作品タイトル不明
53.リーダーは頑張った!
ー三つ目のあんちゃん視点ー
壁に入ったヒビに苦笑してしまう。
リーダーは、しっかりしているようで時々……時々かな?
まぁ、抜けているところがある。
今回も、主の家の窓より小さいと分かったはずだけど、入れると思ったんだろうな。
親蜘蛛さんと親アリさんは、彼らが入るには窓が小さすぎると分かっていたと思う。
ただ、あの2匹はそんな些細な事を気にする性格ではない。
「そう考えると、壁にヒビぐらいで済んで良かったのかも」
壁に大穴が開いたわけじゃないし。
「ゴ、ゴーレムだわ!」
女性の叫び声に視線を向けると、ぎらぎらと表現するのがぴったりな服を着た女性が床に座っていた。
親蜘蛛さんの上にいる、けばけばしい服を着たエルフに視線を向ける。
……ペアだろうか?
あの2人が並ぶと、目がチカチカしそうだな。
まさか……このエルフの国ではけばけば、ぎらぎらが主流なのか?
慌てて周りにいるエルフ達に視線を向ける。
なぜか「ひっ」という叫び声があがったが、今はそんな事はどうでもいい。
エルフの国のファッションが気になる!
「良かった。他のエルフ達は普通だ」
この部屋の中にいる者達は、今まで見て来たエルフ達より繊細で豪華な服を着ているが、ぎらぎらでもけばけばでもない。
ちゃんと自分達のいいところを引き出す服を着ている。
それにホッと安堵すると、リーダーが驚いた表情で俺を見ている事に気付いた。
「何? どうかしたの?」
「何って。いきなり殺気を含んだ視線で周りを威嚇するから、驚いたんだ」
殺気?
いやいや、ちょっと周りのファッションが気になって見てただけだよ?
殺気なんて振りまいてないけどな。
「あの、宜しいでしょうか?」
声がかかったので視線を向けると、少し高い位置にいる男性が豪華な椅子から立ち上がっていた。
彼がエルフ国を治めているデルオウス王だね。
うん。
他のエルフより、風格がある。
「デルオウス王。初めまして、世界の柱である主の 僕(しもべ) 、一つ目のリーダーといいます」
おぉ、リーダーは凄く頑張ったようだ。
自分の事を簡潔に、そして主の事を一言で説明した!
元々主を紹介する説明が、「これ、いつ終わるの?」と言いたくなるほど長く詳細だった。
なんせ、今まで主が使用した魔法とこの世界で使われている魔法を比較して、主の魔法がいかに優れているか、すなわち主がいかに素晴らしく優れた方なのかと称える長文を含んだ説明だったからね。
正直、あれは凄かった。
まぁ、主がこれまで使用した魔法は失敗を含めて全て、俺の心にも残っているけど。
あの、闇の魔力を抑える魔法は……っと、今は関係ないか。
「そんなリーダーが、あんな簡潔に……。まぁ、主にお願いされちゃったからな」
リーダーが主の紹介文を発表している時に、たまたま主が通りかかったんだけど、なぜか凄い勢いでリーダーを止めた。
そして、誰かに主を紹介する時は「簡単に簡潔に、一言で!」と言われてしまった。
その瞬間、リーダーが膝をついた。
あまりの絶望感に力が抜けてしまったらしい。
それからほぼ2日。
リーダーはずっと、主を適切に紹介する一言という物を探していた。
あの時のリーダーは、身の毛もよだつほどの凄まじい気迫を纏っていて怖かった。
「リーダー、さすがです。見事です!」
「あんちゃん、ありがとう」
周りは不思議そうにするけど、これは本当に凄い事なんだって!
「リーダー殿? あの……」
デルオウス王の視線が、親アリさんと親蜘蛛さんの上の方を向いている?
あぁ、そう言えばエルフ達を彼らの上に乗せていたな。
「すみませんが、親アリさん。親蜘蛛さん。彼らを下ろしてください」
リーダーの言葉に、親蜘蛛さんと親アリさんが、エルフ達を床に、
ドサッ、ドサッ、ドサッ。
勢いよく転が……下ろした。
あとはナピスラだけど、彼はゆっくりと下ろされたみたいだ。
「デルオウス王に、少し質問があって来ました。よろしいですか?」
リーダーの言葉に、部屋の中が緊張感に包まれたみたいだ。
まだ、質問は1つもしていないのに。
特に、顔色が悪くなったのは……えっ、部屋の中にいる半数が悪くなってない?
