軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

65.生前の行い

呪いの事が分れば、何か解決策が思いつくかもしれない。

僅かでもいい、手掛かりが欲しい。

「亡くなって戻ってきた魂は、生前のしがらみを切ってから帰って来るのが普通だ。だが中には、生前のしがらみが絡みついてしまっている者達がいる。彼らのほとんどが、生前に多くの怨みをかった者達で怨みというのは凄い執念があり、対象の人物が死んでも切れずに一緒に戻って来てしまうんだ」

つまり、生前に誰かから恨まれるような事をしてきた者達という事か。

「魂によっては、亡くなってから怨みが強くなることもある。いったい、生前に何をしてきたのか」

アイオン神がため息を吐きながら首を横に振る。

「死んでも許さない」と、思わせるような事をしてきたんだろうな。

「魂に絡みついている怨みはとても厄介で、神の力では癒す事が出来ないんだ」

神の癒しって凄そうだけど、それが効かないのか。

それだけ、強く怨まれているんだろうな。

まぁ、生前の行いのせいだから自業自得だけど。

「怨みは、魂をゆっくり侵食しながら苦しめていく。侵食を放置すると、透明な魂だったのがどんどん黒くなり、そして形が保てないほどボロボロになるそうだ」

「ボロボロ?」

「あぁ。私はそこまで放置したことが無いので見た事は無いのだが、かなり長い時間を苦しみ続けると、魂の形が崩れていくそうだ。そして最後には、断末魔を上げて消滅するらしい。この消滅を見た仲間は『元の場所に戻るのとは違うからなのか、そうとう苦しそうだった』と、言っていた」

長い時間苦しみ続けるのか。

俺、知らない間に怨みを買ってないよな?

この世界に来る前の掃除屋だった時も、お客様に満足してもらえるようにしっかり綺麗にしてきた。

プライベートでも、恨まれるような事はしていない……はず。

この世界に来てからは……あっ、ちょっと好き勝手しすぎかもしれない。

怨まれている可能性があるかも。

……次からはしっかり考えてから行動しようかな。

「あれ? 呪いは?」

俺は、呪いが生まれる方法を聞いたんだけど。

「呪いは、囚われた魂に絡みつく怨みなんだ」

んっ?

囚われた魂?

絡みつく怨みが、呪い?

「魂が生前の行いを深く反省すれば、ゆっくりとだが怨みは収まっていく。だが、怨まれている魂のほとんどは、反省などせずそのまま消滅を迎える。これが、怨まれた魂が迎える普通の終わり方だ」

つまり、特殊な終わり方を迎える魂がいるという事か。

「魂の中には、時間が経つほどに絡みついている怨みが濃くなってしまう者がいる」

「怨みが濃く?」

「魂が生前持っていた様々な感情が影響を及ぼすんだ。例えば妬み、嫉妬、怒り、憎しみなどの負の感情。それらは普通、生前のしがらみが切れると浄化される。なのに、それらの感情を深く抱え込み過ぎていると、上手く浄化出来ずに戻ってきた魂に残っている時がある。そして最悪な事に、それらの感情は絡みついている怨みに影響を及ぼしてしまう」

つまり、生前の負の感情が怨みに力を与えてしまうのか。

ある意味、これも自業自得なんだろうな。

「怨みが濃くなりすぎると、魂はその怨みに完全に囚われてしまい消滅が出来なくなる。魂にとって消滅は、最後の許しだ。たとえどんなに苦しくても、消滅すれば終わりだから。それが無くなるという事は、永遠に苦しみ続けるという事になる。ここまでなら問題ないのだが、魂を捕らえた怨みは止まらずにどんどん濃くなっていくんだ」

怨みが、どんどん成長し続けてしまうのか。

「怨みが濃くなり続け周りに影響を及ぼすようになると、それを我々は『呪い』と呼んでいる」

なるほど、怨みの濃さと周りに及ぼす影響で呼び方を変えたのか。

今のアイオン神の説明を聞く限り、呪いを発生させる魂はそれほど多くは無いみたいだな。

あれ?

核の周辺の呪いを見る限り、膨大な数の魂が使われたと思うのだけど。

「それと世界を維持するために使われた魂だが、怨みを持った魂だけではおそらく足りない。たぶん、傷を負っただけの魂も大量に使われたはずだ。傷を癒すより、新たに魂を誕生させた方が簡単だし。何より、新しい魂だと神の意思が伝わりやすくて便利に使えるから」

「はっ?」

あっ、しまった。

別にアイオン神が悪いわけでは無いのに、切れそうになってしまった。

でも、やはりそうか。

どう考えても、怨みを持った魂だけでは足りないよな。

「そうなんだ。えっと、生まれてしまった呪いはどうするんだ?」

「世界に呪いが生まれると、世界に負の感情が充満してしまう。それでは困るので、呪いが生まれないように対策を各世界が行っている。その対策に必要なのが死者の花なんだ。死者の花が、魂から怨みを引き離してくれるんだ」

ん?

