軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大鳥のお風呂−1

アレックスは朝起きると隣にメグが居ない事に気づく。

寝ぼけながら、そういえば昨日から護衛の依頼を受けて出かけて行った事を思い出した。

ハイポーションを作って二週間ほどたった頃に、メグはニコルさんから呼び出された。

今回は依頼を受けてしまってからは内容を話す事ができない。

メグが事前に王太子になる方法を調べ上げて、今回の目的地を予想して事前に教えてくれた。

メグが周囲に聞いて調べた結果を思い出す。

オルニス王国で王太子となるにはいくつか手順があるようで、最初は領地付きの爵位を叙爵される必要があるのだそうだ。

叙爵される領地付きの爵位は、王家が保有している爵位の中から王太子に相応しいとされる爵位が用意される。

相応しいと濁されているが、歴代の王が叙爵された領地は九割方同じ場所で、オルニス山の近くにある領地が選ばれるらしい。

オルニス山近くの領地が選ばれる理由は、オルニス王国の発祥の地がオルニス山が元になっているかららしい。

アレックスは初めて王国の始まりがオルニス山だと知った。

オルニス山近くと言えば、アレックスの故郷の村も近い。

だがオルニス山はかなりの大きさなので、周辺には複数の領地と街があり、どの領地のことかとメグに尋ねると、故郷に一番近い街を有する領地だった。

一番近い街であれば、アレックスが一番出入りしていた場所だ。

街の名前はゲラノスと言って、王都ほど大きくはないが、かなり栄えた街で交易も盛んだ。

オルニス山から大量の水が流れ出ている事もあって、ゲラノスの周りは農業や牧畜が盛んな地域で、農作物から肉まで色々なものが集まる街だ。

同様に、農作物や牧畜で飼われた動物を狙った魔物が非常に多い場所でもある。

牧畜で飼われた動物を狙う魔物の中で一番手強い相手がワイバーンだ。

ワイバーンは単純に大きく強い上に、学習能力がある為、そう簡単には捕まえられない。

襲いかかってくれるなら簡単に倒せるのだが、逃げ回られると倒すのが非常に難しい相手だ。

アレックスが王都に来る時に倒したワイバーンの個体は、若くてまだ学習不足だったのかピュセーマに襲いかかってきて簡単に倒せた。

メグの話を思い出していると、そういえばピュセーマに朝の挨拶をしていない事に気づいた。メグの居ない朝が随分と久しぶりな事もあって、思い耽ってしまったようだ。

朝の準備をしてピュセーマが居る三階へと階段を上がる。

「ピュセーマ」

「チュン」

アネモスが隣にいないピュセーマもどことなく寂しそうに見る。

最近大きくした巣に、ピュセーマとアネモスは二羽一緒に入ってくっついていた。

巣の大きさの割にピュセーマ一羽しかいないからかもしれないが、やはりどこか寂しそうだ。

アレックスがピュセーマに近づいて撫でるとグーグーと鳴いて機嫌が良くなったようだ。

しばらくピュセーマの相手をしてから、餌や水を確認して一階へと降りる。

朝食を作りながらもゲラノスや故郷のスプルギティ村の事を思い出してしまう。

アレックスの故郷であるスプルギティ村も、ゲラノスと領地的には同じ領主の管理になっている。

スプルギティ村はオルニス山の管理を任されていた事もあって、税が殆ど発生していなかった。

オルニス山の管理と言っても、管理できるものではないのだが。

アレックスは領主を代行している人には会った事があるが、領主が誰かなどは記憶に薄い。

なので今回メグに話を聞いて、初めて王家の直轄地だった事を知った。

収める税金は村長が集めて全て処理をしていたので、領主が誰かを知らなかったとメグに言ったら、不思議そうな顔をされ「スプルギティ村なら」と謎の納得のされ方をした。