この部屋にいる多くの者達は、何か思う事があるって事だよね?
これ、どういう集まりなんだ?
デルオウス王は……戸惑っているけど、顔色はそれほど変化していないみたいだ。
「エルフの国で、奴隷を作る道具を見つけました」
「なんだと!」
驚いた表情になるデルオウス王を、じっと見る。
嘘ではなく、本当に知らなかったように見える。
ただ飛びトカゲ曰く、上に立つ者は嘘を本当にするのがうまいから、騙されないようにと言われた。
……どっちだろう?
「これです」
リーダーが、今日見つけた道具を手の中に出す。
やっぱり、あの異空間魔法はいいな。
主が異空間を作ったと知ったリーダーが、試行錯誤の上に作りあげた空間ポケット。
まだ、小さい物を仕舞えるぐらいの空間しか作れないらしいけど、見事成功。
今のところ、リーダーしか作れないので羨ましい。
「呪具」
じゅぐ?
デルオウス王の言葉に、リーダーが首を傾げる。
「これをご存知ですか? もしかしてデルオウス王が、これを作るように指示を出したのですか?」
「違います。それは遥か昔に滅びた呪具の1つ。作り方さえ知っている者はいないはずなんですが……いったい誰が」
「あぁ、作り方でしたらオップル一族が知っていますよ。設計図が彼らの隠れ家にあります」
そうそう。
オップル一族の隠れ家には、道具を作る設計図が隠されていたらしい。
どんな物があるのかと仲間内で話していたら、道具作りに興味を持った農業隊のセブンティーンとナインティーンが、設計図を元に作ってくれたんだよね。
あれから2体は、道具作りに嵌ったんだった。
そう言えば、数日前に隠れ家で見つけた全ての設計図を書き写したと言っていたな。
面白い道具があるといいな。
「違います! そんな物はありません!」
慌てた様子で叫んだ男性を見る。
彼は、オップル総隊長かな?
報告されている風貌から、たぶん合ってるはず。
「オップル総隊長。黙れ」
デルオウス王の声が部屋に静かに響く。
「しかし、そんな嘘を認めるわけにはいきません」
リーダーを見る。
実は俺もちょっと不思議なんだよな。
設計図が彼らの家にあると言ったけど、知ってたのかな?
「どこかでこの形を見た気がしたので、ずっと考えていたんです。そして思い出しました。これ自体を見たのではなく、紙に書かれた物を見たのだと。そして、その紙というのがオップル一族が隠れ家で保管している設計図なんです」
「お待ちください。オップル一族に、呪具の設計図などありません。本当です」
「おや、あなたはご存知無いのですか? エルフ国、南に位置するオージュ村にオップル一族の隠れ家があります。そこにこの道具の設計図があるのを」
「えっ……」
オップル総隊長が目を見開いて、呆然とリーダーを見ている。
知らなかったという雰囲気では無いなぁ。
「他にも、チェンリという町にも隠れ家があり、そこにも設計図がありますよね。そこは主に爆発する道具の設計図が多いですよ。珍しい場所だと、オオバンリという村の近くの洞窟でしょうか。他には――」
「認めます! ですが、それは私の指示で集めていたんです。オップル一族は関係ありません」
「えっ?」
オップル総隊長の言葉にリーダーが首を傾げる。
「おかしいですね。設計図は、オップル一族の2人の当主がそれぞれ管理していると報告が来てますが」
そうそう、オップル一族には当主が2人いるんだよね。
1人はパーティーなどで、大勢のエルフと会う当主。
もう1人は、限られたエルフとだけ会う当主。
バッチュが調べたんだけど、「密会! これぞまさしく悪!」と大興奮だったな。
「生活に役立つ道具の設計図等は、アリャンテという者が。エルフの国のあちこちに隠している道具の設計図等は、バチュテという者が。それぞれ管理してますよね?」
全員の視線がオップル総隊長に向く。
「顔色が悪いですね。大丈夫ですか?」
あっ、崩れ落ちた。
大丈夫じゃないみたいだね。