作品タイトル不明
64.まずは知ってくれ。
アイオン神とオアジュ魔神が、神妙な表情で俺の前に座っている。
どうやら俺の様子を見て、重大な何かがあると感じたようだ。
「悪いな、呼びだして」
2柱は、すぐに首を横に振る。
「少し前に地下神殿から、この世界が出来た時からの映像を受け取ったんだ。そこで、この世界が今どういう状況にあるのかが分かった。俺1人では手に負えないので、助けてほしい」
俺の言葉に、驚いた表情のアイオン神。
「翔の力でも、手に負えないのか?」
「あぁ、そうだよ。まったく歯が立たないんだ」
今日の朝も、墓地に行って浄化を行った。
昨日と同じで、浄化の手ごたえを感じる事は今日も無かった。
ただただ、彼らの呪詛が頭に響いてくるだけ。
ほんの少しだけでも、彼らの苦痛が軽減出来ればいいと思うのにそれが出来ない。
その事が本当に悔しく、また自分が無力だと思い知らされる。
「この世界で分かった事を、詳しく話すよ」
アイオン神の目を見て話を始める。
地下神殿を見つけた経緯から、地下に隠されていた死者の花を詰め込んだ棺桶のような箱の事。
そして地下神殿から受け取った映像の事や、その映像から知ったこの世界の現状を淡々と話す。
少しでも感情をこめてしまうと、話が詰まってしまうと思った。
墓地で初めて浄化を行ってから、彼らの声がずっと聞こえているような気がする。
錯覚だと分かっているが。
彼らの声を思い出すと、話せなくなる。
だから、何も考えずただ事実を伝える。
話が進むにつれて、アイオン神の顔色が悪くなっていくのが分かった。
そしてこの世界が、魂の力を奪っている話まで終わると完全に俯いてしまった。
体が、微かに震えているのが分かる。
もしかして、信じられないのだろうか?
微かな不安がよぎるが、アイオン神を信じるしかない。
「これが、俺が知ったこの世界の現状だ」
全てを話し終えると、一つ目のリーダーが入れてくれたお茶を飲む。
少し冷めてしまったお茶が、話し続けていた喉にちょうどいい。
「悪い主。俺では手助けが出来そうにない。そもそも、魔界では神が作った魂は存在しないから」
申し訳なさそうなオアジュ魔神に、首を横に振る。
「魔界に迷い込む魂はたまにいるが、あそこは神が作った存在が存続できる場所ではない。だからすぐに消滅してしまうのだ。彼らに力がある事も知らなかったよ」
そうなのか。
本当にまったく関りが無いんだな。
「アイオン神、この世界の事を調べたと前に話してくれたよな? その時に、どうして魂力の事に気付けなかったんだ? おかしくないか?」
オアジュ魔神とアイオン神は、そんな話をしていたのか。
それにちょっと驚くな。
「調べたが分からなかった」
「だからそれが、おかしくないかと聞いているんだ」
オアジュ魔神の問いに、アイオン神の眉間に皺が寄る。
「フィオ神は、時を司る監視者の1人だろう?」
監視者?
そんな話は聞いた事が無いな。
まぁ、神に興味がなかったから聞かなかったのは俺だけど。
「そうだ」
「フィオ神が、知っていたのに隠した可能性は?」
それは、俺も考えた。
フィオ神は、この世界について時を遡ってまで調べてくれた事を知っている。
それなのに、なぜ気付かないのだと思ったから。
「それは無い!」
アイオン神が強く否定するのを、飛びトカゲもコアも静かに見ている。
おそらく彼らは、アイオン神を信じていいのか迷っているのだろう。
「フィオ神はそんな事をする神ではない。今の創造神からの信頼も厚い神だ。おそらくフィオ神は、ある神が用意した答えに、誘導されたんだ」
ある神が用意した答えに誘導?
そんな事が出来るのか?
