軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

66.エンペラス国 第4騎士団団長4

-エンペラス国 第4騎士団 団長視点-

「はっ?」

「ですから、アマガール魔術師がここ3日完全に徹夜をしているんです。心配ですので、どうにかしてください」

部下からの願いに顔が引きつる。

部屋に入るまで見届けていたが、まさか部屋を抜け出して魔石を徹夜で観察しているとは。

その根性には感服するが、やっている事はいただけない。

10日ほど前から魔石に変化が現れた。

不定期に光るのだ。

そして、何か音が聞こえると言っていた。

だが、その音が何か誰にも分からないらしい。

そして運が無いのか、アマガール魔術師がいる時にその現象が起きない。

何度か徹夜を許可したが、体調面を考えてここ数日は部屋に戻る様に言い聞かせていた。

彼も既に70歳を超えている。

体が強いと言われる獣人でも、無理をしていい年ではない。

しかし本人は無謀にも徹夜をし続けたそうだ。

だから今日少し顔色が悪かったのか。

まったく。

「分かった。報告ありがとう」

部下が部屋から出ていく。

椅子に深く腰掛けて、大きく息を吐き出す。

魔石に何が起こっているのか……。

「後から後から問題が起こるな~」

はぁ、とりあえずアマガール魔術師のところに行くか。

しかしなんて言って、徹夜を止めさせればいいのか。

言って聞くような人なら既に聞いてくれているだろうしな。

……徹夜で見張り?

「それは嫌だな」

部屋を出て、ゆっくりと歩き出す。

エントール国以外の国との関係も、ようやく落ち着いた。

『森の王に助けられた国王』という事実が、やはり強靭な守りとなってくれた。

そうでなければ、何処かと戦争していた可能性が高いからな。

食料に関しても、余裕が出来たと言っていた。

森の神が、田畑から余分な魔力を取り除いてくれたおかげで育ちがいい。

森から流れ込む川にも随分と助けられている。

「森には助けられてばかりだな。会いたいな~、森の王に森の神。森の調査隊の希望を出したのに却下されたからな~」

そろそろ本気でガンミルゼを説得してみようかな。

あ~でも、ガジーが邪魔しそうだよな。

あの2人が一緒にいると、なかなかお願いが通らない。

というかガンミルゼは説得する自信があるが、ガジーは無理だ。

絶対に首を縦に振ってくれない。

……頑固者め。

ゆっくり歩いているのに、魔石を置いている魔導師棟についてしまった。

アマガール魔術師を説得って……無理だろう。

あ~、縄でぐるぐる巻きにしても魔法で逃げ出すだろうし。

一応、縄で捕まえるのはエントール国から許可をもらっている。

さすがに驚いて問題ないのかと聞いたが『いつものことなので』と笑顔で言われた。

あの時の顔は笑顔なのに怖かった。

アマガール魔術師は、自国でいったい何をしているのか。

まぁ、暴走しているんだろうけどな。

今回みたいに。

魔石の部屋に近づくと何やら騒がしい。

また何かあったのか?

