軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

93.花の力。

箱の中にある、微かに残った俺の力に意識を向ける。

残っている力は本当に少しなので、あと数分もすれば完全に消えてしまうだろう。

「これじゃあ、辿れそうにないな」

もう少し力が残っていれば、何処から箱に入ったのか分かったかもしれないのに。

「他の箱はどうだろう?」

隣の箱にそっと手で触れる。

すぐに指先に痛みを感じた。

箱の中にある花を確認するが、花にも色の変化は起こっていないようだ。

ただ、指先に感じた痛みは前の痛みに比べると、かなり和らいでいる。

花の色は変わっていないが、浄化はしているという事だろうか?

確かめるためには、箱の中を探るか、蓋を開ける方法なんだけど。

「箱の中を探ったら前の時のように、体を乗っ取られそうになるだろうな。蓋を開けたら……最悪な事になる可能性が高いか」

他に方法は……駄目だな。

何も思いつかない。

諦めるか。

「主、この花を弾ける前にこの地に植えよう」

コアの言葉に、首を傾げる。

この花というのは、色の変わった花の事だよな。

「何か理由でもあるのか?」

「オアジュ魔神が言っていたんだけど、花の色が変わった死者の花は周辺の呪いをゆっくりと浄化してくれるらしいんだ。浄化する力は、まだ研究中らしいけど」

浄化? それに研究?

死者の花を、魔神が研究しているのか?

「植えても悪い事は、絶対に起きないのか? 解放に影響はないのか?」

「どうだろう? そこまでは聞いてないな」

コアが首を傾げて俺を見る。

どうしようかな。

「とりあえず、オアジュ魔神に話を聞こうか」

「そうだな」

箱の蓋を閉めるか迷ったが、妖精が見てくれるらしいので任せる事にした。

「何か変化が起こったら、すぐに連絡をくれ」

「分かった。任せて! 主からのお仕事~。へっへ~」

妖精は、相変わらずだな。

嬉しそうにふらふら飛ぶ妖精を見ていると、コアが不安そうな表情をしている事に気付く。

「どうしたんだ?」

「あの飛び方は、どうにかならないのか?」

妖精の飛ぶ姿に、不安を覚えたのだろう。

妖精が空中で体勢を崩すたびに、前脚がピクリと動いている。

「練習中らしいから、気長に見守ってあげて」

今までの仲間は、気付いたら上手に飛んでいた者ばかり。

だからなのか、妖精を見ていると仲間を見つけた気持ちになるんだよな。

「分かった。あとで、飛び方のコツでも教えておこう」

「ありがとう、頼むな」

地下4階から地下神殿へ移動して、家に戻る。

「オアジュ魔神は何処だろうな?」

「あそこだ」

コアが指す方を見ると、広場でコアの子供たちに何かを教えているオアジュ魔神がいた。

「何をしているんだ?」

「魔神力に対応する戦い方と、闇の魔力の使い方を学んでいる」

相変わらず勉強熱心だね。

「そうか」

「新しい力を手に入れるのは楽しいな。だが、闇の魔力は扱うのが難しい」

コアの言葉に首を傾げる。

光の魔力も闇の魔力も特に使い方に違いはない。

思った通りに使えるのだが。

「そんなに難しいのか?」

「主は、難しいと感じた事は無いのか?」

「無いな」

「そうか。我は光の魔力は自由に魔法を使えるが、闇の魔力で魔法を使おうとすると全く魔法が使えなくなる」

えっ?

全く使えなくなる?

「原因は分かっているのか?」

「あぁ。光の魔力が闇の魔力に反発して、魔法を発動できなくなるんだ」

反発?

というか、光と闇の魔力を別々に使おうとしているのか?

