作品タイトル不明
94.魔神オウ。
オアジュ魔神と地下4階に戻ると、彼は驚いた表情をした。
広い空間に整然と並べられた黒い箱には、さすがに驚くよな。
「あれ? 妖精は、どこだろう?」
見張り役をお願いした妖精を探すが、見当たらない。
用事が出来て、違う階に行ったんだろうか?
「あっ、いた。もしかして、寝ているのか?」
色が変わった花が入っている箱の上で、ピクリとも動かない妖精。
近付いても起きる様子は無い。
「頑張って飛んでいたから、疲れたんだな」
でもこれだと、見張り役にはなれないな。
異常が起きた時に、巻き込まれたら危険だ。
次は、アリ達か蜘蛛達に見張りをお願いしよう。
「凄いな。死者の花が閉じ込められた箱があるとは聞いていたが、こんなにあるなんて。いったい何個あるんだ?」
「数えてないから、分からない。墓場での浄化で手一杯だから、箱の数を知ったところで無意味だ」
箱の数を減らせるなら数えるが、手が付けられない状態で数を知ったところで意味がない。
「核の周辺の呪いに変化は無いのか?」
オアジュ魔神が心配そうに俺を見る。
それに小さく笑う。
「変化ならあった。ただ、それが良い変化なのかは分からないけど」
「そうなのか? どんな変化があったんだ?」
興味深そうな表情をするオアジュ魔神に、首を傾げる。
「呪いに、興味があるのか?」
「呪いではなく、この世界の事が知りたいんだ。そうだ、呪いについて俺も調べてみたんだけど」
浄化に役立つ情報でもあったのかな?
「魔神の中に『神が作りだす呪い』について長年研究している奴を見つけた」
神が作りだす呪い?
「そいつは元神なんだが、呪いを研究している事がばれて殺されそうになったので、こっち側に逃げてきたらしい」
こっち側というのは魔神の世界だよな。
そう言えば、神の世界と魔神の世界は別々にあるのか?
それに神と魔神の違いは力だけか?
……何も知らないな。
「オアジュ魔神。神と魔神の違いは何なんだ? それと神の世界と魔神の世界はどういう位置関係になっているんだ? 逃げ込めるという事は、隣りあわせなのか?」
矢継ぎ早に質問した俺に、苦笑するオアジュ魔神。
ちょっと焦り過ぎたかな。
「神と魔神の違いは、持っている力の違いだけだ。それと住んでいるところだけど……どういえばいいかな。1つの空間に、上半分が神の世界で、下半分が魔神の世界という感じだ。2つの世界には、それぞれの力で作った結界があるため、自由に出入りは出来ないようになっている」
なるほど、上下になっているのか。
「神は、どうやって魔神の世界に逃げ込むんだ?」
自由に出入り出来ないのに。
「神達の間で密かに伝わる、禁忌の魔法があるらしい」
禁忌の魔法?
「その魔法は、神力を魔神力に、光の魔力を闇の魔力に変化させる事が出来るらしい。ただ、反対の事は出来ないから。一生で1回だけ使える魔法だな」
力を変質させるから、禁忌か。
「ありがとう。分かりやすかったよ」
「実は俺も最近知ったんだ。魔神の世界と神の世界がどうなっているのか」
えっ?
「住んでいた世界の事だろう?」
そんな事がありえるのか?
「そうだけど、興味が無かった。それに、魔神達が集まると面倒事が起きやすいから、近づきたくもなかったからな」
魔神の世界を動かす、魔神力と闇の魔力を攻撃的な力だと考えている者が多いんだよな。
そのせいで、負の感情が起きやすい世界になっている。
力に対する固定観念を変えられたら、住みやすい世界になると思うんだけど。
「でも、主や光と出会ったお陰で、自分の持っている力でも守る事が出来るのだと知った。認識を改めてからは負の感情に振り回される事も減って、物の見方が変わったよ。凄く感謝しているんだ。家族との関係も変わったしな」
ヒカルがいなかったら、俺も気付けなかっただろうな。
闇の魔力が、暖かい守りの力になるなんて。
「だから、この世界の問題を聞いて、何か力になれないかと呪いについて調べたんだ。調べていると、元神で今は魔神のオウという者が『神が作りだす呪い』を研究していると知った。会って驚いたよ、俺より魔神歴が長いんだから」
「それは凄いな」
神と魔神、どちらも経験しているオウか。
「オウは、どんな事を知っているんだ?」
「魔神が生まれた原因や、魔神が住む世界が生まれた原因を知っていた」
魔神や、その魔神が住む世界の事を?
「ここからは、オウから聞いた話だ。神には『光の魔力』と『闇の魔力』2つの力が宿っていたらしい」
えっ、神はどっちも持っていたのか?
でも今は、光の魔力しか持っていないよな?
「ある神達の元に双子が誕生した。その時父である神は思った。神という存在に闇はいらないと」
なんだか、この先が分かるような気がする。
「そして父である神は、双子の力を無理やり入れ替えた。光の魔力だけ持つ子供と、闇の魔力だけを持つ子供に。父はすぐに闇の魔力だけを持つ子供を殺そうとした。だが、光の魔力を持つ子供が父を殺し、闇の魔力だけを持つ弟を守った。双子は助け合い生きてきたが、成長するにしたがって、同じ時期に生まれた子供達よりはるかに力が強い事が分かった。そして、その事が神達を暴走させた」
暴走?
「双子が成長すれば、自分達を超える力を持つのではないかと心配になった神達がいた。そしてその神達は、双子を排除しようとした。だが、双子は強く、排除は不可能。排除を諦めた神達が次にした事は、自分達の力を光の魔力だけにする事だった。その方法はかなり残酷だった可能性があると、オウは言っていたよ」
残酷か。
目的の為なら、神達は何でもやるだろうな。
「神達は、力を手に入れた事で闇の魔力だけを持つ弟を本気で排除しようとした。光の魔力だけを持つ姉は、弟を守るため自らの力を変化させ2人だけの空間を作りあげた。力を変える禁忌の魔法は、姉が作った可能性が高いそうだ。そして2人だけの空間は、魔神達が住む世界へと変化していく事になる」
神は昔から見たくない者を排除する傾向が強いんだな。
というか、考えが変わっていない……成長していないんだな。
「神達は、自分達の世界に出来た空間を何とか排除しようとした。だが、排除しようとするたびにその空間はどんどん大きくなって、いつしか空間を2つに分けるほどになった」
また排除か。
諦めが悪すぎる。
「成長を続ける空間に神達は焦り、光の魔力をどんどん進化させていき、ついに神力が誕生した。だが同時に、闇の魔力が充満している世界で、魔神力も誕生したそうだ。オウの見解だが、世界はバランスを保つように働くのではないかと言っていた」
バランス。
「光が強くなれば、闇も強くなる。気付けば、神の光の魔力が満ちた世界と闇の魔力が満ちた世界は同じ大きさになっていたらしいから」
今の形が出来たという訳か。
それにしても、今の話を聞く限り、
「魔神が生まれたのも、魔神が住む世界が生まれたのも神の行った事が原因なんだな」
「そうなるな。反する力を認めてさえいれば、魔神も魔神の世界も誕生しなかっただろうな」
神は愚かだな。