「どうかしたのか?」

「あっ、ミゼロスト団長。魔石がまた光りだしまして、アマガール魔術師が……」

部下の何とも情けない表情。

他国の魔術師をどう言っていいのか迷っているのだろう。

チラッと部屋の中を見る……あれか。

「任せておけ」

部下の手前、そういうほかないのだが正直俺も他の人にお願いしたいな。

部屋に入りアマガール魔術師をしばらく眺める。

……彼が笑顔で魔石に頬ずりしている姿を。

「……俺は何も見ていない。あれは幻覚だ」

俺の言葉が聞こえたのだろう、魔導師達が苦笑いする。

しかし本当に光っているのだな。

それにしても、この光は……驚いたな。

魔石は淡い光をまとい、何か音を出している。

だが、その音は耳に届いているはずなのに理解出来ない。

「アマガール魔術師。少し落ち着いたらどうでしょうか?」

「これが落ち着いていられますか! 見てください! 魔眼の力で森を襲っていた魔石が、魔石が!」

アマガール魔術師が興奮するのも分かる。

闇の力が光の力に変わるだけでもすごいというのに、目の前にある魔石からは癒しの力が感じられるのだ。

癒しの力は、奇跡の力とも言われている伝説級の力だ。

ある文献では、その力を持つ魔石を『守り石』と紹介しているほどだ。

「しかし、この音は何なんですか?」

俺の言葉に、アマガール魔術師は頬ずりを止めて真剣な表情をする。

……落差がすごいな。

今だったら、尊敬できるのだが……。

「分かりません。今、ある人を呼びに行ってもらっています」

ある人?

近くにいた魔導師に視線を向ける。

「アッセ殿です」

魔導師の答えに首を傾げる。

アッセ?

特殊な魔法が使えるため、保護の意味も込めて魔導師になってもらったんだよな。

そんな彼をどうして?

「失礼します」

「あぁ、良く来ましたね。アッセ殿」

アマガール魔術師が、アッセの元に駆け寄っていく。

……70歳には思えないほどの瞬発力だな。

ほんとに、知りたいと思う事には手を抜かない人だ。

「ひっ、いえ。えっと、何か用事があると」

アッセの小さい悲鳴が耳に届く。

分かるぞ。

アマガール魔術師の真剣な顔は怖いからな。

それが一気に迫って来るんだから恐怖だろう。

「あの音を聞いてください!」

「えっ? あぁ、分かりました」

音を聞いてどうするんだ?

アッセが何か知っているのか?

「あっ!」

アッセの驚いた表情に、驚く。

まさか本当に何か知っているのか?

「これは、似ています。 俺を助けてくれた森の神が発した音に」

何だと!

「やはりそうですか!」

アマガール魔術師の言葉にも驚く。

知っていたのか?

「アマガール魔術師、説明してほしいのだが」

アマガール魔術師が口を開こうとすると、魔石の光が増す。

その光は部屋全体を真っ白に染め上げていく。

あまりの眩しさに目をつぶり腕で光を遮断するが、それでも白い世界に襲われる。

だが、以前感じたような恐怖は感じない。

前は魔石が光れば、恐怖と畏怖で震えたモノだが。

しばらくすると落ち着いたようだ。

何が起こったんだ?

「あぁ、魔石が!」

アマガール魔術師の声に魔石を見ると、光っていた魔石の表面がぼろぼろと下に落下している。

一瞬砕けるのかと思ったが、中からうっすらと水色が入った透明な魔石が現れる。

ヒビも修復されたようだ。

「ヒビが消えている。それに魔石自体が……」

「素晴らしい! 見ましたか? これぞ神秘です。また変化が起こる可能性がありますから、今日はずっと見ていなければ!」

それは却下!

「アマガール魔術師、昨日もその前も徹夜だったみたいですね」

「…………………………ちゃんと寝ましたよ。部屋まで送り届けて頂いたではないですか」

アマガール魔術師は、少し間があったが俺の眼をじっと見つめる。

嘘だと分かっていても、こうまっすぐ見つめられて言われるとな。

この辺りが、こうすると決めたら梃子でも動かないこの人の面倒くさいところだ。

この状態の彼を説得するのは、無理。

既に何度も経験している。

「はぁ、ここにいて良いので、寝てください。ここなら、何かあればすぐに対処できるでしょう?」

「いえ、寝るなんて『エントール国から医師を呼びますか?』! そうですね、異変があればすぐ起きますし、寝ましょう」

まったく。

それにしても『医師を出すと良いですよ』と、言われたが、誰が来るのか気になるよな。

この状態のアマガール魔術師が怖がるんだから。

まぁ、とりあえず横にはなってくれるようだ。

……俺も徹夜か。

誰か、代わってくれないかな?

まぁ、数日代わった部下全員が『無理だ』と、泣きついてきたからな。

……無理だな。