軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63.見張られてたのか?

ーエントール国 反逆者の視点ー

今日は宰相様の下に集まった俺たちの力を、このエントール国に示す日だ。

そしてこの国が変わる大切な日となる。

「失敗は許されない。今日は新たな王が生まれる日だ」

「力み過ぎて、失敗すんなよ」

同じ任務に就いている者と、拳を合わせる。

名前は知らない。

もしもの時のためだ。

必要ないと思うがな。

「失敗など、するわけないだろう?」

宰相様の準備は、完璧だからな。

「時間だ、行こう」

目的の場所に向かって歩き出すと、目立たないようにばらばらになっていた仲間の姿が確認できた。

これから向かう場所は、宰相様が見つけた結界が最も薄い場所。

その場所を壊し、武装した我々の仲間を壁の内側に引き入れ、一気に王城まで攻め込む。

目的の場所が見えてくると、ドクドクと心臓が高鳴ってきた。

俺だって最初は迷った。

だが宰相様から、ある話を聞いて心を決めた。

王は、自分の意見に従わない者を投獄しているらしいのだ。

しかも、かなり重い罪を課して。

そんな事は、決して許される事ではない。

今日はその間違いを正す日でもある。

手に持っている武器に視線を向け、ぐっと握りしめる。

「やってやる!」

隣から声が聞こえた。

視線を前へ向けると、既に魔導師達が準備に取り掛かっていた。

彼らは破壊魔法が得意な魔導師達。

壁に張り巡らされている結界に、魔法で穴を開ける役目だ。

そして次に俺たち。

宰相様が用意してくれた特殊なハンマーで、壁を物理的に結界と共に壊す。

「そろそろか?」

結界が、攻撃に反発しているのか辺りにキーンとした音が響き渡る。

遠くの方で、異常を察知したのか慌てている声が聞こえるが、もう遅い。

静かにその時を待つ。

パキンと言う音がした。

「今だ」

魔導師の声に、持っていたハンマーを振り上げ体重を掛け壁に向かって振り落とす。

ドコンッ!

ガラガラガラッ。

壁が崩れ落ちていく姿に、少し呆然としてしまう。

本当に成功したのか?

目の前の結果に、じわじわと歓喜がこみあげる。

「やった!」

理不尽な理由で、投獄された者たちの事だけじゃない。

俺はずっと不満だった。

エンペラス国をそのまま野放しにするという、王の決定が。

そんな事は許さない。

多くの獣人が苦しんだのだ。

あの国の人間に同じ苦しみを味わわせてやらないと、気が収まらない。

「なんだ、あれは?」

喜びに浸っていると、隣から戸惑う声が聞こえた。

「ん? どうした?」

隣を見ると、唖然とした表情で何かを見つめている。

周りを見ると、魔導師達も同じように唖然としている。

何なんだ?

彼らの視線の先を見て、動きを止めた。

視線の先には、初めて見るゴーレムが2体、 悠然(ゆうぜん) と立っていた。

「失敗した」

「なっ! しゃべっただと?」

誰かが、目の前で起こった事に驚きの声をあげる。

俺も一瞬何が起こったのか理解できなかった。

目の前のゴーレムは岩だ。

岩のゴーレムが声を出す?

そんな事は、聞いたことが無い。

「そう言えば、彼らを動かしている魔導師はどこだ?」

隣の声に、慌てて周辺を見渡すがどこにもその姿はない。

どういう事だ?

ゴーレムには自我が無い、だから命令をする者が近くにいるはずなのだが。

「ん? 内密に観察しないと駄目だっただろ? 着地点をまちがえたな」

えっ、内密?

……もしかしてずっと見張られていたのか?

ゴーレムの言葉に、仲間たちが困惑しだす。

俺も同じだ。

王は、こちらの動きに気付いていたという事なのか?

「おいっ」

隣の男が小声で声を掛けてくる。

それにビクリと震える。

「なんだよ」

あのゴーレムがエントール国からの監視なのか調べないと駄目なのに。

でも、どうやって調べればいいんだ?

