軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26.無理だろ。

昨日あたりから、仲間達の会話に「割り勘」と言う言葉が出てくるようになった。

最初は、聞き間違いかと思った。

孫蜘蛛たちが集まっている時に、漏れ聞こえた言葉だったから。

しかし、どうしてなのか「割り勘」と言う言葉は仲間内で急速に広まった。

割り勘って、飲食代とかを人数で割る事だよな?

この森の中で、代金が発生する事は起きていないはず。

だいたい、金がない。

あっ、金で思い出したが、換金できる魔石を作ろうと思って作ってないや。

思い出したから、後で作ろう。

それより今は、「わりかん」の意味だ。

俺が知っている割り勘とは異なる意味だと思うんだよな。

だって、「わりかん」という言葉の後に「危険」だとか「見張り」だとか。

ちょっと危ない言葉が続くからな。

一瞬、先生の1人ワリアンと言う名前が間違って広まったのかとも思ったが、彼が危険?

もし彼が危険な人物だとしても、彼がこの場所で何が出来るだろうか?

子供達の授業には、間違いなくバッチュが参加するだろう。

バッチュは、子供達が大好きだから離れるはずがない。

そこに、アイ達のガルムの一団が追加された。

なので、子供達は間違いなく安全だ。

その環境下で、子供達に何かしようとするなんて無謀すぎる。

「まぁ、ワリアンをワリカンだなんて。間違えているなら、仲間の誰かがすぐに気付くだろうから、間違って呼び続けることなど絶対に無い。だからワリアンの事じゃないんだよな」

だったら、何を意味するのか。

考えても分からない時は、聞くに限るな。

あっ、ちょうど一つ目がこっちに来るや。

このもやもやした物を解消しよう。

「少し聞きたい事があるんだが、いいか?」

「はい。主の事が何よりも最優先です」

あははっ、なんと言っていいのか。

気にしないでおこう。

「わりかんの事なんだけど?」

「大丈夫です。ちゃんと伝わっています!」

えっ?

「聞かれてもいいように、わりかんとされている事は。今は尻尾を掴むために、全力をあげて調べていますので、もう少しお待ちください」

ん?

今のどういう意味だ?

「あっ!」

「えっ?」

一つ目がある方向を見ているので、その視線を追う。

少し離れた所で、農業隊の2体がこちらを見て少し困っているように見えた。

もしかして、用事があったのかもしれない。

「悪い。もういいぞ」

「えっ、ですが……」

「ありがとう。もう大丈夫だ」

さっぱり意味が分からなかったけど、先約があるなら引き留めたら駄目だろうからな。

「はい。では失礼します」

手を振って一つ目を見送る。

一つ目は急いで農業隊の方へ駆けて行き、合流すると急いで何処かへ行ってしまった。

その様子に、ちょっと反省。

「悪い事をしてしまったな」

ここで暇なのは俺だけなんだから、話しかける時も注意をしないと。

それよりあの一つ目は、何と言っていた?

聞かれてもいいように、つまり周りが「わりかん」と言う言葉を聞いても、意味が分からないようにしているという事だよな。

そうなると、「わりかん」と言う言葉には意味がない。

そういう事だよな?

……なんだ、当て字みたいな物か。

意味を考えても、分からないのも当然だな。

良かった。

「そういえば、尻尾を掴むって」

もしかして、何か問題が起きているのか?

ダダビス達が関係しているのだろうか?

ん~、彼らが来てから言い始めた言葉だからな。

何かしら、関係があるかもしれない。

そういえば、獣人達は耳が良いんだっけ?

あっ、だからわりかんという当て字を使っているのか。

なるほどね。

「やっぱり、分からない事は聞くのが一番だな」

何を調べているのかはまだよくわからないが、尻尾を掴んだら教えてくれるだろう。

俺に調査なんて出来ないし、下手に動いて一つ目達の動きを邪魔しても駄目だしな。

ここは大人しくしておこう。

なんだかすっきりしたな。

んっ、待った。

一つ目が最初に言った「大丈夫です。ちゃんと伝わっています!」が、おかしくないか?

