。

なので、彼を誤魔化すのは至難の業だと思っていたのですが。

どうやら主の力は、外から見ると安定しているように見えるみたいですね。

それなら下手な誤魔化しはしない方が良いでしょう。

「ところでサブリーダーから見て、魔界はどんな状態でしたか?」

「かなり危険です。今は3つの勢力が睨み合っていますが、いつその均衡が破られるか分かりません」

「3つですか」

「はい。現王の意見を推す勢力。神国を潰そうとしている勢力、神国には興味がないが、魔界を牛耳ろうとしている勢力です。危険なのは魔界を牛耳ろうとしている勢力です。彼等は、危ない思考を持つ者が他の勢力より多いです」

「オウ魔神のように、何かを研究しているような魔神や魔族はいなかったでしょうか?」

危険な物を研究している者がいるなら、注視しなければなりません。

「今回は簡単に探っただけなので、そこまでは分かりません」

そうでした。

今回魔界に調査団を送ったのは、現在の情勢を簡単に調べる事と、実際に魔界に入って行動が出来るか知るためでした。

魔界でも無事に活動できる事が分かったので、次はもっと色々調べられるでしょう。

「もっと情報を、集める必要がありますからね」

「俺も、そう思います。均衡はいずれ破れます。それもそう遠くない未来でしょう」

それほど不安定という事ですね。

「では、早急に今日貰った報告書を読みます」

まずは、今日までに分かった事を知らなければ。

報告書を読めば、次に何を調べて来ればいいのかわかるでしょう。

「では俺は、リーダーがまとめた報告書を読みます。どれですか?」

「これです」

サブリーダーから貰った報告書の隣にあった、紙束を渡します。

パラパラと読んだサブリーダーは、少し眉間に皺を寄せて私を見た。

「弱い魔族の扱いが酷いですね」

「はい、かなり酷いです」

話を聞いたのは孫蜘蛛でしたが、かなり怒り狂っていましたね。

主の守っている者達ではないですが、隣の世界が不安定になる要素ならば、これも何とかしないと駄目でしょう。

色々やる事が多いです。

「リーダーは、魔界を 統率(とうそつ) するのは誰がいいと思いますか?」

「……オウ魔神でしょうね」

「やはり、彼が良いですよね」

ただ、普通にお願いしても断られるでしょうが。