作品タイトル不明
99.光、頑張る
「出来るはずがない! 魔神力は他の力と触れたら暴走するはずだ!」
アイオン神が首を横に振る。
光の様子から出来るような気もするが、アイオン神の言葉を聞くと不安になるな。
「アイオン神は知らないんですね。魔神力も神力と同じ事が出来るんです。あいつ等が言ってました。『神力と魔神力は一緒だったのか』と、かなりショックを受けていました。なぜショックを受けたのかは、わかりませんが」
ん? 神力と魔神力が同じ?
つまり、核が覚えている魔神力でしか核が動かせないように、核が覚えた神力じゃないと核は動かせないって事だよな?
でも、この世界の核には俺の神力に似た力が注がれているとロープが言っていた。
俺が来る前は、見習いが用意した神力が使われていたとも。
……どういう事だ?
この世界の核は簡単に変更可能だったのか?
それだったら、魔神力も簡単に変更できるはずだ。
でも、アイオン神たちの様子からそうじゃない。
あれ?
テフォルテに魔神を紹介してと頼んだ時、個性的で無理だとは言っていたが、魔神力については何も言ってなかったよな?。
……駄目だ、頭がこんがらがってきた。
今は考えるのは止めよう。
どうせ、ここでは答えなんて出ないし。
「そうだ。俺はあなた達、神にも言いたい事があります」
まぁ、そうだろうな。
今までは言いたくても言えなかったんだ。
全て話して、気持ちをすっきりさせたらいいよ。
「これ以上、主に負担を掛けるなら容赦しませんから」
……ん?
俺の事?
もう色々と諦めているから、気にする必要ないんだけどな。
「アイオン神、主が借りを返せと言ったんです。魔神力や核が暴走したら、命を掛けて止めてくださいね」
「なっ――」
「分かった。2柱でやれば、止められるだろう」
アイオン神の言葉を遮りフィオ神が光に頷く。
「よろしくお願いします」
光のやろうとしている事は危険なんだよな。
止めたいけど……止められないよな。
あんな覚悟をした表情をしているんだから。
なら、信じよう。
「光、頼むな。2柱が命を掛けてこの世界を守ってくれるらしいから、思いっきりやれ」
悪いが俺は、アイオン神とフィオ神と光なら、光を取る。
フィオ神もそれでいいというように、俺を見て頷いた。
光が力強く頷いて目を閉じた。
「やらせる――」
「煩い。お主は黙っておれ」
「ぐふっ」
オアジュ魔神が震える腕で体を持ち上げようとすると、テフォルテの前足がオアジュ魔神の頭を地面に押し付けた。
あれは痛そうだ。
同情はしないけどな。
光の周りから黒く光る力が溢れ出す。
その力の印象は黒く淀んでいる。
これは光の魔神力ではなくオアジュ魔神の方の力だ。
溢れた力が地面にスーッと浸み込んでいくのを見る。
少しの間その状態が続くと、光から溢れる力が変化したことに気付く。
それまでの印象とは全く異なる暖かな力。
ただ、闇の魔力とは異なり、暖かな力の中に微かに真逆の力が混ざっていると感じる。
魔神力を完全に変える事は、出来ないみたいだな。
「くっ」
光の口から微かに苦しそうな声が聞こえた。
「あと……すこし」
大丈夫だろうか?
顔色がどんどん悪くなっていく。
「ぐっ、うっ」
苦しそうな光に、任せた判断が間違っていたかもしれないと思ってしまう。
いや、あの時の光を止めるのは無理だ。
「光」
ウサの祈るような声が聞こえる。
大丈夫だと思いたいが、真っ白になっていく光に不安だけが募っていく。
「揺れてる」
コアの声に、世界が微かに揺れている事に気付く。
核が反発をしているんだろうか?
俺に出来る事があればいいのに。
「核?」
そうだよ。
核を動かしているのは、魔神力だけじゃなく俺の新しい力も動かしているんだ。
神力に似た新しい力。
あれは俺の力だ。
この世界の核を動かしている俺の力。
俺の力なんだから、光がやりたい事を助けろ。
核に光の魔神力を受け止めさせろ。
それぐらい俺の力だったら出来るはずだ!