俺は、区別をした事が無いな。

力は力だ。

「光と闇の魔力を区別しているから、反発するんじゃないか?」

「区別か。確かに光と闇を区別しているな」

そう言えば、ヒカルが「どちらの力も守る力だ」と言ってくれたんだよな。

あの言葉から、闇の魔力から受けていた負の影響が減ったんだった。

「区別しているんだったら、闇の魔力から負の影響を受けているんじゃないか?」

「それは大丈夫だ。ヒカルが『光も闇も、どちらも守りの力になる』と教えてくれたから」

ヒカルか。

あの子は、周りをいい方向へ導く力があるよな。

「出来た~! やった~!」

嬉しそうに飛び跳ねているのは、コアの息子クロウのようだ。

どうやら闇の魔力で魔法を使えるようになったみたいだ。

周りからも歓声が上がっている。

というか、そんなに闇の魔力は扱いにくいのか?

「主、済まない。ちょっと用事が出来た」

「えっ?」

コアの言葉に視線を向けると、面白くなさそうな顔をしている。

これは、クロウに先を越されて不貞腐れているな。

本当に負けず嫌いなんだから。

「まぁ、頑張れ」

「今日中に、必ず闇の魔力を使いこなせるようになってみせる!」

鼻息荒く広場に向かうコアを、小さく笑いながら見送る。

子供に、花を持たせるという事を一切しないよな。

まぁ、子供たちもコアに負けないぐらい負けず嫌いだけど。

うわぁ、コアとクロウが睨み合いだしちゃった。

これは、広場が崩壊しないように結界を強化しておいた方がよさそうだな。

「結界強化!」

広場を包む結界が、微かに光ったのを確認する。

これで問題ないだろう。

自分の掌を見る。

光の魔力と闇の魔力の事を話していたからだろうか。

魔法を発動した時に、自分の中の力をはっきりと感じる事が出来た。

どうやら俺は、本当に2つの力を区別していないみたいだ。

魔法を発動した時に感じた力は、光と闇が混ざり合ったような状態だった。

「あいつらは本当に疲れる!」

疲れた表情でこちらに来るオアジュ魔神に、手を上げる。

「お疲れ様。悪いな」

いろいろと面倒を掛けてしまって。

「別に良いけど、コアもクロウも、本当に大人げない」

「強さに関する事だけだよ。それ以外だと頼りがいがあるから」

俺の言葉に、不審な表情を見せるオアジュ魔神。

信じられないようだ。

でも、本当に頼りになるんだって。

「あのさ、少し聞きたい事があるんだけど時間は大丈夫か?」

「あぁ、問題ない。そうだ、奥さんたちがこっちに来たいと言っている。いいか?」

ん?

この世界の現状について話をしたのに、来たい?

疑問に思ってオアジュ魔神を見ていると、俺を見たオアジュ魔神が噴き出した。

「面白い顔をしているぞ」

面白い顔って……そんなに間抜けな表情をしていたのか?

「この世界の事を話していないのか? いつ壊れてもおかしくないんだけど」

壊すつもりは無い。

でも、この世界は未来が不安定だ。

「話した。だが、来たいそうだ」

現状を知っているなら、別にいいけど。

「それならいいけど」

「ありがとう」

嬉しそうに笑うオアジュ魔神。

その顔を見て、少し驚いた。

「どうした? 何か顔についているか?」

「いや、なんだか……オアジュ魔神の表情が明るくなった気がして」

俺の言葉に、少し驚いた表情をしたオアジュ魔神。

「それ、奥さんや子供たちにも言われた。『最近、顔付きが明るくなった』って」

そうなのか。

まぁ、元々が不愛想だったからな。

ちょっと笑っただけでも、かなり印象が変わるだろう。

「それで話とは?」

「コアが、花の色が変わった死者の花を植えると周辺の呪いを浄化すると聞いたそうだが、それは本当か? どこに植えても大丈夫なのか? 何か問題が起こった事は無いのか? 解放に影響は無いのか?」

「今のところ、問題は起きていない。ただ、植える場所によって浄化する力が弱くなったりするみたいだ」

弱くても、浄化をしてくれる。

「あと解放だけど。今のところ影響は無いと判断しているみたいだ」

これからの研究で、影響があったと分かる可能性もあるのか。

「分かった、ありがとう」

どうしよう。

例え弱くても浄化をしてくれるなら、植えたい。

でも、そのせいで呪いからの解放に影響がでてしまったら。

「あっ、花の色が変わった時点で、呪いからは解放されているらしいから」

「植えよう」

それなら問題なし。