作品タイトル不明
20.毎日、グラッ
グラ。
「あっ、まただ」
地面が揺れたのを感じる。
一番初めの地震より揺れ方は優しいが、ここ数日ずっとこんな感じが続いている。
1日に数回。
昨日は確か……体に感じる揺れは9回だった。
日本では、体に感じない揺れも結構あるとテレビで言っていた。
もしかしたら、もっと揺れているのかもしれないな。
「調べる方法なんて思いつかないから、調べようがないな」
そういえば、さっきの揺れは本日5回目だったな。
昨日よりちょっと早いペースかもしれない。
それにしてもこれは、どう考えても普通じゃない。
この世界には地震が起こるはず無いのだから。
ロープからは、あの日から連絡がこないし。
「あ~、本当に嫌な感じがするな」
何だろう、じわじわっと近づいてこられるような恐怖があるよな。
やっぱりロープの下へ行ってみようかな。
王宮にあるんだよな。
……どうやって入ればいいんだろう。
正面突破で入れてくれるだろうか?
……無理だろう。
どうやったら、初めて見る奴を王宮に入れるんだよ。
最悪、不審者で捕まるな。
「あっ、上空からロープのいる場所を特定して、直撃……王宮に不法侵入することになるな」
正面突破よりもっと駄目だ。
誰か知り合いに頼むにしたって、この世界に知り合いがいないしな。
あっ……ダダビスたちにお願いしたらどうだ?
と言っても、彼らは獣人の国でロープがあるのは人の国。
お願いしたら動いてくれそうな気もするが……。
教師の件もお願いしているのに、さすがに図々しいな。
止めておこう。
周りを見る。
ここ数日で、小さな揺れに皆は慣れてしまったので慌てる者はいない。
小さな地震が落ち着かないので、皆には「もしかしたら大きな地震が来るかもしれない」と話をした。
不意打ちでこられるよりは、心構えがあった方がいいだろうと思ったのだ。
地震を知らない龍達から、どんな風に揺れるのかと聞かれたので縦に横に揺れて立っていられなくなると答えた。
日本での経験が役に立つかと思ったのだが、ふわふわに「空中に浮いていればいいのでは?」と言われ、ちょっと唖然とした。
仲間たちは、ほとんどが空中に飛ぶことができるのだ。
思いがけないことで日本との違いを実感してしまい、変な気分になった。
まぁ、とりあえず大きな揺れがきた時の対処法だけ話しておいた。
「飛べない者を乗せて飛べ」と。
1回目と2回目の地震の後、親玉さんたちとシュリたちが森の変化を調べてくれたが、異常は見つけられなかった。
俺も何度か魔力と、新しい力で森を調べたが気になる事は無かった。
だからこそ不気味なんだよな。
パチン。
あっ、このナスもどき今日一番の大きさだ。
今日は揚げナスが食べたいな。
「それにしても。あ~、腰が痛い!」
収穫したナスもどきを、横に置いたカゴに入れてから立ち上がると腰を叩く。
朝ごはんを食べて、少し休憩を挟んでから始まった秋の収穫。
広大な畑を見た時に、ちょっと遠い目になってしまった。
「広すぎる……」
まぁ、仲間が増えているから仕方ないのだろうけど、それでも広い。
バサッという音に視線を向けると、カレンが大きなカゴで収穫した野菜を運んでいた。
どうやら今回は、参加してくれたようだ。
そういえば、今年から小麦の収穫が増えると言っていたな。
パンやケーキの消費が増えたそうだ。
一つ目が作るパンもケーキも美味しいからな。
「さて、頑張ろう」
収穫がすべて終わったら、収穫祭をする事が今日の朝に決まった。
一つ目たちと農業隊になぜか、収穫祭をする必要があると説き伏せられたのだ。
もちろん頑張ってくれた人たちを、労らうつもりで毎回ワインを振る舞っていたが、今年はもっと盛大にしたいらしい。
なぜか一つ目たちがやたらに張り切っていた。
何をし始めるのか、ちょっと怖い。
…………
目の前に並ぶ光景に唖然としてしまう。
「祭りの屋台みたいだな」
最初に目に入ったのは、水に浮かぶボール。
ボールをよく見ると、小さい魔物から取れる魔石が使用されていた。
魔石が水に浮くように、魔法が掛かっている。
そしてそれを取るのは、魔物の骨を加工し紙を貼ったポイを使用するみたいだ。
日本のお祭りで見かけるスーパーボール釣り。
異世界バージョンで魔石釣りだけど。
ただ、加工した骨に張られた紙がどう見ても分厚過ぎる。
あれだと、魔石が取り放題になる。
傍にいる一つ目に言った方がいいだろうか? と思案する。
そうだ!
