作品タイトル不明
67.光は家族
「闇の魔力が平気という事は……」
俺の言葉に、びくりと震える光。
あっ、失敗した。
今の言い方は駄目だ。
もっと、慎重にならなければ光が傷つく。
「光」
呼ぶと、不安げな表情で俺を見る。
「光が何者でも、俺の大切な家族だ。いつまでも一緒にいような」
闇の魔力が平気だという事は、魔界の者なのかもしれない。
でも、そんな事はどうでもいい。
光は俺の家族。
その気持ちに変わらない。
「……っ」
光が、顔を両手で覆う。
驚かさないように、怖がらせないようにそっと抱きしめると、ゆっくりと頭を撫でた。
きっと怖かったんだろうな。
それにしても、ムカつくな。
光は、元は人間だという事は神が調べて分かっている。
つまり、神によって今の体にされた可能性が高い。
光を実験台にした 神(くず) をぶっ飛ばしたい。
あっ、駄目だ。
体内で、力が大きく揺れた。
これは落ち着かないと、やばいな。
光に気付かれないように、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。
ふ~、もう大丈夫だな。
抱き込んだ光を見ると、少しずつ落ち着きだしたようだ。
闇の魔力か。
再現の時に触れたが、かなりすごい力だったよな。
あれ?
「光! 俺の傍にいて、苦しくなったりしないか?」
闇の魔力が問題ないという事は、反対の力。
俺の力が、体に合わない可能性がある。
この森全体が俺の力で満ちているし、俺の傍によればもっと濃い力を感じるだろう。
やばいんじゃないか?
光を見ると、首を横に振った。
「大丈夫という事か?」
俺の言葉に頷く光に、ホッとすると同時に先ほど以上に疑問が浮かぶ。
闇の魔力も光の魔力も平気という事になるよな?
アイオン神の話が嘘だとは思えない。
つまり、光は俺以上に珍しい存在なんじゃないか?
「よかった」
安心させるように、ギュッと抱きしめる。
しばらく抱きしめた後に様子を見ると、光が欠伸をしていた。
闇の魔力を再現したのは、数日前。
もしかしたら、それからあまり眠れてないのかもしれない。
「もう寝た方がいい。その魔石は持っていってもいいから」
俺の言葉に、握っていた魔石に視線を向ける光。
少し戸惑っているのがわかる。
「それを持っていた方が、落ち着くんだろう?」
朝より光の力が安定している。
きっと闇の魔力を体内に取り込んでいるからだろう。
それなら、完全に安定するまで傍にあった方がいい。
「最近、光の力が不安定になっていたんだ」
俺の言葉に、パッと顔を上げる光。
「今は、かなり落ち着いてきている。きっと闇の魔力のお陰だ」
光が魔石をじっと見つめて、ギュッと握り込んだ。
心が決まったようだな。
「お休み。明日は特訓は無し。ゆっくり寝て体を休めろ」
俺の言葉に、ちょっと思案した表情を見せたが頷いた。
手を振って、リビングから光を見送る。
闇の魔力が思ったより必要だな。
ケルベロスたちもまだ必要みたいだし、光の力が落ち着くにはもう少し掛かりそうだし。
明日、もう一度闇の魔力の再現をしておくか。
「一つ目」
リビングからキッチンへ続く扉に視線を向ける。
カチャッという音とともに、2体の一つ目が姿を見せた。
やっぱりいたな。
「自分で起きてくるまで、光をゆっくり寝かせておいてくれ」
俺の言葉に頷く2体の一つ目。
その様子から、リーダーの一つ目はいないようだ。
珍しいな。
いつも傍にいるのに。
「お休み」
一つ目たちに挨拶をして、リビングを出る。
それにしても、また1つ問題が増えたんじゃないか?