「あそこにいるのって……」

ちっ、なんだよ。

とっとと言え!

「アビルフールミじゃないか?」

「なにっ!」

しまった。

声が大きかったため、ゴーレムたちがこちらを見てしまった。

どうしよう。

背中に冷たい汗が流れるのがわかった。

どうしよう。

どうしよう。

ん?

興味が逸れた?

良かった。

いや、よくない。アビルフールミって……。

「どこだ? 体は赤いか?」

「ゴーレムの傍に立つ、大木の上だ」

そっと視線を上に向ける。

いた!

しかも何匹いるんだ?

パッと見ただけでも4匹はいた!

「なんでここに?」

「しらねぇよ!」

大混乱が起きているこの場所に、森の奥から仲間たちの姿が見えた。

魔導師の1人が慌てて合図を送っている。

「ここに来るな」と。

先頭に立っている宰相が気付いたのか、不審な視線を俺たちに向ける。

それはそうだろう。

壁の崩壊は成功しているのに、来るなと合図が送られるのだから。

「ひっ」

他にもアビルフールミに気付いた者がいたらしく、小さな悲鳴があちこちから聞こえだす。

宰相の表情が険しくなっていくのが見える。

もしかしたら、あちらからはゴーレムもアビルフールミも見えていないのかもしれない。

「どうする? 伝えないと」

俺の言葉に隣の男が頷くが、心配そうな表情で俺を見る。

「動いて大丈夫なのか?」

「分からない。でも宰相様に伝えないと……」

じっとゴーレムとアビルフールミの様子を窺う。

視界に映っている、宰相が苛立っている様子が見えた。

何とかしないと!

「さて、見られてしまったので、どうするか……」

ゴーレムが何か恐ろしい事を言っている。

どうするかって、俺たちをどうするつもりなんだ?

「あっ、アビルフールミがゴーレムに近づいたぞ」

いけ!

ゴーレムはきっと、エントール国が俺たちに放った監視役だ。

アビルフールミにやられてしまえば……えっ?

なんでアビルフールミは、ゴーレムに攻撃をしないんだ?

アビルフールミの前足がゴーレムの体に掛かっているのに、あのゴーレム焦りもしていない。

あっ、ゴーレムの視線が上にいるアビルフールミに向いた。

そっと俺も上を確かめる。

「「「げっ」」」

「「「ひっ」」」

なんでアルメアレニエが増えているんだ!

あの黒い体に6個の目。

間違うはずがない。

アルメアレニエだ!

「なぁ、チュエアレニエの子がアルメアレニエで、アンフェールフールミの子がアビルフールミだったよな?」

「あぁ、そうだ」

それがどうかしたのか?

「チュエアレニエとアンフェールフールミって、森の神の傍にいたという目撃情報があったよな?」

俺もその話は聞いた。

森の中で調査をしている騎士たちが、森の神と一緒にいるチュエアレニエとアンフェールフールミの姿を見たと……ん?

目の前のゴーレムとアビルフールミを見る。

とても仲がいいように見える。

と言う事は、あのゴーレムは森の神の……配下?

つまり……エントール国の王からの監視ではなく。

森の神が、俺たちを監視するために送った……まじ?

あれほど、慎重に事を進めたというのにばれていたんだ。

内密に観察と言っていた。

観察……俺たちの実態を調査していたんだ。

しかも、壁を壊した時にゴーレムが現れたという事は、これ以上の事を許さないという事だろうか?

いや、「失敗した」と言っていた。

何を失敗したんだろう?

森の神の配下が失敗?

全部、森の神の指示だとしたら?

「なっ、なぜここに!」

宰相もゴーレムとアルメアレニエ、アビルフールミの姿を確認したのか、顔色を悪くした。

「なぁ、俺たちは間違ったのか?」

隣の男の手から、ハンマーが地面に落ちる。

「……そうかもしれない。森の神は、エンペラス国を認めていたのに、それを邪魔しようとしたから」