軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ワイバーンの革鎧−8

炉で作業していたザックは汗だくになっている。

アレックスにとって部屋の温度は涼しいほどなのだが、動き回っていたザックは違うようだ。汗を拭いながら声を掛けてきた。

「待たせたな」

「いえ、急に来たのはこちらですから」

アレックスは頼みたい錬金術用の素材についてザックに相談していく。

一部は必要になる量が多い事もあって、ザックが仕入れている業者を紹介して貰うことが出来た。

ザックが作り出せる特殊な金属についても聞いていくと、かなり珍しい金属もあり、時間がある時に作って欲しいとお願いをした。

今回作る防具に付ける装飾や魔道具についても相談すると、素材があればミスリルなどの金属が作れると言う。

ミスリルは特殊な合金で魔道具を作る時に効率の良い金属だ。

しかし、ミスリルを作るのも、素材を集めるのも大変なので中々手に入らない。

中心となる金属は銀なのだが、それ以外に複数の金属と、魔力が宿った物が必要になる。

幸いな事に今手元にはダンジョンの魔物がある。魔物の内臓を使ってミスリルを作れないかと、ザックに相談した。

「ダンジョンの魔物か。それならミスリルを作ることは可能だが、ミスリルにする素材になっているのか?」

「内臓を素材に変えるのはこの場でもできるので、製作をお願い出来ませんか?」

「急ぎの様だから今から作ってやろう。ミスリルは材料さえあれば簡単に作れるからな」

「助かります」

ザックが設備は好きに使って構わないと言った後に、必要な物をとってくると部屋を出て行った。

アレックスは魔法鞄から錬金術で使う小さめの釜と、マンティコアとオルトロスの心臓を取り出した。

釜に心臓を入れて、更に魔法鞄から必要な油や薬品を取り出して投入していく。

ザックが銀や他に必要な金属を持って帰ってきたところで、心臓は丁度素材として使えるようになったようだ。

ザックに素材を渡す。

ザックが素材を受け取ると、順番に材料を容器に移している。

適当に材料を容器に入れている様に見えるが、実際に同じ作業をすると大変難しい。

ザックは先ほどミスリルは材料さえあれば簡単に作れると言ったが、本来かなり難しい作業だ。

アレックスも一応作れるが、丁度良い配分にするのが難しく、一度で作り切るのは運が良くなければ無理だ。

ザックは配合が終わったようで、炉の中で混ぜ合わせた物を溶かし始めた。

炉から感じる熱量が先ほどとは全然違う。銀は先ほどの鉄の時とは違って融点が低いので、炉の火力がそこまで上げないのだろう。

すぐに溶け切ったようで、ザックが炉を触ると溶けた銀が出てきた。

ミスリルになっているかどうかの確認は、冷めて固まるまで待ってから確認する必要がある。

鉄よりは融点が低いとはいえ銀が溶ける温度は高温のため、すぐに成功しているかどうかの確認ができない。冷めるまでの間にザックから店の位置や、錬金術の店で何を置くのか聞かれた。

「ザックは何か欲しい物はありませんか?」

「可能ならポーションの目薬を置いてほしい」

「鍛冶師がよく使うものですね。作れるので置いておきます」

「助かる。この身長なのでいける店が少なくてな」

話していると銀が固まってきたようだ。

確認すると、ミスリルになっているのが分かる。

ミスリルは磨いてもいないのに輝いている。

ミスリルは銀と若干違って、光沢の中に青が混じる。何故そうなるのかは分かっていないが、銀からミスリルに変わった時だけ色が変わるので、魔力が関係しているのだろうと予測されている。

青が強いほどミスリルとしての性能が高い。

今回のミスリルは青色が相当強いので、高品質の物が出来たようだ。

「随分と良いミスリルが出来たようだ。流石ダンジョンの魔物だな」

「はい。ザックありがとうございます」

「ミスリルは簡単だから気にするな。それに報酬はしっかりと貰うしな」

アレックスが料金について尋ねると、ザックはお金以外にマンティコアの毒と血を欲しがった。

料金の一部をマンティコアの素材にして更にお金を払う。

ミスリルは本来お金を払えば簡単に作ってもらえる物ではなく、アレックスが自作するつもりだった。

時間が掛かるのは覚悟していたので、かなりの時間の短縮になった。

ザックの鍛治師としての技量は本当に凄い。

そんなザックは、マンティコアの血を眺めながら悦に入ったように笑っている。

四メートル前後の大男が血を眺めて笑っているのは若干怖い。

「ザック、マンティコアの血は何に使うんです?」

「鋳造だと鉄の中に入れたり、鍛造もであれば焼き入れをする時の水に配合をする」

「なるほど」

アレックスも良い素材が入った時は何を作ろうかと楽しくなる。ザックも同じような状態になっていたのかもしれない。

ザックの方が知識が豊富だろうと、今回の魔道具を作るのに当たって助言を貰うためにワイバーンの革鎧を取り出す。

ザックは鎧を見るとワイバーンかとすぐに当てる。

良い物だと言った後に、戦う人の防具でない事もすぐに見抜いたようで、だから魔道具にするのかと呟いた。

何か助言がないかと尋ねる。

ザックは魔道具は専門外なので分からないが、このような鎧に装飾をつける場合は紋章を入れる可能性が高いと言う。

紋章を入れる事については何も聞いていない。

訳ありのようだし、紋章を後から入れられるように一部装飾を入れない場所を作った方が良さそうだ。

防具の装飾について詳しくないので、ザックから普通紋章を入れる場所を教えてもらって、どのような仕上げにするかを考え直していく。

おおよその案が決まったところで、ザックにお礼を言う。

「ザック助言貰えて助かりました」

「随分と大変そうな依頼だが頑張ってくれ」

「出来上がりを見せる機会は無さそうなのが残念です」

「良い物が出来上がりそうだから、そこは残念だ」

やはりザックは依頼が厄介な物だと見抜いているようだ。

アレックスはこれ以上巻き込めないし、初対面なのに相談までして随分と長居してしまったと、ザックに長居を謝って今日は帰る事にした。

「気にするな。また相談でも遊びにでも良いから来るといい」

「ありがとう。またきます」

ずっと一緒にザックとの会話を聞いていてくれたメグも一緒に外に出る。

メグとは鍛冶屋の前で解散かと思ったら、完成した店を見てみたいと言うので一緒に家へ戻る事になった。

ピュセーマに乗って自宅に戻ると、今日はもう出かける予定がないので鞍を外してやる。

鞍を外したピュセーマが自室に飛んでいくと、その後に続いてアネモスも一緒に入って行った。

アネモスもピュセーマの部屋が、気に入ったのかもしれない。

ピュセーマは部屋に入ってきて怒るような性格ではないので問題はないだろう。

アレックスは今は店の中にメグを案内しようと、家の鍵を開けて中に誘う。

改装した場所を一通り案内して、商談用にと用意してある椅子に座って貰う。

せっかくなので売り物を少しみて貰う事にした。

まだ売る物が少ないので店を開けてはいないが、故郷にいた頃に作った物が多少置いてある。

その中からポーションとアクセサリーを手に取るとメグに見せる。

メグはポーションよりアクセサリーに反応して手に取って眺め始めた。

「綺麗。全部能力が付加されているの?」

「一部は見本で能力を付加しているけど、欲しいアクセサリーを決めてから錬金術で付加するようにしてる」

「確かにその方が選べて良いかも」