「何を優先すべきだ?」
この世界が未完成なのは、アイオン神に丸投げだな。
魔神と上手くコンタクトが取れたらいいが。
核の周辺の呪いについては、地震で壁にヒビが出来るまで待つしかないんだよな。
俺が、壁にヒビを作れればいいが、失敗した時のリスクを考えると、挑戦は出来ないよな。
記録装置のキーワードは、長い年月を考えたらかなり重要だ。
焦って決めたら失敗しそうだから、時間を掛けて考えたいんだよな。
時間的に余裕がある時に、考えよう。
光の力の事は……これも、アイオン神に相談するしかないよな。
ただし、何があっても一緒にいる。
アイオン神が、光の力の事で彼の意思に反する事をしたら、ただでは済まさない。
他には、何があったかな。
子供たちの教育は、ダダビスが教師を見つけてくれるから、今は放置でいいし……。
「あれ? 俺がする事が無い?」
色々問題は山積なのに……。
あっ、俺の力だ!
そうそう、忘れちゃ駄目だった。
この世界に影響があるから、力をコントロールしたいんだった。
まずは、俺の力の現状把握からだったな。
今も増えているのか、強くなっているのか。
もし増えていたり、強くなっているなら止める方法を考えないと。
「コントロールか。出来るかな?」
昔から、不器用なんだよな。
部屋に戻りベッドに寝っ転がる。
「光の事、気付けて良かった」
いつも通り寝てしまっていたら、光の事に気付けなかっただろうな。
光から、相談するような性格ではないし。
ふぁ、眠いな。
ようやく、睡魔がきたみたいだ。
あ~、もしかしたら、
「一つ目、お休み」
「お休みなさいませ」
こっちだったか!
最近気付いたんだが、一つ目のリーダーは俺の傍にい過ぎじゃないだろうか?
声を掛けると、絶対いるんだけど。
気のせいかな?
……気のせいだといいな。
まぁ、傍にいるだけだから、問題はないけど。
ふと何かを感じて、目を開ける。
窓から差し込む光から、いつもより早い時間に起きた事が分かった。
俺にしては、珍しいな。
こんな早朝に目を覚ますなんて。
「昨日は遅かったのに……」
掛け布団を顔の上まで持ってくる。
眠い、眠すぎる。
これは二度寝が決定だな。
「おはようございます」
「ひっ」
びっくりした。
全く気配が無かったから、誰もいないと思っていた。
掛け布団から顔を出して、ベッドの周りを見る。
少し離れたところに、一つ目の姿。
……この子は、一つ目のリーダーだろうか?
いや、疑問に思う事はないな。
間違いなくリーダーだろう。
「おはよう」
俺の挨拶に、頭を下げる一つ目。
まさか、ずっとここにいたとか言わないよな?
さすがにそれは無いよな?
「今日は早いですが、もう起きますか?」
二度寝しようとしていたんだが、びっくりしたから目が覚めたな。
もう一度窓に視線を向ける。
あれ?
「もしかして雨が降ってるのか?」
もしそうなら、思ったより早朝ではないかもしれないな。
「はい」
珍しいな。
この世界はほとんど雨が降らない。
水不足にならないのが不思議なほど、全く降らない。
「ちょっと見たいかも」
ベッドから起きると、すかさず服を持ってくる一つ目。
前に「自分で出来るから、必要ない」と言うと、ショックで固まった事があったな。
その後は、すごい落ち込みようで。
コアたちに、「何かしたのか」と心配されたっけ。
「ありがとう」
服を着替えると、1階へ降りて玄関から外に出る。
「本当に雨だ」
しとしとと降る、細かい雨に手を差し出す。
手から微かに感じる、俺に似た魔力。
やはり、雨にも魔力が含まれているのか。
「さて、雨が止んだらまずは闇の魔力を再現して、その後は自分の力の現状把握だな」
コアたちに訊いても分かるかな?
無理なら、ロープに声を掛けるか。
後ろを振り返ると、さっと乾いた布が差し出される。
それに苦笑しながらお礼を言う。
「ありがとう」
至れり尽くせりは人を駄目にしそうだな。
気を付けよう。