「『死者の花は、死者の苦しみの声に反応して咲く』と聞いたけど違うのか?」

「その通りだ。ただ声だけではないが」

アイオン神の言葉に首を傾げる。

死者とは魂だよな。

魂の苦しみに花が咲いたら、怨みを引き離す?

どうやって?

「魂に反省が見られないと分かると、世界は魂に死者の花の種を埋め込む」

えっ、種を埋め込む?

「種はすぐに発芽し、魂が苦しめば苦しむほど成長は早くなる。そして苦しみが深いと綺麗な花を咲かせる」

魂が苦しむほど成長し、深いと綺麗な花か。

なんというか、惨たらしいというか。

いや、自業自得だから仕方ないのか。

……感情というのは、面倒くさいな。

「死者の花が花を咲かせると、世界に分身を作る事が出来るようになる。分身は死者の花から力をもらいゆっくり成長し、そして綺麗な花を咲かす。世界に花を咲かせるのには、膨大な力が必要となる。その力を魂に絡みついている怨みからゆっくりと吸い取っているんだ」

魂と本体がある死者の花は実際に繋がっていて、花を咲かせる頃になると世界に分身を作り、怨みが持つ力を利用して世界に死者の花を咲かせている、という事でいいんだよな。

「この方法だと怨みが濃くなっても、花が咲く期間を伸ばしたり、最初の花が枯れたら次の分身を作ったりして、力を使えばいい」

怨みの力が落ち着くまで、花を咲かせ続けるという事か。

あれ?

「死者の花は、花の香りで魔物を引き寄せる」と、コアが言っていた。

妖精も「死者の花の分身を1輪咲かせて、その花が栄養を取ってくる」と。

おかしいな、アイオン神が教えてくれた死者の花と違う。

アイオン神の死者の花は、魂に絡みつく怨みの力を使うために花が咲くと言い、

この世界に咲く死者の花は、世界から栄養を取るために花が咲く。

「アイオン神。死者の花は全て同じ条件で咲くのか? この世界の死者の花は、世界に分身の花を咲かせ香りで魔物を引き寄せて養分にしてしまうんだ。そうだったよな、コア」

ずっと黙って話を聞いているコアに確認を取る。

もしかして聞き間違いという事もある。

「その通りだ。この世界で咲く死者の花は、養分というより必要なのは力みたいだが、その力を世界から取っている。アイオン神が言った死者の花とは、全く違う」

「えっ?」

アイオン神が眉間に皺を寄せる。

「死者の花が世界から力を? 変だな、そんな話は聞いた事が無い」

今までに例がないのか。

それとも報告がされていないのか?

なぜ、死者の花が変わった?

何が、他の世界とこの世界は違うんだ?

この世界を動かすエネルギーが、魂力という点か?

「そういえば、魂力が奪われた魂はどうなるんだ?」

「消滅だ。魂から魂力が奪われたら、その魂は消滅するしかない。だが、魂力を無理やり奪われるのは、そうとう苦しいから、消滅は苦しみからの解放とも言えるかもしれない」

理不尽に連れてこられ、怨まれてもいないのに苦しめられ、そして消滅する。

「どんなに魂を集めて利用しても、消滅して証拠は残らないはずだったんだな」

俺の言葉に、苦々しい表情をするアイオン神。

「そういう事になるな。おそらく魂力を利用しようと考えた神達もそうなる事を予想したんだろう。だから迷いなく使う事にした。実際は、コントロールできないほどの呪いを生み出したが」

「消滅か」

何故消滅していないのか。

死者の花が世界から力を集める理由は何か。

アイオン神を見る。

どうやら、彼女だけでは答えは出そうにないな。

それなら、調べてもらうしかない。

「アイオン神。魂力を使われたのに魂が消滅しない原因と、死者の花が変化した原因を調べて欲しい」

「もちろんだ。第1位の神が関係しているようだから少し時間が掛るかもしれないが、必ず調べる。フィオ神にもすぐに話をして協力をしてもらう」

「頼むな。それと、濃い呪いを浄化する方法も調べて欲しい」

「そんなに濃いのか?」

「見ていくか? ただし、飲み込まれるなよ」

俺をじっと見るアイオン神は、覚悟を決めた表情で頷く。

「コア達は止めておいたほうがいい」

少し不服そうな表情をしたコアと飛びトカゲだが、頷いてくれた。

あんなのは、知らないほうがいい。

アイオン神を墓場に連れて行き、核へと続く地面に手を載せる。

一気に墓場に充満する呪いと呪詛の声。

慣れないと辛いはずなので、すぐに地面から手を離す。

「大丈夫か?」

真っ青になったアイオン神を見る。

彼女は一度頷くと、ゆっくりと息を吐き出した。

「……凄いな」

アイオン神はただそれだけを言うと、無言で帰って行った。