軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第142話 まさかの邂逅

「梨里杏!? どうして王都に……」

目をぱちくり瞬いてみるも、やっぱり目の前にいるのは梨里杏だわ。

聖女の装束ではなく、町娘風のワンピースを身に纏っている。

よく見れば後ろにはブライアン王子っぽい人と、その他に見知らぬ三人組が立っていた。

お忍びなのか、ブライアン王子はフードを目深に被っている。

えっと、もしかして勇者パーティご一行様?

そういえば、五人パーティって言ってたっけ……

どこかぼんやりした頭でそう考える。

そんな私の前で、梨里杏がブンブン手を振って心配そうな顔をしている。

「ちょっと、ぼーっとしちゃって大丈夫なの? ねえ、遠目にしか見えなかったんだけど、さっきまでマリウッツさんいたわよね? なんかパァッて光って消えちゃったように見えたけど、あれって……」

「きっと、【転移】の効果が込められた道具」

「え?」

梨里杏の言葉を継いで答えてくれたのは、身長よりも大きな杖を持った小柄な少女だった。

頭に深々と三角帽子をかぶっていて、見るからに魔法使いって感じ。

「さ、とにかくどこかに入りましょう。ここは人が多すぎるわ。マリウッツさんが突然消えて騒ぎになってきてるし」

梨里杏に言われてようやく周囲を見渡すことができた。

道の往来での出来事だったので、たくさんの人目についてしまったらしい。

「消えたぞ?」「どこに行った?」と、不安げな声があちこちから聞こえる。

勇者パーティの残り二人が何やら説明をしている様子で、人だかりは徐々にまばらになっている。

「うーん、お城……はサチさん嫌だよね。どこかいい場所ある?」

梨里杏が人差し指を顎に添え、片方のほっぺを膨らませながらブライアン王子に助言を求めた。

王子はいつもの締まらない表情ではなく、険しい顔をして考え込んでいる。

「そうだな。ギルドの一室を借りようか。姐さんの様子からも、ただならぬ事態ということは想像に容易いしね。マリウッツ殿は冒険者だし、ギルドマスターを含めて話をするのがいいだろう」

「そうね。さ、立てる? 行きましょう」

「あ、ありがとう……」

私は梨里杏が差し出してくれた手を取り、ふらつきながら立ち上がった。少し眩暈がする。

どうして勇者パーティがここにいるのかは分からないけど、梨里杏たちがいてくれてよかった。

私一人だったらどうしたらいいのか分からずにきっと動けなかった。

太陽はほとんど沈み、空は紺色と赤紫色が混じり合っていて夜の訪れを感じさせる。

私は梨里杏に支えられながら、勇者パーティと共にギルドへと向かった。

ちょうどクエスト帰りの冒険者が多い時間帯のため、注目を避けるためにギルドの裏口から中に入った。みんな少しラフな服装をしているとはいえ、勇者パーティがいきなり現れたらちょっとしたどころじゃない騒ぎになりそうだもんね。

ブライアン王子は、職員の一人を捕まえてオーウェンさんに言伝を頼み、間も無く慌てた様子のギルド職員が応接間へと案内してくれた。

「おいおい、せめて先触れぐらいは寄越してくれよ」

応接間で待っていると、ガシガシと頭を掻きながら筋肉の山もといオーウェンさんがやってきた。その後ろからはアルフレッドさんも続いて入室してきた。

アルフレッドさんの顔を見ると、少しホッとする。アルフレッドさんの癒し効果凄まじい。

食堂から温かいココアを人数分運んでもらい、私たちはローテーブルを囲んで向き合った。

三人掛けのソファに、私、ブライアン王子、梨里杏が座り、その対面にオーウェンさんとアルフレッドさんが座る。勇者パーティの他の三人は、用意された簡易椅子に座っている。

「それで、サチさん。何があったのですか? 随分と顔色が悪い」

察しのいいアルフレッドさんは、当事者が私であるとすぐに判断したみたい。

優しく微笑みかけてくれるアルフレッドさんに頷きを返し、躊躇いながらもマリウッツさんが恐らく祖国であるドラグア王国に強制転移させられてしまったことを伝えた。

マリウッツさんの出自については、今は黙っておくことにした。マリウッツさんは王子であることを公言していないし、勝手に話していいか分からなかったから。

「そうか。マリウッツはドラグアの出身だったのか」

私の話を聞き、太い足の上で両手を組んで顎を乗せていたオーウェンさんが神妙な顔をして深い息を吐いた。

「僕も出身については初耳です。それにしても、ドラグア王国とは……」

アルフレッドさんも考え込むように顎に手を添えている。

お国事情に詳しくない私が僅かに眉を顰めたからか、アルフレッドさんが「ああ」と説明してくれる。

「ドラグア王国は竜を信仰する古い島国で、俗世との交わりを嫌う風習があります。そのため、国は長らく鎖国状態で、必要な交易でしか港を開けない国なのです。入国するにも事前に申請して受理されなければ、不法入国者として捕えられてしまうほどの徹底ぶりなのだとか。かつて、商機を見出した商人が事前の申請なしに島に上陸し、そのまま帰らなかったという噂もあるほどです」

「実際、事実なんだろうよ。国民も簡単に外に出ることは叶わず、徹底的に管理されてるってえ話だ」

「そんな……」

国民でさえ出入りが制限されている国で、ましてや王子であるマリウッツさんが島国を脱出することはできるの? そもそも、十数年前、マリウッツさんはどうやって国を出たんだろう……?

こんなことになるなら、もう少しマリウッツさんに色々と聞いておけばよかった。

「私……マリウッツさんを、探しにいきたい」

ギュッと手を握りしめ、思わず溢れた言葉に、オーウェンさんとアルフレッドさんは顔を見合わせて困ったように眉を下げた。

「気持ちはよく分かる。だが、ドラグアは得体の知れない国だ。簡単に入国できる国じゃない」

応接間に重い沈黙が流れる。

「行けるよ」

「えっ!?」

そんな張り詰めた空気を破ったのは、黙ってオーウェンさんたちの話に耳を傾けていたブライアン王子だった。