作品タイトル不明
36.魔法が……不安だ。
何となく柱から1歩離れる。
うん、距離感は大切だ。
「どうしたのだ?」
俺の行動を不思議そうに見るコアに苦笑する。
あれ?
コアがいる。
今更だけど、コアとチャイがいる!
いつも一緒にいるから違和感ないけど、今は駄目だよな。
「コアとチャイは、森に待機だったはずだよな?」
「あぁ、そうなのだが。主が消えてすぐに、目の前に道が現れたのだ」
「えっ、そうなのか?」
だとしても、入ったら駄目だろう。
道がこの地下神殿に繋がっていたからよかったものの、他の場所に繋がっている可能性もあったんだから。
「入るかどうか迷ったのだが、どこに続いているのか調べる必要があると思った」
「そうかもしれないが、何かあったらどうするつもりだったんだ?」
「それは大丈夫だ。親蜘蛛がいたから紐を頼んだ」
紐?
確かにコアの腰に紐が結ばれているな。
チャイの腰にも巻かれているようだ。
「何かあったら引っ張って、合図を送る事になっている。それと飛びトカゲが心配して来ていたから、我の代わりに待機している」
「なるほど。そういう事か」
まぁ、それならいいか。
「コアとチャイがここにいるという事は、森の中に現れた道はこの地下神殿に繋がっていたという事か」
俺達が地下神殿に入ったから、森の中に道が現われたのか?
いや、それなら親蜘蛛達が地下神殿に入った時に、外と繋がるはずだ。
ではどうして、道が現れたのか。
「時間設定でもされているのか?」
2日に1回数時間だけ道が現れるとか。
それなら「見つけてもすぐに分からなくなる」と言った子アリの話と辻褄があう。
道が消えて無くなるのだから、分からなくなって当然だ。
でも、同じ場所に現れたらすぐに見つかるよな。
もしかして場所もランダムとか?
これは、調べるしかないな。
「そういえば、地下神殿には見習い達が3神として祀られているのだったな。あと、この近くに古代遺跡があるはずなんだが」
別に3神というか、3人の見習いが祀られているのを見たいわけではないが確認は必要だよな。
見た瞬間に、イラっとして壊さないようにしないと。
「見習いより気になるのは古代遺跡か。ロープが見つかった場所だよな」
そういえば、獣人達の中には人の近くにロープがある事を不安に感じている者がいるんだったな。
そろそろ、ロープを俺の家に移動させるか。
そうすれば、そんな不安も無くなるだろうし。
帰ったら、ロープの置き場所を一つ目達と相談しようかな。
「まぁ、まずはそれより探検だ!」
さっきから地下神殿を見て回りたくてうずうずしてたんだよな。
久々の探検。
しかも、何かありそうな人工物。
……人工物でいいのか?
この場合は、見習い物と呼ぶべきか?
駄目だ、テンションが上がって馬鹿な事を考えてる。
「よしっ。行こう!」
少し見て回れば、気持ちも落ち着くだろう。
それにしても、凄い柱だよな。
……全ての柱の中に妖精がいる。
見つけた時は、嬉しかったが今は恐怖だな。
「主、我らもいいか?」
「コア達も行こう! ここまで来たんだ、皆で見て回ろう。あっ、紐は大丈夫か?」
「紐を通して主と会えた事を伝えたから、そろそろ……消えたな」
コアが話している途中に、腰に巻かれていた紐がふっと消えた。
チャイの腰にあった紐も既に無い。
何だろう。
蜘蛛達の扱う糸が、進化し続けているような気がする。
いったい彼らは、糸をどうしたいんだろう。
楽しみだが、ちょっと怖いな。
「紐の問題も無いなら、行こうか」
水色は、空から神殿を調べてくれているのか。
親玉さんは……柱を登ってる!
