軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第143話 帰国理由

「は……? どういうことだ、説明しろ」

オーウェンさんもポカンと口を開けて、ブライアン王子に詳細を問う。

「すごい偶然だ。いや、これはもはや必然なのかもしれない」

ブライアン王子は噛み締めるようにそう言うと、伏せていた目をゆっくりと上げた。

横から見上げても分かるほど、その碧眼は美しい。

私が知っているどこか抜けた雰囲気とは打って変わり、キリッと凛々しい王子の顔をしている。

「まずは、僕たち勇者パーティが一時帰国している事情について説明しよう」

そう、それよ。

聞くタイミングを逃していたけれど、どうして梨里杏やブライアン王子が今このタイミングで王都にいるのよ。魔王討伐のために大陸中を旅しているんじゃなかったの?

「僕たちは、ドーラン王国のみならず、大陸中で瘴気に侵された土地を巡っている。リリアの【浄化】の能力向上も兼ねてね。大陸中を行脚し、この一年で強い瘴気に満ちた場所はおおかた浄化できた。リリアの能力レベルも5になり、【浄化(中の上)】になった」

中の上……前に【通信】で話したときは【浄化(中)】って言ってたからまた能力レベルが上がったのね。召喚されたときは【浄化(微)】だったらしいから、すごく成長しているんだなって私まで嬉しくなっちゃうな。

それにしても、中の次は中の上って……刻むなあ……

ブライアン王子を挟んだ先に座っている梨里杏が微妙な顔をしているので、本人も不服なご様子。

「いちいち刻んでくるのほんとなんなのよ」

あ、口に出た。ボソッと呟いたんだろうけど、私とブライアン王子にはしっかり聞こえていますよ。

ブライアン王子は小さく苦笑してから続きを話し始めた。

「そこで、いよいよ海を渡って北の大陸を目指すことになったのだが、パーティのみんなには過酷な旅をさせてしまったからね。海を渡る前に、ほんの数日だが休養を取ることにした。出航を予定している港に転移紋を残して、一時帰国していたんだ。装備も整える必要があったし、王城で英気を養っていたところだ」

なるほど。相当過酷な旅だったみたいね。

梨里杏もだけど、ブライアン王子以外の三人もものすごい速さで首を縦に振っている。

梨里杏が野宿もザラだって言ってたから、きっと気が休まらない日も多かったんだろう。

「というわけで、僕たちは今ここにいるわけなんだが、準備も整ったし明朝には出発する予定になっている。北の海は海洋系の魔物も多く存在し、普通の海以上に天候が変わりやすく危険だ。点在する島国に立ち寄り、状態を整えながら進む手筈となっているのだが……」

ブライアン王子がそこまで説明したところで、神妙な顔持ちで耳を傾けていたアルフレッドさんがハッとした様子で口を開いた。

「まさか、そのうちの一つが?」

「ああ、ドラグア王国だ。ちょうど最初の休憩ポイントとして絶妙な位置にある国なんだよ。進行予定の海路もドラグア王国の領海付近を通過する。そこで、燃料や食料の補給のため一時的に船を寄せさせてほしいと申請をしていたんだ。ドーラン王国からも後押ししてもらってね。そしてつい先日、一泊だけ、そして限られた地区のみ立ち入りを許可するという条件付きで寄港が許された」

「流石のドラグアも勇者パーティを無下にはできねえってわけだな」

オーウェンさんもやれやれと肩をすくめつつも頷いている。

「条件の厳しさから歓迎されるとは思えないけどね」

ブライアン王子は眉を下げながら溜息をついた。

それにしても本当に、なんという偶然だろう。

長く暗いトンネルに生き埋めにされた心地だったのに、突然目の前が開けて光が差してきた気分だわ。

ブライアン王子を見上げると、フッと笑みを漏らして力強く頷いてくれた。

「というわけで、姐さ……ごほん、サチさんを勇者パーティの一員として一緒にドラグアへ入港することはできるというわけだ」

アルフレッドさんが「姐さん?」と首を傾げている。せっかく見直していたのに、締まらないからやめてほしい。

「……だが僕は、同行はお勧めしない」

「えっ!? どうして!」

「危険だからだ。当然だろう」

せっかく抜け出せると思ったのに、また瓦礫の山が降ってきて生き埋めにされた気分だわ。上げて落とさないでほしい。

しゅんと項垂れてしまうけれど、信頼できる人たちがマリウッツさんの祖国に行ってくれるのだから、希望を託すしかない。何もできずに待つだけなのがもどかしい。

申し訳なさそうな顔をするブライアン王子は、チラリと応接室の扉に視線を向けた。勇者パーティが使用中かつ込み入った話をしているので、扉はしっかりと施錠されている。

そのことを改めて確認したのか、ブライアン王子はひとつ頷くと、グッと身体を前に出した。つられて私も耳を寄せる。みんなが同じように顔を寄せ、密談するような形となる。

一人一人の顔を見回し、ブライアン王子は声を落とした。

「それに、今回寄港の運びとなったのは、実は彼の国の黒い噂を調査する目的もある」

「黒い噂?」