作品タイトル不明
33.邪魔はしたくないので!
「主!」
「駄目!」
太陽の言葉を聞く前に却下する。
不法侵入は許さん!
俺が言える立場では無いけど、でも駄目。
「迷惑はかけないよ?」
「入国の許可を求めれば、くれるだろうから駄目」
エルフの国は分からないが、人と獣人の国は大丈夫だろう。
たぶん。
それにしても迷惑か。
「迷惑を、かけなくても駄目」と説得したいが、自分の事を顧みると言えない。
人の国に、何度も無断でお邪魔してしまった過去がある。
子供達はまだその事を知らないが、いつかバレると思っている。
正直、バレた時が怖い。
「残念だね」
ん?
「そうだね。ちょっと入って、ちょっと驚かせて、ササっと逃げるのに」
こら、桜、紅葉。
一体何をしに行こうとしているんだ?
驚かせる?
逃げる?
「不法侵入したら、特訓は2週間禁止」
「「「「「えッ!」」」」」
俺の言葉に、焦り出す子供達。
おい、その焦り方は密かにやろうとしてたな。
「太陽、雷、翼、風太?」
「「「「しません」」」」
「桜、月、紅葉?」
「「「はい、しません」」」
子供達の返事に、ホッとする。
待て、クウヒやウサは?
2人に視線を向けると、2人は首を横に振る。
「最初から、やる気はないよ」
光は?
「俺もしないよ。こっそり入るより、堂々と入った方が気持ちいいだろうし」
良かった。
太陽達を見ると、本当に残念そうな表情をしている。
こればかりは、折れるわけにはいかないな。
それにしても、これからは俺も気を付けないと駄目だよな。
子供達に、「駄目」と言ってしまったのに、俺が不法侵入とかありえない。
今までは上空から、結界とか気にせず入っていたからな。
許可を取るとか、面倒くさいかも。
……いやいや、ダメダメ。
これからは、見本になるような行動をしないと。
んっ?
俺が子供達の見本になるのか?
それは、子供達が可哀そうだろう。
頼むから、教師から色々学んでくれ。
「あの」
ダダビスの声に視線を向ける。
国の乗っ取りの話を聞いて、騎士達だけで話をしていたのだが終わったみたいだ。
「どうしたんだ?」
俺はその話は詳しくないので、俺に聞かれても答えられないんだが。
「詳しく話を聞く事は出来ますか? その、主犯格は分からないと言ってましたが、分かっている協力者の情報を教えて欲しいんですが」
「えっと、一つ目のリーダーに聞いたらいいと思うぞ」
「私は情報を知った者達から聞いただけです。その情報を掴んできたのは孫蜘蛛ですから、呼んできましょうか?」
孫蜘蛛なんだ。
あぁ、最小サイズの孫蜘蛛達の事かな。
あの子達は、こっそり服などに忍び込んでどこにでも入って行くし、小さいから隠れるのも得意だしな。
あれ?
こっそり服に?
それって、不法侵入し放題という事か?
「お願いできますか? 王に反発している者達の事を知っているんですが、もしかしたら見逃している者達がいるかもしれませんので、確認を取りたいんです」
「分かりました。その情報を掴んだ孫蜘蛛達を呼んできます」
一つ目のリーダーが俺からある程度の距離を開けると、一気に走り去った。
一瞬で見えなくなる一つ目のリーダーに、ダダビスの目が大きく見開く。
「あれ? もしかして初めて見た?」
「はい。獣人である俺の目でも、一瞬で消えたみたいに見えたんですが魔法ですか?」
「いや、あれは走っているだけだよ。確かに風魔法で背中を押しているけど、それは最初だけ。あの速さは一つ目の実力だ」
ダダビスが凄いという表情で周りを見る。
いや、既にかなり遠くまで行ったはずだから、見つけられないと思うぞ。
「お待たせしました」
「うわっ」
ダダビスが焦った声を出して後ろを振り返る。
そこには、さっき森に走って行った一つ目のリーダーの姿があった。
速いな。
この数秒で、よく目的の孫蜘蛛達を見つけてきたな。
というか、連れて来るまでの時間が短すぎないか?
