軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

52.安全第一です。

ー一つ目リーダー視点ー

バタっという音に視線を向けると、けばけばしい服を着たエルフが地面に横たわっています。

どうやら、親アリさん、親蜘蛛さんを見て気を失ってしまったようです。

威張りくさっていたのに、気が小さいとは……可哀想です。

あぁ、彼はもしかして「弱い犬ほどよく吠える」というやつなのかもしれません。

趣味が悪くて、性格がそれとは……なんだかとても哀れですね。

傍にいるティナスは名前では無かったのでしたね。

ナピスラを窺います。

彼も顔色は悪くしてますが、しっかりと意識はあります。

うん。

彼は、やはりこの場所にいるエルフの中で一番強いですね。

「リーダー、準備が出来たよ!」

あんちゃんの声に視線を向けると、親蜘蛛さんの糸でぐるぐる巻きにされたエルフ達がいました。

「ありがとうございます」

傍に寄って、エルフ達の状態を確かめます。

彼らは、親アリさん、親蜘蛛さんに運んでもらう予定です。

そこで考えられる危険は、彼らが運ばれている途中で暴れて落下する事です。

怪我をさせるのは本意ではありません。

なので、顔以外を糸でぐるぐる巻きにしてもらいました。

「完璧ですね。これで安全に王に会いに行く事が出来ます」

この状態でしたら、親アリさん、親蜘蛛さんも運びやすいでしょう。

おや?

何やら、焦っているエルフが1人いますね。

「どうかされたんですか?」

「ひっ!」

あっ……声を掛けただけで眠ってしまうとは、ちょっと失礼です。

優しく声を掛けたのに。

「あの、本当に王に会うのですか?」

ナピスラが不安そうに私を見ています。

いったい何が不安なのでしょうか?

「もちろんです。奴隷を作る道具を持っていた真意を聞かなければなりません」

「あっ、それは……」

ナピスラの視線が、けばけばエルフに向いてますね。

つまり、彼が作り隠していたという事でしょうか?

「あそこで倒れている彼が、作って隠すように指示を出しているのですか?」

ナピスラは、首を横に振ります。

何かを考えているようです。

少し待ちましょう。

「ガルジャ副隊長の後ろには、オップル総隊長という者がいます。指示は彼からだと思います」

オップル総隊長ですか。

最近代替わりした騎士総隊長の事ですね。

「なるほど、そうでしたか」

糸でぐるぐる巻きになっているエルフ達が、焦ったのが分かりました。

おそらくナピスラが、今話した情報を漏らすとは考えていなかったのでしょう。

「しかし、オップル総隊長ですか。彼の一族は面白いんですよ。前オップル総隊長ですら、問題が起きたらすぐさま切り捨てるほど、非道な考えが一族全体に行き渡っているんです。バッチュが『真の悪』を発見したと喜んでいました」

正義に必要な「悪」がいたと興奮していたので、私もオップル一族の報告書はしっかり読ませていただきました。

とはいえ、彼らは本当に色々な事に手を出しているようで、報告書は途中の物でしたが。

そうだ。

バッチュが「彼らを裁くのが、俺の使命」といって、子蜘蛛達や子アリ達を巻き込んで何かしてましたね。

あれ?

バッチュは子供達とヒーローごっこをする時に悪役だったような……まぁ、今それを気にしても仕方ないですね。

「オップル総隊長を知っているんですか?」

「はい。彼を含め一族の事を詳しく調べている仲間がいます」

おや?

ナピスラが驚いていますね。

「凄いですね」

何がでしょうか?

分からず首を傾げてしまいます。

「リーダー。まだ行かないの?」

あっ、そうでした。

とっとと王に会って真意を確かめて、主の元に帰りましょう。

いつあの空間から出てこられるか分かりませんからね。

「では、行きましょう。ナピスラは、親アリさんに乗って下さい。他のエルフ達は、親蜘蛛さんに一纏めにして運んでもらいますので」

おや?

起きているエルフ達の震えが激しくなりました。

「大丈夫ですよ。安全に王の元に運びます。けして途中で落としたりしませんので」

親蜘蛛さんなら、落とさずに移動が簡単に出来ます。

彼らの糸は万能ですからね。

「あの、宜しくお願いします」

ナピスラが親アリさんの傍に寄り、頭を下げています。

その親アリさんは、他のアリさん達に比べると穏やかな性格をしているので、安全に移動が出来るでしょう。

「では王様に会いに行きましょう」

親蜘蛛さんや親アリさんと共に、エルフの国を王城に向け駆けます。

さすがに村や町の中を駆けるとエルフ達の邪魔になるので、結界を逆さ向きで走ります。

まぁ、よくある事なので問題はありません。

ただ、今日は慣れてない者達が一緒です。

注意しなければなりません。

チラリと親アリさんに乗っているナピスラを窺います。

魔法で落下することはありませんが、不安に感じているようです。

先ほどより顔色が悪いです。

「あんちゃん、ナピスラが限界に近いので屋根の上を走りましょう」

「分かったぁ~」

結界を走るために使用していた魔法を解除すると、急激に体が上空から落下していきます。

それを、風魔法で速度を落とし屋根の上へとゆっくり下ろしていきます。

「成功! えっと、あっちだね」

既に王城は見えているので、あんちゃんの走る速度が上がります。

「ひ~」

ん?

今の声はナピスラでは無いですね。

それなら、問題なしです。

「リーダー、王は何処にいるの?」

失敗しました。

それを確かめるのを忘れていました。

さて、王は何処に……あれは、子アリですね。

なぜここにいるのでしょうか?

「あの子アリに、王の居場所を聞きましょうか」

あっ、気付いて前脚を振っています。

私も振り返しておきましょう。

「お久しぶりですね。何故、ここいるのですか?」

速度を落として、子アリの傍で止まります。

完璧です。

「リーダー、お久しぶりです。友人がいるので会いに来たら、彼の兄に協力を頼まれました」

友人ですか?

そう言えば、王弟のデルフォスと仲がいい子アリがいると聞いてます。

なるほど、この者がそうなのですね。

「あっ、もしかして王がどこにいるかご存知ですか? 会いたいのですが」

「それなら、この窓の中の部屋にいますよ。それより、あれは……餌?」

餌?

子アリの視線を追うと、グルグル巻きになったエルフ達。

そう言えば、子蜘蛛達は糸を使って狩りをしてましたね。

「違いますよ。安全に移動するためにあの状態です」

「なるほど」

納得して頂けたようです。

それにしても、蜘蛛達がエルフを食べると思われなくて良かったです。

過去は知りませんが、今は食べませんからね。

窓の中を覗き込みます。

王は……見つけました。

しかしこの窓、少し小さいですね。

周りを見ますが、どの窓も小さいです。

「まぁ、なんとかなるでしょう」

窓に手を掛けてぐっと押します。

おや?

これは魔法でしょうか?

反発されてしまいました。

仕方がないですが、力で押し返してしまいましょう。

中に人がいるので、ゆっくり、ゆっくりです。

魔法の影響が消えましたね。

成功です。

「では、みんなで中に入りましょう」

窓を開けて、中に入ります。

親蜘蛛さんが続いて部屋に入ってきます。

パリーン、バキバキッ。

「あっ、親蜘蛛さんにはこの窓は小さすぎましたね。壁にヒビが入ってしまいました。申し訳ありません」

おや?

皆さんが面白い表情でこちらを見ていますね。