軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18.あちこちの変化

地下神殿に行くと、すぐに妖精が飛んでくる。

「主様、おはよう」

「おはよう」

俺の周りをくるくる飛び回る妖精。

随分とスムーズに飛べるようになったものだ。

時々、はしゃぎ過ぎて落下はしているけど。

「今日も地下4階と墓場に行くの?」

「あぁ、そのつもりだ」

以前はというか、呪いの世界に来る前は、まずは大きな魔石に力を籠めていた。

でも今は、それが不要になった。

俺の力が混ざり始めると、自然と魔石に力が溜まりだしたから。

しかもたった1週間ほどで、魔石の中は力で満たされた。

あまりの早さに、本当に驚いた。

そして今、あの魔石はある部屋でくるくると回っている。

調べると、この世界を動かすのに十分な力が集まったため、勝手に自動操縦になったようだ。

魔石がくるくる動き出すと、大きく変化した場所があった。

それが地下4階と墓場だ。

「今日も成長してるよ~」

地下4階に行くと、妖精は地面に近付いて飛ぶ。

以前は、棺桶が並んでいた地下4階。

だが今、その棺桶は1つも無い。

整然と並んでいた棺桶は、魔石が回りだした数日後に忽然と消えてしまった。

そして地下4階は、触る事が出来ない色とりどりの死者の花で覆いつくされた。

花が揺れるたびに、きらきらと花が光となって消えていく姿は、神秘的で息を飲んだものだ。

その光景も、数日で消えてしまったが。

今は地下4階には、植物の芽が一面に広がっている。

まだ芽は小さく、これが何の植物なのか誰も分かっていない。

飛びトカゲは、「死者の花が形を変えたのではないか」と言っていた。

まぁ俺としては、どんな植物でもいいのでしっかりと育って欲しい。

「あっ! 主様、新しい葉っぱが出てるよ」

妖精の元まで、飛んで行く。

地下4階一面に芽が出ているので、飛行するしか移動手段がないのがちょっと面倒だ。

葉を確認できるところまでゆっくり降下する。

「本葉だな」

2つの丸い双葉の上に、少し大きめの細長い葉っぱがある。

死者の花の葉っぱを思い出す。

「こんな形をしていたかな?」

……あれ?

死者の花の葉っぱは、どんな形をしていたっけ?

確か、細長くて……思い出した。

細長くて光沢のある葉っぱだ。

でも、それ以外の葉っぱもあったような気がするな。

細長い光沢のある葉にまぎれて、丸い葉っぱ。

そう、丸い葉っぱもあったな。

あれも死者の花の葉っぱだったんだろうか?

……分からないや。

「まぁ、なんでもいいか。元気に育てよ」

これからどんな風に育つのか楽しみだ。

「よしっ、確認も終わったし墓場へ行こうか」

「分かった~」

妖精が楽しそうにくるくる飛び回る。

「落ち着かないと、また落ちるぞ」

俺の言葉に、ちょっと動きを止める妖精。

「今日は大丈夫だよ」

と言って、またくるくる飛び出す。

それで、何度も落下しているけどな。

地下4階の隅に飛んで行き、地面に足を下ろす。

「墓場に飛ぶぞ」

「うん」

妖精が俺の肩に乗ったのを確認すると、墓場に移動する。

一瞬で目の前の光景が変わる。

「のどかだねぇ」

今の墓場は、草原だけだった世界に丘が出来、木々まで生えている。

のろくろちゃんが現れたあと、墓場には触れる事の出来ない死者の花が咲いたが、それは消えた。

替わりに、色や形が様々な触れる花が姿を見せた。

死者の花と同じ形の花は今のところない。

それがちょっと残念だ。

「風が気持ちいいな」

上空は青空が広がっている。

木々の揺れる音に、風の音。

お昼寝したら、気持ちがいいだろうな。

墓場で、変わった事がもう1つ。

呪詛が完全に聞こえなくなったのだ。

核の中心に繋がっていた場所には今、大きな湖がある。

その中を見ると、どこまでも澄んだ水があり、遠くにきらきら光る核が微かに見える。

闇が広がっていた世界は、無くなった。

パシャッ、パシャッ。

パシャッ、パシャッ。

「おはよう」

「おはよう」

「いい天気」

「ぽあぽあ~」

湖から、のろくろちゃん達がふわふわと飛び出してくる。

核の周辺は変わったけど、のろくろちゃん達は消えなかった。

それにホッとした。

「おはよう」

「ぽあぽあ~」

これは、同じように返した方が良いのか?

「ぽあぽあ~」

「……ぽあぽあ」

あっ、のろくろちゃんにある沢山の目が満足そうに細まった。

のろくろちゃんも少し変わった。

以前より、意志の疎通が出来るようになったのだ。

難しい子もいるけど。

「今日は4体なのか?」

いつもはもう少し沢山の、のろくろちゃん達が飛び出してくるんだけどな。

「他の子、お外」

外か。

という事は子供たちと何かをしているんだな。

まぁ、訓練だろうけど。

「煙がくるくる。くるくる」

煙?

1体ののろくろちゃんが目の前まで飛んでくると、黒い煙をふわふわと出し始める。

「これって呪いだよな?」

あれ?

黒い煙の色が変わった。

「くるくる、くるくる。変化!」

もしかして呪いを変化出来たという事か?

今、のろくろちゃんが出しているのは青い煙だ。

そっと手を伸ばして触れてみる。

「あっ」

煙に触れた瞬間、指先が真っ黒になる。

うん、これは呪いだな。

「浄化」

「……変化、ない」

悲しそうな声に、ポンとのろくろちゃんを撫でる。

「ないない」

ちゃぽん。

あっ、湖に戻ってしまった。

「また、明日な」

声は聞こえたかな?

「あの子達に、気にする事ないよって伝えてくれる?」

残った3体の、のろくろちゃんを見る。

「わかった」

「もんだいないよ」

「おう」

良かった。

それにしても、黒い煙の色を変えても呪いは呪いだったな。

というか、そもそも呪いを別の何かに変える必要はあるのか?

子供達や一つ目達は、呪いを上手く利用している。

のろくろちゃん達も、それが嬉しいみたいだった。

「やっぱり、呪いは呪いのままでもいいよな」

ちゃぽん。

ちゃぽん。

ちゃぽん。

「えっ? あれ?」

周りを飛んでいたのろくろちゃん達がいなくなってしまった。

さっきの音は、戻っていく音だったよな。

挨拶も無いのは、初めてだ。

どうしたんだろう?

「俺、気に障る事でも言ったかな?」

湖を覗き込んで見る。

湖が出来てから観察してきたけど、今日も澄んだ水がゆっくりと揺れている。

生き物の姿はないが、なんとなく何かがいるのを感じる。

おそらくのろくろちゃん達だろう。

「湖に変化は無いよな」

どうしよう、少し待ってみようかな?

……出てこないか。

「みんな、今日は帰るよ。また、明日」

どうして帰ってしまったんだろう?

明日は、姿を見せてくれるだろうか?

姿を見せてくれたら、今日の事を聞こう。

「もしかして、さっきの言葉のせいかな?」

呪いのままでいいと言ったのが駄目だった?

まぁ、あの言葉は頑張っているのを否定する言葉に聞こえたかもしれないな。

そんなつもりは無かったんだけど。

明日、謝ろう。

「言葉って難しいな」