領主が誰かを知らなかったので、領主になると爵位がどの程度の位になるかも知らない。

メグがゲラノス侯爵になると教えてくれた。

故郷の村は侯爵領だったらしい。

故郷の近くのゲラノスに行くのならば、街にそこまで親しい友人はいないが、ゲラノスのギルドには出入りしていた。

多少手助けはしてくれるだろうと、手紙を書いて持って行ってもらった。

メグの予想が外れて領地が違う場所でも、それはそれで良い。

故郷の村に向けての手紙もメグに一応預けておいた。

ゲラノスのギルドでは、故郷のスプルギティ村に郵便を運ぶのは何故か断られる。なので手紙は村人が街に降りてきた時にギルドで回収している。

兄弟子のマーティーが、錬金術の素材や道具で村で買えない物を買い出しに出ているので、そのうちゲラノスのギルドに貯まっている手紙は回収されるだろう。

考え事をしていると、なんだか焦げ臭い匂いがし始めた。

「ん? なんか焦げ臭い?」

何だろうと手元を確認すると、作っていた朝食から焦げた匂いがしている事に気づいた。

慌てて少し焦げた料理を皿に盛り付ける。

確認すると朝食は少し焦げて炭になっていた。

食べれないほどではないので、炭になった部分を剥がしながら、それでも少し苦い朝食を食べる。

普段はしない失敗に少し凹みつつも、苦い朝食を駆け込むように食べ終える。

食器を洗った後に今日はどうするか考える。

料理で失敗するくらいだし、錬金術をするのも不安がある。ピュセーマも寂しそうだったし、最近相手が出来ていなかった事を思い出す。

今日は店を臨時休業としてピュセーマと遊ぶか。

店の外に出てピュセーマを呼ぶとすぐに降りてきた。

先ほどの朝食の失敗をピュセーマに話すと、少し呆れた表情をされた気がする。今日は一緒に何かしようと誘うと頷いてくれた。

何をするかと考えていると、ピュセーマが羽根を整え始めた。

家で定期的に水浴びをさせているが、一度ちゃんと洗ったほうが良いかもしれない。

メグから大鳥を洗うための銭湯があると聞いた事を思い出した。

ピュセーマに行くか尋ねてみる。

「ピュセーマ、銭湯があるらしいんだけど、行ってみるか?」

「チュ?」

不思議そうにしているピュセーマに大鳥が入れるお風呂がある事を説明すると、連続で鳴いて背中に乗るように指示してくるので、行ってみたいようだ。

早速銭湯に行ってみる事にした。

鞍をつけて背中に乗ると、ピュセーマは飛び上がった。

大体の場所を聞いていただけだが、目的の施設はすぐに見つかった。

王都でも外れの方に銭湯はあった。

かなりの大きさの建物で、空に向けて看板が出ており、煙がもくもくと施設から出ており分かりやすい。

ピュセーマに指示を出して地上に降りたが、何処で手続きすればいいのかが分からない。

広すぎて受付の場所が見当たらない。

迷っていると親切な人が受付の場所を教えてくれた。お礼を言って受付に向かう。

受付で利用が初めてだと伝えると、詳しく説明してくれた。

銭湯には人間も一緒に入れるようで、大鳥の体を洗うのを手伝える。人間が銭湯に入る場合は水着を着る事になるようだ。

「別料金で施設の者が洗う事も可能ですが、最初は飼い主が洗った方が大鳥も安心されるかと」

「なるほど。では一羽と一人分でお願いします。水着も買いたいんですが」

「承知しました」

銭湯に入るための金額は大鳥が入れるほどの施設なので高めだが、定期的に来れないほどの金額ではない。

ピュセーマが気に入れば定期的に通っても良さそうだ。

受付から水着を受け取って施設の奥へと進む。

普通の銭湯と違って特殊な作りになっており、そのまま浴場へと続く大きな扉がある。大鳥は大きな扉から先に浴場に入っていて貰うようになっていると、先ほど受付で教わった。

鞍を取り外し、ピュセーマを浴場に入れ、アレックスが着替えるのを待っていて貰う。