「フィオ神は、世界を守る神々を監視する5柱のうちの1柱だ。その中で彼は、第3位についている。5柱の中で3番目に強い力を持っているからだ」
フィオ神が、そんな上位の地位についていた事にびっくりだな。
ここで見る彼は、あまり威厳を感じる事は無かったから。
「フィオ神の調査結果を変える事が出来るのは、彼より強い力を持つ神だけだ」
それはつまり、監視者の第1位と第2位だけという事になるよな。
他に強い力を持っている者がいる可能性もあるけど。
「第1位か第2位の監視者は、この世界の事を知っていながら放置し、見つかったら関わった神達を隠すために隠蔽したという事か」
オアジュ魔神の言葉に首を振るアイオン神。
「第1位の監視者だ。第2位の監視者とフィオ神の力は僅差だから、調べる時に使用した神力に自分以外の神力が混ざると違和感を覚えるはず。でもフィオ神は、自分が調査した結果に違和感を覚えていない。という事は、かなり力の差がある神が、完全にフィオ神の力を飲み込んで気付かせなかったんだと思う」
……よくわからなかったが、つまり強い力でごり押しした感じかな?
アイオン神が、映像が映し出されていた空中を睨みつける。
「見習い達が、第1位の神を指す言葉を言っていたからな。しかしまさか、第1位の神が……嘘だろ」
アイオン神にとってかなり衝撃的な事みたいだな。
「監視者を見張るのは創造神だよな?」
オアジュ魔神が少し苛立った様子で、アイオン神を見る。
「そうだ。創造神が見逃すはずが……。あっ、前の創造神か。前の創造神は、永遠という時間に苦しんで疲れ切っていた。もしかするとこの世界の事を知っても、第1位の神が関わっているから調べもせず問題ないと判断したかもしれない。前の創造神は、第1位の神を本当に信用していたから」
「たとえ永遠という時間に苦しんでいても、信用している神が関わっていたとしても、やるべき事をしなくていい理由にはならないだろう」
呆れた表情のオアジュ魔神に、アイオン神が頷く。
「その通りだな」
フィオ神についての判断は、今は無理だな。
第1位の神が邪魔をしたのだとしても、証拠がない。
それなら今は、もっと重要な事がある。
「アイオン神。悪いが、呪いをどうにか出来ないか? 彼らの苦しみは本当に酷い。少しでもいい、彼らを癒す方法は無いか?」
前の創造神については、どうでもいい。
今更、何を話したところで結果が変わる事は無い。
今、重要なのは呪いだ。
俺の言葉に真剣な表情で考え込むが、暫くすると首を横に振った。
「私の記憶では、今までに魂力を利用した問題は起こっていない」
無いのか。
「普通の魂の扱いは、どういう感じなんだ?」
「神の力で作られた魂は、一生を終えると傷がついている事が多々ある。だから神は、その傷を癒して綺麗にしてから輪廻に戻す。何度もそれを繰り返すと、魂が消滅を望む時がある。その場合のみ、神は魂をその身に受け入れ消滅させる。元は神の力だから、元に戻るという感覚に近い。魂も消滅とはいえ、元の場所に戻るので苦痛など一切ない」
普通は、苦痛など感じる事は無いんだな。
いや、魂は傷を負って戻ってくるんだっけ?
「魂に傷が出来ると、魂は痛みを感じるのか?」
「いや、感じない。魂にある傷は、生前は感じる事が出来るが死んだら感じなくなる。ただ、魂が傷ついたままだと次の人生が悲惨な物になるから癒して綺麗にするんだ」
なるほど。
「それにしても、魂1つの力などたかが知れている。この世界を維持するだけの魂の数など、想像も出来ない。いったい、どれだけの魂が被害に遭っているのか……」
アイオン神はため息を吐くと首を横に振った。
「あのさ、呪いはどうやって生まれるんだ?」
今までのアイオン神の説明では、呪いが生まれる経緯が分からない。
傷が上手く癒えないと、呪いが生まれるのか?