この言い方だと、俺から一つ目達に何かを伝えたという事になるよな。

俺が最近一つ目達にお願いしたのは、「ワリアンの無謀な行動を止める事」。

後は、「ダダビス達の様子を見て欲しい」とも言ったな。

あっ、「彼らが困っていたら、出来る範囲で手助けしてあげて欲しい」ともお願いしたかな。

……とりあえず、今の3つは関係ないな。

「あとは……分からん」

俺はいったい、一つ目達に何をお願いしたんだ?

頼むとしたら、一つ目達のリーダーにだよな。

よし、確かめよう。

何か、おかしな事をお願いしているかもしれない。

それなら止めないと。

「えっと、一つ目のリーダーは」

「ここに」

「うおっ」

声に慌てて振り向くと、当たり前のようにいる一つ目のリーダー。

いつからいたんだ?

時々、この子の行動がちょっとスト……いや、気のせいだろう。

きっと、俺の様子を見て傍に来てくれただけだろう。

「あのさ……」

さっきの一つ目の話だと、まだ調査中だよな。

ここで話をして、大丈夫か?

何を警戒したらいいのか分からない以上、駄目だな。

人がいない場所で話そう。

「少し話があるから、家に入ろうか」

「はい」

さて、どう聞こうかな。

まずは俺が一つ目にお願いした事の確認だな。

それと、わりかんの本当の意味もやっぱり聞こう。

気になる。

「何か心配事でもありますか?」

「えっ? いや、心配事ではないが、確認したい事があって」

俺の言葉に首を傾げる一つ目。

本当に、何をお願いしたのか。

家に入ると、考えて俺の部屋に行く。

俺の様子を不思議そうに見ている一つ目が可愛いな。

部屋に入ると、椅子に座って一つ目を見る。

「俺、一つ目達にここ数日間で何かをお願いしただろうか?」

「主のお願いですか? いえ、特に」

あれ?

無いの?

「だったら、わりかんの本当の意味はなんなんだ?」

「わりかんはワリアンの事ですが……監視するように言いましたよね?」

ワリアンの監視?

俺は、見守るように言ったと思うが……監視!?

「『ワリアンがまた森へ行ったら大変だから、見ておいてくれ』と、他にも『何かするかもしれないから、なるべく傍に誰かいた方が良いかな?』とも、言われました」

「あぁ、そうだな。それがなぜ監視に?」

「えっ? 監視ではなかったんですか? 傍には24時間誰かがいると言ったら『見られているのは嫌だろうから、こっそりの方が良いと思う』と。これは、密かにワリアンを監視するという事ですよね」

「やっぱり、俺の言い方が悪かったのか」

原因を知って、ため息が出る。

「違ったのですか? ですが、そのお陰で彼が何か良からぬ事を考えている事が分かったのですが」

ん?

そういえば、尻尾を掴むと一つ目が言っていた。

「ワリアンが、何かしそうなのか?」

「子供達を手懐けるそうです。『あれなら簡単そうだ』と言っていたと報告が上がっています」

子供達とは、太陽達の事だよな?

あの子達を手懐ける?

「無理だろう、それ。あの子達の守りは固いし。そもそも、かなり警戒心が強いぞ?」

子供達が、ウサやクウヒが元奴隷だと知った時、「ここに住む者以外は信用できない」と言っていた。

それにバッチュが「他人はすぐには信用してはいけない」とか、「いい事だけをいう者は何か隠している」とか、警戒心が高くなるような教えを説いていたからな。

「どうしますか?」

「そうだな、まだ何かされたわけじゃないし。ちょっと、様子を見ようか」

まさか、子供達に手を出そうとするとはねぇ。

無謀な事に挑戦するんだなぁ。