軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34.球体? 平面?

「主。ごめん! 呼んでたんだよね?」

不意に聞こえた声に、全員がびくりと震える。

こればかりは仕方ない。

姿が見えないロープだ。

いや、姿を見せてくれたら……待て、いきなり目の前に何かが現れたら……。

結果は一緒だな。

諦めよう。

「ロープ、確認して欲しい事があるんだが、いいか?」

「何?」

そう言えば、前の地震をロープは認識してなかった。

地震があった事から説明した方が、分かりやすいかな?

「今日、地震があったんだ。で、ヒビが生まれた」

「えっ! すぐに見つけて対処するよ」

「いや、それは既に終わっているから大丈夫だ」

「そうなの? 早いね。俺は何をしたらいいの? 確認って?」

ロープの焦った声や拍子抜けした声に、小さく笑ってしまう。

ロープは姿が見えないが、声で何となく感情が伝わってくる。

表情が見えたらもっと分かりやすく……あっ、ロープは魔石だったな。

魔石から感情を読み取るのは、流石に無理だ。

「ヒビがちゃんと塞がっているか確認してほしかったんだ。あと、塞がっているかどうか調べる方法があるか訊きたかったんだ」

いちいち、ヒビから魔力が漏れてくるのか観察するのは時間が掛かり過ぎる。

調べる方法があったら便利なんだけど、あるかな?

「ん~、色々試したけどまだこれという方法は見つけられてないんだ。今は経過を観察する方法が一番だね」

残念。

「5時間ぐらい漏れてこないと大丈夫みたい。失敗した時は、5時間以内に漏れてきてたから」

ロープも失敗とかするんだ。

ちょっとびっくりだ。

それにしても5時間か、長いな。

「分かった」

「それより主、ヒビは何ヶ所見つかったの?」

えっ?

何ヶ所?

「1ヶ所だったが……もしかしてもっとある可能性があるのか?」

「それは分からない。前にヒビを探した時は、地震が頻発してたから1回の地震でヒビが1つなのかは確認できなかったから。今回はそれを確かめられるかなって思ったんだけど……」

この地震については、分からないことが多いから調べた方がいいだろう。

それにしても駄目だな、ヒビは1ヶ所だと思い込んでいた。

もっと視野を広くして考えないと。

「そう言えば、日に日に1日に起こる地震の回数が多くなっていると言っていたけど、修復してからは変化があったのかな?」

えっ?

ロープの話に、ちょっと動きが固まる。

頑張って記憶を探るが、ロープが話した内容を俺が言ったという記憶が思い出せない。

いつ俺は、そんな事をロープに話したんだ?

……えっ、本当に覚えてないんだけど!

やばい、いつだ?

「主?」

「ははっ、悪い。……覚えてないです」

なんで、忘れているんだ?

話の内容から、ここ最近の出来事のはずだよな?

えっ、度忘れ?

重要な事を?

……魔力による記憶の忘却……なんて病気があったりしないかな?

いやいや、落ち着け。

何を馬鹿な事を考えているんだ?

もしかして、さっきの呪いの魔力を吸ったせいか?

周りの空気に混ざっていたから、間違いなく吸っているはず。

よしっ。

きっとそのせいだ。

いや、何か話が変わっているような気が……。

「ん~、もしかして。主が寝ている時に訊いたから覚えていないのかも」

「それだ!」

「えっ?」

「いや、なんでもない。多分寝ぼけていたんだよ。だから覚えていないのだと思う」

そうだ、それに間違いない。

……大丈夫だよな?

でも、寝ぼけて忘れた?

「えっと……」

そうだ、ヒビを探そう。

1ヶ所とは限らないみたいだし。

「ロープ。他にヒビが無いか調べてみるよ」

「分かった」

「ロープはヒビを修復した場所を見てもらえるか? 漏れるかどうかは時間がたたないと分からないとしても、修復したのを見て何か感じる事があるかもしれない」

「それはいいけど、場所は?」

「ここ」

前にある画面を指す。

見えるかな?

「すごい! 壁の映像だ!」

「あぁ、ヒビを探すなら見て探した方が見つかりやすいと思ってな」

すっと目の前を風が通り抜けた。

ん?

もしかして今のロープか?

「随分と明るいけど、灯りも点けたの?」

「あぁ、探しやすいだろ?」

「うん。俺が探す時は、周辺に濁った魔力があったから……あれ? 濁った魔力が無い!」

画面の前にまた風がふわっと吹く。

それを感じながら、不思議な気持ちで画面の前を見る。

姿が見えないけどいるんだよな。

やっぱり姿が見えないのは不便だな。

小動物の姿にでもなってくれないかな?

