軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

67.森に50人近くも?

ー一つ目リーダー視点ー

バッチュを目にしたヌースル魔導師が、引きつった声を上げて倒れてしまった。

少し前から気になっていたのですが、ありえないと思うのですが、獣人達は我々の事を怖がっているような気がするのです。

いや、主に「今日も可愛いな」と頭を撫でてもらっている我々が、怖いわけありませんが。

でも、倒れた獣人ヌースル魔導師の態度からは恐怖心が見て取れてしまうのです。

実はエルフ達からも、我々に対する恐怖心を感じていました。

これは由々しき問題です。

主は我々に可愛さを求めています。

……たぶん。

毎日、「可愛いな」と言うのですから、間違いないはずです。

なのに、周りから怖がられるなんて……主の希望に沿えていません。

どうしたらいいのでしょう。

「リーダー。また余計な事を考えてない?」

ん?

そういえば、してほしい事があると言ってバッチュにここに呼ばれたのでした。

「余計な事など考えていませんよ。いつも主の事だけです」

「うん、それは知っている。でも、主が関わると、間違った方向によく暴走するからさ」

なんて失礼な!

暴走などした事はありません。

「何かをする時は、他の者にちゃんと相談してからな。主が心配するから」

主を心配させるわけにはいきません。

ですから、もちろん相談はします。

しかし、相談するように言われだしたのは最近なんですよね。

何かあったわけでは無いのですが。

……まさか、私が気付いていないだけで主に心配をかけるような事をしてしまったのでしょうか?

「どうしたの?」

バッチュを見ると、首を傾げて私を見ています。

そういえば、分からない事も自己完結せずに相談するように言われていましたね。

「私が主に心配をかけるような行動をとったのかと思いまして」

「そりゃもう色々――」

「えっ? 色々?」

色々とは何ですか?

何も思い当たる事は無いのですが。

寝ている部屋に入るのは駄目だとサブリーダーに言われたので、部屋の中の音に耳を澄ませるだけにしています。

部屋の前にずっといるのも駄目だというので、主が起きる1時間前からに泣く泣く変更しました。

こっそり、孫蜘蛛を主の護衛に付けようとしたら、親玉さんから止められました。

「孫蜘蛛では、主の護衛にならない」と。

あれは、残念です。

私が傍にいない時の主の様子を聞くつもりだったのに。

「普段は有能すぎるのに、主に関してだけは残念な思考だよな」

「ん? 何か言いましたか?」

バッチュがため息を吐いて首を横に振ります。

「それより、協力をお願いしたいんだけど」

あぁ、そうでした。

何かしてほしいのでしたね。

「いいですが、何ですか?」

バッチュが、地面に転がっている6人を指します。

まだ、起きないのですね。

「ヌースル魔導師とそこに転がっている獣人達を、獣人の国に入れるようにしてほしいんだ」

確か彼らは、主の結界に阻まれて獣人の国に入れないのでしたね。

「分かりました。彼らに結界を張ります。それで獣人の国に入れるでしょう。しかし、獣人の国に入れないのは、その国に害があると主の結界が判断したからです。彼らを、獣人の国に入れて大丈夫ですか? 獣人の国で、問題を起こす事は無いですか?」

「大丈夫だよ。彼らを獣人の王に引き渡しに行くために、結界を通りたいだけだから。絶対に目を離さないし」

そういう事なら、問題が起きる確率は低いですね。

「分かりました。えっと、100枚分の結界をイメージするので時間が少しかかります。待っていて下さい」

「100枚? そんなに結界が必要なのか?」

バッチュの驚いた声に、私も少し驚きます。

「当たり前でしょう。主の結界は、どんなに結界を強化しても破られます。だから何重にも重ねて張って全てが破られる前に、結界を超えるしか方法がないのですから」

害意のある獣人が、少しでも主の作った結界に触れてしまうと弾かれます。

なので、獣人が主の結界に触れないように私の100枚の結界で獣人を包み込むのです。

「100枚の結界をイメージするのが、難しいのです」

「それは、そうだろう。100枚なんだから。ごめん、リーダー。そんなに面倒な事だとは思わなかったんだ。前に『主の結界に、弾かれた者でも通れる方法を考えた』と言っていたから。もっと、簡単なのかと」

バッチュの言葉に首を横に振ります。

「いえ、私も一度試してみたかったのでいいんです」

「ん? 試す?」

不思議そうなバッチュに頷きます。

「そうです。自分では試しましたが、実際に弾かれた者で試した事は無いのです。なので、今日の実験は、とっても重要なのです」

「あっ、よかった。自分では試した事はあるんだな」

バッチュの安心した声に、肩を竦めます。

「それは当たり前です。ただ、どうしても結界に弾かれた者とは、出会えなくて」

「えっ? 獣人の国の周りに50人ぐらいいるよ」

「えっ。そんなに?」

獣人の騎士の皆さんも知らなかったみたいですね。

かなり驚いているようです。

「なぜ、そんなに多いのですか?」

「元宰相のヴィスルイの仲間だという事がばれた獣人達が、エルフ国の宰相の弟アルアの協力を得て一時的にエルフの国に身を潜めていたんだ。で、ある程度落ち着いたから獣人の国に戻って、元宰相ヴィスルイの復権を準備するつもりだった。でも、主の結界に弾かれて国に帰れない。戻って来る予定の獣人達が戻って来ないから、森で何かあったのかと仲間が探しに来る。彼らも国に害があると判断されて、国に入れなくなった。それを数回繰り返したせいで50人近くが、森で過ごす事になったんだよ。結界に弾かれて国に入れなくなったという情報が、なかなかタルレスタ女伯爵に届かなかったからね」

「それで50人もの獣人が、自国に入れなくなっていたんですね」

やはり情報という物は大事ですね。

それにしても、エルフ国の宰相の弟が獣人達に協力していたのですか。

エルフ国を調べた時に、隠れ家に潜んでいた獣人達が何者か気になっていましたが、獣人国から逃げ出した者達だったのですね。

なるほど、気になっていたのですっきりしました。

「バッチュに、彼らについては放置すると言われたので、ずっと気になっていたんです。答えが分かって良かったです」

まぁ、放置と言っても彼らには見張りが付いていたので、特に心配はしていなかったのですが。

「まずはエルフの国の事を調べ上げたかったから、獣人達は後回しにしたんだ」

「オップル一族を優先したのは正解だと思います」

大きな一族で、巨大な組織となっていましたからね。

最優先になるのは当然です。

「あの、逃げ出した奴らはエルフの国にいたんですか?」

ダダビスが眉間に皺を寄せてバッチュを見ます。

「そうだよ。だけど今は、エルフ国から許可が下りた獣人達だけだから安心して。エルフ国の問題を解決するついでに、シュリ達に回収……捕縛してもらったから」

シュリですか、という事は巣穴に引きずり込んだのかもしれないですね。

「そうですか。ありがとうございます」

ダダビスがホッとした表情を見せます。

良かったですね、前に逃げ出した元仲間達を探していると言っていましたからね。

「いえ、オップル一族の後始末の一つだから、気にしないで。ところでリーダー、結界のイメージは作れたの?」

あっ、……ちょっと忘れていました。

バッチュを見ます。

「すぐに作ります」