軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27.これは、諦めよう

今日から始まる子供達の授業。

とはいっても、今日からすぐに授業が始まるとは思っていない。

まずは、子供達の緊張を解いてからという感じかな?と思って来たが、逆だった。

緊張を解くのは先生の方だった。

今、授業内容を説明しているのは常識を教えてくれるリーピ先生なのだが、何度も説明を噛んでいる。

「もう少しリラックスしないと駄目だよなぁ」

隣にいる一つ目のリーダーが俺を見上げたのが分かったので、首を横に振って「何でもない」と伝える。

下手な態度をとると、このリーダーは時々暴走してしまうからな。

ん?

先生の視線がちらちらと、俺や隣にいる一つ目のリーダーに向けられている気がする。

よく見ると、ガルムの一団やバッチュも見ているようだ。

あぁ、緊張をしている原因は俺達か。

ちょっと考えたら分かる事だったな。

俺の存在は、彼らにとっては「神」だし。

一つ目達は、異様に怖がられている存在だ。

俺と一つ目が2体。

これだけでも緊張して顔色が悪くなってしまうだろう。

しかしこれでは、俺の目標だった、「こっそり勉強に参加させてもらおう」は、無理じゃないか?

いつかは慣れてくれると思いたいが……あっ、目が合ったら凄い勢いで逸らされてしまった。

諦めるしかないな。

今の状況だと、俺の存在が授業の妨げになっている。

「リーピ先生。あとはお願いしますね」

丁度話が途切れたタイミングで、リーピ先生に話しかける。

肩がびくりと震える姿は、俺が虐めているようでちょっとショックだ。

いつか、仲良くなれるといいな。

子供達に手を振って、勉強するために準備した部屋を出る。

ん~、このままいくと子供達の方が俺よりこの世界の事に詳しくなってしまう。

俺もどうにか、この世界の常識を勉強したいんだが……。

先生達を怖がらせずに、授業に参加する方法はないかな?

「それにしても、あんなにビクつかなくてもいいのにな」

やっぱり「神」だと思われているからだろうな。

でも今更「神ではない」と否定しても、無駄だろうし。

まさかこの世界全体に、俺が「森の神」として認知されているとは思わなかった。

ダダビス達を連れてきた日に、親玉さんに「森の神」の認知度をこっそり聞いてみた。

そして知った事実に、目の前が暗くなった。

まさか老若男女、年齢関係なく認知されているなんて!

知らないと駄目だったが、知りたくなかったのが正直な感想だ。

「主、どこへ行かれますか?」

「ん?」

あれ?

えっと、ここは果樹園だな。

色々考えているうちに、ふらふら彷徨っていたらしい。

「家に戻ろうか」

方向転換し果樹園から、庭に出て傍にある池へと視線を向ける。

最初は可愛らしい池だったが、今では巨大な池へと成長した。

気付くと大きくなっていく不思議な池だ。

どこまで成長するのかと不安に思って確かめたら、あと2回ほど成長すると言われてしまった。

まだ成長するらしい。

この世界、川も池も湖も勝手に大きくなっていく。

アメーバ達が必要に応じて大きくしたり小さくしたりするらしい。

池から、近くに建っている平屋の建物に視線を向ける。

今回、子供達の勉強する場所にと作られた学校だ。

庭の近くだと、特訓の声や衝撃音、攻撃音で集中できないだろうと、一つ目達が静かな池の傍に建ててくれたのだ。

傍を通って家に戻る。

途中、広場に視線を向ける。

今日も相変わらず、攻撃と防御の魔法で賑やかだ。

広場から庭へと視線を向けると、孫アリや孫蜘蛛達が特訓を頑張っている。

その中に、騎士の姿がある。

やはり、庭の方での特訓に参加したようだ。

まぁ、広場の特訓に参加すると命がけになるもんな。

「それにしても、広場の特訓から家を守るために庭を拡げたのに、その庭でも特訓をしていたら意味がないと思うんだけどな」

「そんな事は無い」

ん?

「飛びトカゲか、おはよう」

「おはよう。庭で特訓している者達は、まだまだ弱いから、結界を壊す事は無い」

それは、聞いたけど。

バリバリバリバリ……バリン。

「あっ、広場の方の結界が1枚――」

バリン、バリン。

「……3枚、割れたみたいだな」

庭にいた孫アリ達や孫蜘蛛達が、一斉に避難しているのが見える。

驚いて動けない騎士達は、親蜘蛛さんが回収してくれたようだ。

ただ、糸でぐるぐる巻きにされて運ばれている姿は、餌を運んでいるようにしか見えないが。

あぁ、よかった。

安全な場所で解放されたようだ。

「被害は……、親蜘蛛さんの脚が2本か」

まぁ、結界が3枚も割れたのに脚が2本で済んだのだから、いつもよりマシか。

「……マシ?」

脚が2本も吹き飛ばされたのに、マシ?

俺も、この環境に慣らされたな。

最初の頃は、仲間の誰かが怪我を負う度に「ひぃ」と叫んでいたのに、今では無くなった脚を見て「さて、怪我を治してくるか」と冷静に対処できるようになったもんな。

慣れって怖い。

「親蜘蛛さん、脚を治そうか」

脚を失った親蜘蛛さんに近付くと、申し訳なさそうな雰囲気で小さく頭を下げる。

「お願いします」

親蜘蛛さんの体に触れて、体が元に戻るようにしっかりとイメージを作る。

もう何度も繰り返した工程なので、イメージは簡単だ。

実は「ヒール」の魔法は既に何度も発動している。

なので、今イメージを作る必要は一切ない。

が、「ヒール」だけは、使い回しに不安を覚える。

時間が無く、イメージをせずにヒールを使っても、今まで失敗したことはない。

でも、なぜかずっと失敗と言う不安が拭えない。

まぁ、イメージを作るのはそれほど手間とは感じないので、毎回イメージを作る方が気が楽だ。

「ヒール」

親蜘蛛さんの無くなった脚の部分が光に包まれると、次の瞬間パッと強く光って消えてしまう。

そして光が消えた場所を見ると、元に戻った親蜘蛛さんの脚があった。

脚の数は8本あり、身体をしっかり支えているのが分かる。

「親蜘蛛さん、脚に違和感や痛みは無いか?」

「大丈夫。相変わらず凄いな。完璧に治っている」

元に戻った脚を動かしながら、感心した様子の親蜘蛛さん。

「問題が無いならよかった。でも、数日は気を付けて欲しい。何かあったらすぐに言ってくれ」

「わかった」

今は問題が無くても、出てくる可能性もあるからな。

ん?

何か視線を感じるな。

そっと、視線を感じる方を確認する。

どうやら、視線の主はダダビス達騎士のようだ。

……まだ、見てるな。

これは、どうしたらいいんだ?

とりあえず、声を掛けてみるか。

「ダダビス、どうした?」

「……あっ、いえ。脚が元に……戻ったんだよな」

なんだって?

途中で声が小さくなったから、聞き取れなかった。

「何?」

「いえ、無くした足が元に戻ったので、驚いただけです」

「あぁ、そうなんだ」

驚いたのは本当だろうけど、それだけかな?

ちょっと視線が気になるな。