軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02.特別調査部隊マロフェ隊長

―エンペラス国 特別調査部隊隊長 マロフェ視点―

辞令書を握りしめ、目の前の扉の中に飛び込む。

「入室許可を取らないと駄目ですよ。これからは隊長になるのですから、それぐらいのルールは守らなくては部下に馬鹿にされますよ」

部屋の中にいた宰相のガジーが書類から視線を上げ俺を見たが、すぐにその視線は書類に戻った。

「ガジー! こっ、なっ、お」

「大丈夫ですか? 少し落ち着いて下さい。何を言っているのか全く分かりませんよ」

ガジーがため息を吐き、俺を見つめる。

「はぁ、これはどういう事だ? 俺が隊長ってどうして?」

「あぁ、それですか。私が推薦をしておきました。特別調査部隊隊長就任おめでとう」

「なんで!」

「もちろん、適材適所です」

元々ガジーと俺は同じ檻に入れられていた奴隷仲間だった。

自我を取り戻した時には既にガジーがいて、混乱する俺を支えてくれた。

ガジーがいたから、今の俺がいる。

そうでなければきっと俺は殺されていただろう。

だから、彼の手助けができればと騎士団に入団した。

今の王、ガンミルゼにも恩があったし。

だが、隊長になるなんて考えてもいなかった。

というか、推薦するならするで話してくれてもいいとおもうのだが。

「無断でする事は無いだろう」

項垂れながら文句を言うと、呆れた視線を向けられる。

それにイラっとして睨む。

「話したら、拒否するのが分かっていて話す馬鹿がどこにいるのです?」

ガジーは宰相になってから、話し方を少し変えた。

変えた当初は王に大笑いされたそうだが、今ではそれなりに形になっているらしい。

一部の貴族から、すごく怖がられているので話し方を変えたのは正解だったのだろう。

今の俺には苛立ちしか与えないが。

「拒否するのが分かっている俺を、どうして推薦したんだ?」

「身体能力と判断力で選びました。王にマロフェを推薦すると、すぐに許可が下りましたよ。『マロフェなら信用できる』と」

「それは、ありがたいけど……はぁ、これは決定なのか?」

「辞令ですから、決定ですね。頑張ってくださいね」

ガジーの言葉に大きなため息が出る。

「そうだ、これを渡しておきますね」

ガジーから1枚の書類が手渡される。

中身を確認すると、特別調査部隊に所属する隊員の一覧だった。

ガジーをちらりと見ると、にこりと笑われた。

どうやら、俺がこの件について文句を言ってくることを予測して、一覧表を用意していたようだ。

本当に、ムカつく。

「ほとんど人だな」

「騎士団は人の方が圧倒的に多いですから、仕方ありません」

それは分かっているが、俺が隊長になって不満は出ないのか?

普通出るだろう。

第一騎士団で功績をあげたわけでもないのだし……。

「俺は口が悪い。ガジーのようには出来ないぞ」

「王はそんなくだらない事を求めてはいませんよ。そもそも、私たちは元奴隷です。今まで学ぶ機会など無かったのですから」

それは、そうかもしれないが。

だが、部隊のトップになるんだろう?

ある程度は必要じゃないのか?

「ガジーは話し方を変えたじゃないか」

「本からの受け売りですよ。私の場合は他国と関わる事がありますからね。まぁ、王には気にしなくていいと言われましたが」

王ならそう言うだろうな。

俺たち獣人が、姿を見て声を掛けても特に問題視しないからな。

本当は下の者が上の者に声を掛けては駄目らしいけど。

「はぁ~。この一覧に載っている奴らはどんな奴らなんだ? その獣人に対して何か……」

何かを既にしていたら選ばれる事は無いか。

だが、表立って出さないだけで気持ちは別かもしれない。

「今のところ、獣人に対して問題行動は起こしてはいない者たちです。彼らの周辺にも目を光らせましたが問題はありません」

「そうか」

だが、問題を起こすこともあるよな。

なんせ指示を出すのが俺だ。

一覧を見る限り、俺以外の獣人は3人。

35人のうちの3人だから少ないよな。

ただ、騎士団には獣人は少ないから、全体的に見れば妥当なのかもしれないな。

「副隊長に獣人をつけても大丈夫か?」

「あまり口を挟みたくないですが、副隊長にお薦めなのはピッシェ・ロングラです」

ピッシェ・ロングラ?