変な音がしたら、即行で逃げよう。
「何もないな」
暫く見て回ったが、柱が並んでいるだけで何もない。
もう少し歩くと、建物の中心部分につくはずだ。
そこに、見習い達が祀られている何かがあるんだろうか。
「えっ、石?」
中心部分だろう場所に、巨大な石がある。
石の周りを歩いてみるが、石以外に何もない。
柱と石。
「この石が見習い達を祀る何かか?」
柱と同様に、真っ白に見えるのに傍に寄ると中身が透けて見えた。
中を覗き込むと、水色に光っている球体があった。
嬉しい事に、妖精はいないようだ。
いや待て、あの水色の球体が妖精なんて事は……。
「あの水色の球体が何か分かるか?」
コアとチャイが首を横に振る。
そういえば、青いふわふわが妖精だとは知らなかったな。
「水色」
「どうした?」
上空からすっと下りてくる水色。
石を指して、
「中に水色に光る球体があるんだけど、妖精か?」
俺の言葉に石を覗き込む水色。
「違う。あれは妖精ではないようだ」
良かった。
「そうか。ありがとう」
妖精ではないのなら、大丈夫。
石にそっと触れてみる。
ん?
温かい?
手からじんわりと、石の温かさが伝わる。
「冷たそうに見えたけど、違ったな」
ゴゴゴゴゴ……。
「えっ?」
石から手を離して数歩、離れる。
地面が微かに揺れているのが分かる。
とっさに柱を見てしまった。
ビクリともしていない。
「主、階段だ」
階段?
コアの視線を追うと、石の前の一部の床が消えて階段が現れていた。
石に触れたからか?
まさか、こんな仕掛けがしてあるとは。
立っている場所の床が消えなくて良かった。
そういえば、この地下神殿に入ってから、力を感じなくなったんだよな。
地下神殿の外は、魔力の流れを感じられたんだが。
しかも、俺の魔力が何かに抑え込まれているような気がする。
胸に手を置き、体内の魔力を探る。
そこに魔力があると分かるのに、何かに邪魔をされて触れられず感じられない。
「不思議な感覚だな」
魔力を探るのを止めて、階段の傍まで寄る。
そっと階段下を覗き込むが、暗くて何も見えない。
灯りが欲しいが、魔力に触れられないので魔法が使えない。
でも、もしかすると……。
「灯り」
やっぱり、無理か。
「主、ちょっと下を見てくる」
「えっ、待った!」
子蜘蛛が階段に近付くので、慌てて止める。
何があるか分からないのに!
ぱっ。
ん?
不意に階段が明るくなった。
どうやら、センサー付きの階段だったようだ。
「よかった。これで見えやすい」
子蜘蛛の1匹がそう言うと、とっとと階段を下りて行く。
「あっ」
今度は、引き留めるのを忘れてしまった。
慌てて、階段下を覗き込む。
「結構深いな」
階段を下りていく子蜘蛛の姿が、徐々に小さくなっていく。
ようやく一番下に降りたのか、子蜘蛛の動きが止まった。
「大丈夫か?」
一番下まで降りた子蜘蛛は、上に向かって手を振った。
「無事みたいだな」
さて、子蜘蛛が頑張ってくれたので俺も頑張るか。
下にいる子蜘蛛に向かって手を振ると、階段に足を踏み出す。
「ふぅ~」
手すりの無い階段って怖いな。
いつ滑り落ちるか、ドキドキもんだ。
「主、あっちに光が見える」
チャイが指す方を見ると、長い廊下の先が淡く光っているのが見えた。
「行こうか」
あれ?
周りが探れない。
あっ、そうか。
魔力を抑えられているから、ここで魔法は使えないんだった。
いつも魔力を使って周りを探っていたから、ちょっと不安になるな。
最初の頃は、魔法を使う事に違和感があったのに、今は使えないと不安になるな。
「光る壁?」
廊下を進むと、光っている物の正体が見えてきた。
どう見ても、突き当りの壁が光っている。
まさか行き止まりを表すために光っているとか、ないよな?
壁の前に来ると、光がぐっと弱くなる。
そしてはっきり見える壁の存在。
「どう見ても壁だよな」
淡く光る中に壁が、はっきりと見える。
本当に行き止まりだ。
「もしかして、通れるとか……」
そっと壁に手を伸ばす。
バン。
「壁だな」
通れるかもと思ったが、ただの壁だった。
残念。
えっ、本当に行き止まり?