作品タイトル不明
34.消えた?
「主、ちょっといいか」
少し深刻な雰囲気の親玉さんに、声を掛けられた。
「どうしたんだ?」
「『子供達が話していた地下神殿を見つけた』と、我が子達から連絡があった」
「そうなのか? 凄いな」
あの話を聞いてからまだ6日。
まさか、もう見つけたとは。
あれ?
何か重要な事を忘れているような……なんだっけ?
それに、子供達の手柄なのに親玉さんの雰囲気が暗い。
「何かあったのか?」
「それが、我が子達との連絡が途絶えてしまったのだ」
「えっ! いつからだ?」
家から離れたら1日1回は連絡を取り合っていると聞いている。
それが途絶えた?
「2日前に、『地下神殿を見つけた』と場所を知らせてきたので、待機を指示した。それに対して『了解』と返事が来たんだが、それが最後だ」
つまり2日間も連絡が途絶えているのか。
「地下神殿があった場所には行ったんだよな?」
「もちろん。だが、周辺に地下神殿があった痕跡はなかったし、我が子達の姿も無かった」
地下神殿の痕跡がない?
あっ、思い出した。
子アリが地下神殿の事を「なかなか見つけられないし、見つけてもすぐに分からなくなるんです」と言っていたんだった。
「親玉さんは、子アリの話を覚えているか?」
「もちろん。だから、場所の連絡をもらってすぐに向かった。時間にして30分。だが、何もなかった」
30分で地下神殿も親玉さんの子供達も消えたか。
連絡が取れる環境にいたら、絶対に連絡を取るはずだ。
つまり、連絡が取れない環境にいるか、最悪……いや、これは考えるのは止めよう。
まず、俺が出来る事は。
「親玉さん。地下神殿を見つけたという場所まで案内してくれ」
「分かった。だが、危険があるかもしれないんだが」
「大丈夫だ。行こう」
俺の言葉に頷くと、親玉さんはすぐに森へ向き直って走りだした。
かなり心配なんだろう。
いつもより余裕が無いのが分かる。
俺が走り出すと、コアとチャイ。
そして水色が付いて来た。
「コア、チャイ。それに水色。何が起こるか分からないから警戒してくれ」
「「「わかった」」」
親玉さんの後ろについて走っていると、人の国エンペラス国の近くまで来た。
「ここだ」
親玉さんの隣に立ち周辺を見回すが、特に目に付くようなものはない。
地下神殿に入れる扉や洞窟なども見つけられないし、空気中に歪みも感じられない。
歪みがあれば、そこに何かがあると分かるのだが、それもない。
本当に、何もない。
「普通の森だな」
「あぁ、そうだな。チャイは何か気付いたか?」
コアの質問にチャイが首を横に振る。
コアもチャイも、分からないという事だな。
「水色はどうだ?」
「ん~。他の場所との違いはない。普通の森だ」
確かに、本当に周りと変わらない。
そう言えば、子アリは「人の国の近くにあるそうです」と言っていたな。
つまり、目撃情報は全て人の国の近くの森。
親玉さんの子供達が不確かな情報を伝えてくるとは思えない。
つまり、此処に何かが必ずある。
「それをどうやって見つければいいのか……」
とりあえず、この周辺に探知魔法をかけて見るか。
えっと、土や木々や花とは異なる物があったら、光るようにしてっと。
「探知魔法」
見える範囲の森に探知を掛けたんだが、魔力の消費はそれほどなかったな。
「ん~、光る場所は無しか」
ここではない?
いや、それならどうしてこの場所を知らせたんだという話になるな。
「親玉さん、子供達はどの大きさだ?」
孫蜘蛛で小さい子達だったら、俺では見つけられないからな。
「親蜘蛛2匹と子蜘蛛2匹だ」
あぁ、絶対に見つけられるサイズだな。
特に親蜘蛛さんはかなり大きい。
あのサイズの物が見つけられないとなると……地下神殿……地下か?
何かがあって地下神殿に入った可能性は考えられないか?
例えば、地下神殿へ続く道が消えそうになっていたから入ってしまったとか。
ありえそうだな。
想像でしかないが、地下神殿に親蜘蛛さんがいると考えて……親蜘蛛さんを探知してみるか。
探す場所は地下。
この周辺の森の下!
「地下を探知、探すのは親蜘蛛達だ」
うわっ、体から大量に魔力が消費されたな。
ん?
俺の魔力が何かに触れた?
これって……力の塊?
「この力、どこかで似たような力を感じた気がする。どこだ?」
「主? 何をしているんだ?」
親玉さんの不安そうな視線に、また何も言わずに魔法を実行してしまった事に気付く。
あ~、またやってしまった。
「主?」
「あぁ、親蜘蛛さんが消えたとしたら地下神殿に行ったからじゃないかと思って、地面の下に探知を掛けたんだ。そうしたら、俺の魔力が何かを捕まえた。ん?」
この見知った魔力は……。
「親玉さん。親蜘蛛達を見つけた!」
「何? どこに?」
何処?
これって、地面の下か?
何か違和感があるな。
まるでそこにあるのに、違うような……意味が分からないな。
「まさか地下神殿は、この世界とは異なる空間にあったりして……あっ!」
そうだ。
この力!
俺が作った異空間!
あそこに満ちていた力に似ているんだ。
なるほど、地下神殿は異空間にあるのか。
地下神殿があの場所と一緒なら、入れる者には制限が設けられているはずだ。
親蜘蛛達や子蜘蛛達は入れたが、俺は大丈夫かな?
「これは、やってみるしか答えは出ないな」
トラップとか無いよな?
そんな事、異空間を作る時に聞かなかったし……きっと大丈夫だ。
えっと、見つけた異空間に移動できるようにイメージを作って。
簡単に出来たな。
後は一緒に行く者達なのだが。
何かあったらどうする?
それなら俺が1人で行った方が良いよな。
「主、我も行く」
親玉さんの言葉に視線を向けると、じっと俺を見ている。
「危険かもしれないが」
「大丈夫だ。ふっ、さっきとは逆だな」
さっきとは逆?
……あぁ、この場所に来る前に親玉さんが危険があるかもと言って俺が大丈夫って。
確かに、逆だな。
「コアとチャイと水色――」
「一緒に行くからな」
ぐっと近づく水色の迫力に、頷くと満足そうな表情を見せた。
「水色、さっきも言ったが」
「危険がある可能性があるんだろう?」
「そうだ」
「だからこそ、一緒に行く。コアとチャイは、もしもの時に仲間に知らせる必要があるから、ここで待機だ」
水色の言葉に、コアとチャイが頷く。
どうやら、俺が決める必要は無いみたいだ。
さて、一緒に行く者も決まったし、行くか。
異空間にいる親蜘蛛達の傍に、俺と親玉さんと水色が飛ぶイメージをしっかりと作る。
「……異空間に転移」
うわっ、揺れる。
やばい、気分が……。
身体が大きく揺れると視界が真っ黒になり、すぐに眩しいぐらい真っ白な世界になる。
成功したのか?
「親玉さん! 主! 水色殿!」
声にそっと目を開けると、親蜘蛛達や子蜘蛛達の大喜びした姿が目に入った。
良かった成功したみたいだ。