皆はどうやって、ポイを持つのだろうか?
前足で器用に持てるのかな?
悩んでいると、チャルが魔石釣りに近付くのが見えた。
そして一つ目がポイを渡すと、チャルの前でふわりと浮かぶ。
「あっ、魔法か」
チャルが視線を魔石に向けると、ポイがすっとゆっくり移動し水面に近付く。
なるほどね。
ボッ!
「はっ?」
目で追っていたポイが一瞬で燃えて消えた。
……何が起こったんだ?
チャルを見ると、またポイを貰ったのか再度挑戦するようだ。
今度はポイが上下左右に揺れながら水面に近付く。
そして、魔石が入っている大きな入れ物がポイに向かって何かを発射する。
それを器用に避けるポイ。
水面に近付くと、激しくなる攻防。
チャルの何度目かの挑戦でようやく2個の魔石を手に入れたようだ。
「ふ~、見てるこっちも疲れる。……まさか、他のもこんな感じか?」
視線を隣に向けると、輪投げの輪を持つ一つ目がたたずんでいた。
輪も魔物の骨を加工して作ったようだ……ただ、輪を通す的が無い。
周りを見ても、何処にも無い。
たたずんでいた一つ目に聞くと、すっと森の方を指す。
見ると、遥か遠い場所に10本の木が地面に突き刺さっていた。
距離は……50m。
魔法で飛ばして良いらしい。
防御魔法も許可と言われた。
まさかと思っていると、ネアが輪投げをしにやってきた。
ネアが魔法で、輪を器用に飛ばして、地面に刺さった的まで飛ばす。
「あっ、やっぱり。妨害があるのか」
飛んだ輪は、途中で弾かれた。
1回目は水で弾かれ、2回目は何かに弾かれていた。
見えなかったので風魔法かもしれない。
ネアもコツを掴んだのか3回目は、妨害を器用に避けて的に向かっている。
あと少しという所で、雷が落ちた。
「魔石釣りに続き、輪投げも激しい……」
もっと穏やかなゲームのはずなんだけどな。
他にも吹き矢があった。
こちらの的は輪投げほど遠くなく妨害も無いらしい。
説明を聞いて俺でも出来そうと挑戦したが、もっと詳しく聞けばよかった。
まさか、的が動くなんて!
「当たる気がしない……」
机の上をちょこまかと動き回る、商品たち。
頑張ってみたが、無理だった。
一つ目たちを見ると、なんだか満足そうに「調整の練習にもなるな」と、笑っていた。
何か目的があるのかもしれない。
「あ~疲れた」
屋台、異世界バージョンで遊んだ後はワインで盛り上がる。
今回のメインなので、かなりの量のワインが開けられる事になっている。
まぁ、皆収穫を頑張ってくれたのだから、いいだろう。
とは思うが、5個目の樽が開けられた。
今年のワインはまだ仕込んだところなので、今飲んでいるのは去年かその前のワインとなるが、こんなに飲んで大丈夫だろうか?
次のワインが飲めるようになるまで、足りるのか不安になる。
「一つ目。こんなに飲んで大丈夫か? 次のワインが飲めるようになるまで足りるのか?」
「問題ないです。まだまだ貯蔵量には余裕がありますので」
一つ目の返答に少し驚く。
樽の数は、ここから見えるだけで5個もある。
そしてこれまでも、かなりの量を消費してきた。
それなのに、まだ余裕があるとは。
そういえば、ワインの樽を置く場所を数回広げたな。
……最近では、入り口から奥の壁が見えなくなるほどに広くなってしまっている。
まぁ、一つ目たちが問題ないと言うなら問題ないだろう。