祈るように胸の前で手を組む。
ドクン。
「ん?」
なんだ?
今、なにか――。
「あっ」
光の少し驚いた声に、慌てて光を見る。
「あれ? 出来た?」
光が不思議そうに自分の手を見て、地面を見て、周りを見ている。
戸惑っている光の様子に、首を傾げる。
「うまくいったのか?」
「うん。出来たみたい」
不思議そうに首を傾げる光の様子に、体から力が抜ける。
光が無事でよかった。
あっ、光から溢れる力が変わったな。
えっと……3つの力が混ざっているのか?
闇と光の魔力、それと魔神力だろうな。
「光!」
ウサが光の下に駆けだし、ギュッと抱き着いた。
それに続いて、クウヒや翼達が光に駆け寄る。
桜と紅葉の目が真っ赤になっている。
かなり心配したんだろう。
「心配掛けてごめんね」
「光……しゃべれるようになって良かったねぇ」
えっ、そこ?
真っ赤な目をした月の嬉しそうな言葉に、他の子供たちも頷いている。
まぁ、声が出ないと気にしていた光を傍で心配そうに見ていたのは子供達だからな。
声が出るようになったことが嬉しいんだろう。
……でも、今かな?
「嘘だ。そんな……」
オアジュ魔神の呆然とした表情に 溜飲(りゅういん) が下がる。
ざまぁみやがれ。
「ロープ、核の様子はどう?」
「問題ないよ。魔神力は完全に入れ替わって安定してる」
「分かった。ありがとう」
ロープのお墨付きも貰ったし、安心だな。
それに感じる。
強く吹いたり弱く吹いたりしていた風が、まるで包み込むような優しい風だけになったのが。
「はぁ、よかった」
アイオン神の安心した声に、ちょっと複雑な気持ちになる。
まぁ、光を取ると決めた事は後悔していないが。
あっ、聞きたい事があるんだった。
「アイオン神、フィオ神。光が神達から何をされていたのか知っていたのか?」
光が魔神力を使うと知った時の態度が気になる。
2柱を見ると、フィオ神が頷いた。
「残された記録や資料から、魔神力の研究をしていた事が分かった。だが、神が魔神力を使おうとしていたなんて認められないと、ふせられたんだ。彼は失敗作となっていたから、魔神力は持っていないと判断されたし」
「なるほど」
フィオ神がため息を吐く。
「何度か公表するように説得したんだが、神のプライドは面倒くさいレベルだからな」
それをフィオ神が言うのか?
まぁでも、光に関しては内密にでも教えて欲しかったな。
「話してほしかったよ。アイオン神」
俺の言葉にぐっと唇をかむアイオン神。
色々隠している事があるだろうなとは、思っていた。
でも、子供たちの事について隠した事は、ちょっと許せないと思ってしまうな。
「悪い」
「他に俺が聞いておくことは?」
「翔の力はかなり強く、神力を 凌(しの) ぐ力がある」
マジ。
「だが、不安定なのだ。そのため、その力で動いているこの世界に下手に手を出すとどうなるか……」
あぁ、だから「この世界に神は一切手が出せない」という事か。
「ん? 翔? 新しい力に何かしたか?」
「はっ? いや、何もしてないが?」
何?
今度は俺の力がやばくなっているとか止めてくれよ。
せっかく、世界は完成して安定したんだから!
「……安定してる」
安定?
そうなんだ。
それは良かった。
「いや、本当に何をしたんだ? ここに来た時は、まだ不安定な状態だったのに」
もしかしてアイオン神が頻繁にこの世界に来ていたのは、俺の監視だったのか?
……まぁ、どうでもいいか。
不安定な巨大な力があったら不安に思うのは仕方ない事だ。
「安定しているならいいじゃないか」
「まぁ、そうだが」
なんとも複雑そうな表情のアイオン神。
なんなんだ?
「安定させる方法を探していたんだが、無駄だったな。自然と安定するものだったのかもしれないな」
探してくれていたんだ。
俺のために、色々考えてくれていたのかな?
「ありがとうな」
俺の言葉に複雑な表情のアイオン神。
「借りも返せなかった」
「次の時に頼むよ」
もちろん、今回のような危機的状況の時に拒否権なしで。
「えっ!」
当然だろ。