人だな。

3番隊にいる25歳。

若いな。

「彼はマロフェと年も近いですし、人柄もいいと聞いています」

だが、それは人の中にいての評判だ。

獣人に対しては分からない。

「彼の友人にアッピ・ガガスがいます」

アッピ・ガガス?

どこかで聞いた事があるな……あっ、俺たちの訓練にたまに参加する人だ。

彼の友人?

「アッピ・ガガスも一緒に入れたかったんですが、第三騎士団の隊長から拒否されまして。第三には彼のような存在がこれから必要になるからと。まぁ、これから獣人の騎士がどんどん増えていく予定なので、アッピ・ガガスのような考えを持つ存在は必要となるでしょうね」

確かに、彼が訓練に参加しだしてから人の参加者が増えた。

最初の頃は緊張している様子だったが、回数をこなすうちに緊張も解けて今では訓練後に酒を飲むこともある。

王城内で会ったら気軽に声を掛けてくるしな。

もう一度、一覧を見る。

「訓練に参加してるアバルとラーシが入っているんだな」

最初に一覧を見た時は、気が動転していたため見逃したが、この2人は一緒に訓練をしている者たちだ。

気軽に声も掛けてくれるし、酒も一緒に飲んだ事がある。

「えぇ、彼らには私から声を掛けました。彼らは補佐にお薦めです」

補佐?

2人の年齢を見る。

アバルが32歳でラーシが36歳。

俺より年上だ。

「年下の俺が補佐の方がよくないか?」

「年齢は関係ありませんし、彼らにはあなたが隊長に就くことは既に話してあります。2人とも『マロフェなら上手く纏める事が出来るだろう』と言ってました」

俺なら?

2人とは酒を飲んだ事はあるが、それほど話した事は無いと思うが。

「諦めて覚悟を決めてくださいね。グダグダ言っても既に決定している事ですし」

ガジーを睨みつけるが、ニコリと良い笑顔が返ってきた。

この笑顔が曲者なんだよな。

無害に見えて、そうじゃないからな……はぁ。

「分かった。隊長に就くし、副隊長は……えっと、ピッシェで補佐はアバルとラーシにする」

「分かっていただけて良かったですよ」

この腹黒が。

「アバル隊員とラーシ隊員には、既に補佐としてお願いしています」

「……分かった」

あれ?

ピッシェという者には?

「ピッシェ隊員には隊長自ら話をしてくださいね。隊長としての初めての仕事となります」

マジか。

まぁ、関わるなら早い方がいいよな。

副隊長になってもらうんだし。

「それと」

まだ何かあるのか?

「部隊の隊長ですが、騎士団長と同じ権限を持つことになっています」

「はっ? なんで?」

「ガンミルゼ王直轄の部隊だからですよ」

あっ、そうか。

特別調査部隊はその立場になるのか。

「王が認めた隊長を疎かにすることは不敬罪です。その辺りは補佐の隊員が詳しいですし、彼らにある程度任せても大丈夫でしょう」

確かに獣人である俺が対応するよりいいのかもな。

「ただし、決定権は補佐ではなく隊長にある事をしっかり理解してくださいね」

アバルたちはあくまで補佐、最終的な判断は俺という事だな。

……しっかり理解出来ているよな?

大丈夫だよな?

「難しい事は苦手なんだ」

「頑張ってくださいよ。俺は出来ると判断した者しか、推薦しません」

ガジーの言葉にため息を吐きながら頷く。

ガジーの推薦だし、ガンミルゼ王も賛成しているなら、断ることは出来ないけど。

なんか釈然としない。

「では、これを」

ガジーから渡されたのは鍵と書類の束。

首を傾げてガジーを見る。

「特別調査部隊の部屋の鍵と、隊員となる者たちの詳しい書類です。30分前に部屋の準備が整ったと連絡が来たので、身一つで行っても大丈夫ですよ」

30分前?

俺が辞令書を受け取る少し前?

「呼び出す前にマロフェから来てくれたので、手間が省けました。ありがとうございます」

これって、完全に俺の行動を読まれているよな。

ガジーをそっと見ると、ニコリと笑われた。