えっまさか、仲間の居場所を全員分、把握してたりするのか?
ははっ、まさかね?
「失礼、驚かせましたか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうですか。では、孫蜘蛛達に話を聞きましょうか」
一つ目のリーダーの言葉に、ダダビスが周りを見る。
きっと孫蜘蛛を探しているんだろうな。
「孫蜘蛛達でしたら、ここですよ」
一つ目が腕を伸ばすと肩から腕にかけて、小さいゴミが点々と。
違うな。
ゴミが付いているように見えるが、あれが孫蜘蛛達だ。
やはり、最小のサイズの孫蜘蛛達だったようだ。
「えっと、これ?」
ダダビスがその小ささに驚いている。
そしてハッとした表情を見せた。
「俺は、孫蜘蛛を使って監視なんてしてないからな」
ダダビスの心配は、たぶんこれだろう。
正解だったようで、バツの悪い表情を見せた。
その様子にちょっと胸がチクチクする。
原因は、俺は監視するように指示は出していないが、たぶん一つ目のリーダーかサブリーダーが監視するように指示が出ているはずだから。
嘘を言ってはいないんだけど。
「疑ってすみません」
うわ~、チクチク感が増す。
でも、申し訳ない。
一つ目達が必要だと感じている以上、邪魔はしたくないので止めません。
「今すぐ情報を聞きますか?」
一つ目の問いに、神妙に頷くダダビス。
国の事だから真剣だな。
「主。孫蜘蛛達の言葉が彼らには通じませんので、私も一緒に行ってきます」
「えっ? そうなんだ。分かった」
ダダビス達は、蜘蛛達の言葉が分からないのか?
でも親蜘蛛達とは、普通に会話をしていたのを見たけどな。
そういえば、俺もあの最小サイズの孫蜘蛛達とは、話した事が無いかもしれない。
今度、話が通じるか挑戦してみよう。
「では、ダダビス殿の寝泊まりしている家で話してきます」
「行ってらっしゃい」
一つ目のリーダーを見送ると、サブリーダーが俺の傍に立つ。
俺の面倒を見るためなんだけど、俺は自分の事は自分で出来る。
と、何度も言ったが、なかなか説得されてくれない。
子供達へと視線を向けると、既に食べ終わっているみたいだし解散するか。
「ご馳走様をしようか」
俺が言葉を掛けると、皆が手を合わせる。
「「「「「ご馳走様でした」」」」」
挨拶が終ると、すぐに子供達がお皿などを纏めだす。
それを手伝いながら、庭へと視線を向ける。
どうやら、孫蜘蛛達から話を聞くのは騎士達だけのようだ。
先生達3人は、ウッドデッキでゆっくりと寛いでいる。
いや、寛げているのだろうか?
近くにいるシュリに、挙動不審だ。
早く慣れてくれるといいんだが。
「主、お皿持って行くね」
子供達が、重ねたお皿を持ってキッチンへ向かう。
残ったお皿は……無し。
「ありがとう」
お礼を言って、リビングの方へ移動する。
ロッキングチェアに座ってのんびりしていると、片づけを終わらせた子供達がリビングに来た。
そしていつの間にか用意されていた、テーブルゲームで遊びだした。
一つ目達には、本当に驚かされる。
どうやって、テーブルゲームの情報を得たのか。
子供達に人気のゲームはチェスに、囲碁、将棋。
俺はルールを知らないが、子供達は一つ目達からルールを聞いて楽しんでいる。
一度、チェスのルールを聞きながら挑戦したが、難しかった。
ジェンガや人生ゲーム、リバーシはちょっと懐かしかったな。
そして他にも、名前も知らないゲームの数々。
丸い球体を山のように積んで遊ぶゲーム、名前を聞いたけど忘れてしまったな。
今は、トランプを作ろうと一つ目と小鬼達が奮闘している。
紙でいいのでは?と思ったが、すぐにボロボロになってしまうらしい。
紙を作っている一つ目達がその事を知ったらしく、紙の強度を上げる方法を模索している。
素材はまだ分からないが、トランプはどれくらいで完成するかな?
まぁ、数ヵ月も掛かる事は無いだろう。