そうしたら急に現れても、驚きは少ない……いや、そうとも言い切れないな。

小心者の俺は、どんなに可愛い小動物でもいきなり現れたらビビるな。

「濁った魔力は浄化したんだ」

「浄化? えっとまさか……呪い? えっ、本当に?」

「あぁ、間違いなさそうだ」

「……また」

ロープは森を呪っていた魔眼に協力させられていたからな、思う事もあるよな。

「呪いなら、対処方法は分かっているから少し気が楽になったよ」

「それもそうか。魔眼の呪いを大量に解いていったんだもんね」

半分以上は知らない間にだけどな。

アイオン神から、呪いを解いた魔法を色々聞いたが、ほとんどピンとこなかった。

ほぼほぼ思い付きで魔法を使っていたからな。

もう一度同じことをと言われても、出来る気が一切しない。

そう言えば、映像を見るだけで今までの修復してきたヒビとの違いは分かるのだろうか?

「映像だけで、分かるか?」

「分からないから、この映像の魔力を追ってヒビのあった場所まで行くつもり。だから気にしないで」

「そうか、分かった」

後は任せて大丈夫だな。

「少しいいか?」

水色の声に視線を向けると、湖から数匹の生き物が顔を覗かせている。

見ると目が少し陰っているようだ。

おそらく呪いの影響が出ているのだろう。

一度湖は浄化したが、その後も呪いの魔力が気泡で上がってきていたからな。

「浄化だな」

「済まない。浄化はかなり魔力を使うため、我では対応できないんだ」

「気にしなくていいぞ」

浄化魔法で大量に魔力を使ってきたから、俺は生き残って来られたんだしな。

湖に手をつける。

「浄化」

湖の水だけでなくそこで生きる全ての生き物から呪いを解く。

一瞬だけ、淡い白い光に包まれたがすぐに消えた。

湖の水とこの中で生きる者たちは大丈夫だな。

問題は、空気中に飛散した呪いだな。

この周辺だけを浄化しておけばいいのか?

それとももっと広範囲で?

……もしもの事があるから、広範囲で浄化をするか。

別に魔力がごっそり減る事も無いしな。

「じょ……」

待てよ。

この周辺だけじゃ駄目だよな?

だって、ロープが修復してくれたヒビからも呪いは出ていたはずだ。

……すでに森に充満している可能性があるのでは?

いや、あんな小さなヒビだから影響は少ないか。

でも、塵も積もればという言葉があるように、安心はできない。

森全体に……前は森に張られた壁があったから魔眼の呪いは森から出なかった。

だが今は壁は無い。

この世界全体に浄化を掛けた方がいいのか?

ちょっと範囲が広すぎるか?

体の中の魔力を探る。

満タンあるな。

「よしっ」

「主? 何かおかしな事を考えてないか?」

水色が不審気に俺を見てくる。

それに首を傾げる。

おかしな事?

「いや、それは無い。考えるのは浄化の事だし……」

本当に浄化の事しか考えてないのに、なんでまだそんな疑うような目で見るんだ?

「本当か?」

「本当だって!」

何なんだ?

まぁ、とっとと浄化を終らせよう。

えっと範囲はこの世界。

球体の世界をイメージして……球体だよな?

そう言えば核が球体ではなくて円と言っていたんだよな。

まさかの平らな世界とか?

……球体でいいや。平面でも球体で浄化したら何とかなるだろう。

地球のような星をイメージして……これだと地球を浄化しそうだな。

首を横に振ってイメージを変える。

ドローンで見たこの世界をイメージの中で球体にする。

難しい、無理。

他に簡単な方法……俺がいる丸い世界をイメージ。

俺の大きさがおかしい。

世界から俺が飛び出してしまった。

えっと、俺を小さくして……その世界を球体の壁で包み込んで壁の中全体を浄化するイメージ。

よしっ、出来た!

「世界を浄化」

「やっぱり!」

ん?

水色の声が聞こえた気がしたけど。

うわっ、体からごっそりと魔力が一瞬で消えた。

この感覚は、ちょっと慣れないな。

ふぅ、世界は広かったな。

「あれ?」

半分ぐらいの魔力が戻ってきた。

使わなかったのか?

……この世界は球体じゃないのか?

えっ、マジで?