軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30.迷宮潜りなおし

熊ほどの大きさの甲殻類が、狼のような速さで迫ってくる。

そのザリガニのような形状をした赤い 怪物(モンスター) は、ハサミ状の手を僕に向かって振るう。

それを僕は剣を使って弾き、相手の関節を斬りつけようとする。

――しかし、失敗だ。

寸前で敵が身体をよじらせたため、硬い部分で受け止められてしまった。

「ちっ――!」

僕は戦闘場所の悪条件の多さに舌打ちする。

足元はぬかるみになっており、何をするにしても違和感が伴う。それに対して、ザリガニのモンスターは、ぬかるみを無視して俊敏に動くのだから割に合わない。

僕は決め手に欠けると思い、後退を選択しようとしたところで、マリアの声が響く。

「――《ファイアフライ》!!」

薄い炎の膜がモンスターの頭部にまとわりついた。

炎の目くらましに対して、モンスターは思わず両の手を顔面に運ぶ。

その隙を見逃す僕ではない。

モンスターに肉迫し、先ほどは失敗した関節狙いを成功させ、その両の腕を斬り落とす。

混乱していたモンスターの関節を狙うのは容易だった。

両の腕を失ったモンスターは悲鳴をあげる。

続いて、僕はモンスターの急所という急所を剣で攻撃する。他の関節、手足の細い箇所、感覚器官、明確な弱点がわからないので、その全てを潰していく。

「――ッギャアァアアァアアアアアアアア!!」

とうとうモンスターは断末魔と共に光となる。

消えていくモンスターを見送り、僕は肩で息をしながら、達成感と共に苦笑する。

【称号『沼地に潜むもの』を獲得しました】

魔力に+0.05の補正がかかります

「……はぁ、面倒くさかった」

「おめでとうございます、ご主人様」

「だから、ご主人様はやめて……」

遠くで補助に徹していたマリアが、こちらに近づきながら祝福してくれる。

魔法を覚えた僕たちは、あれから迷宮に入り直していた。

マリアのレベルが上がったので、何の憂いもなく、どんどん奥に進んでいる最中だ。10層に《コネクション》の設置を試そうと思っているので、いまのところは10層が目標となっている。

そして、 現在(いま) 、8層のボスをマリアと協力して倒したところだ。

僕はモンスターのドロップアイテムを拾いながら、マリアのご主人様呼ばわりを咎めた。だが、マリアは意に介せず話を続ける。

「なかなか手こずっていましたが。何かありました?」

「いや、足場が悪いのがこんなにやりづらいとは思わなかった。だから、いまのは助かったよ。いいタイミングだった」

「いえいえ、ボス戦だと私はあのくらいしか役に立たないらしいですからね」

そう言ってマリアは拗ねたような仕草を見せる。

この戦いの直前、後方で援護に徹しろと指示したのが不満だったらしい。

マリアには8層に辿りつくまでの間、短剣で雑魚モンスターを倒させてきたので、余計な自信がついてきているようだ。きっと、このボスモンスター相手でも力になれたと思っているのだろう。

やはり、急激なレベルアップはどんな人間であっても平常心を奪うようだ。

思慮深い性格のマリアですら、興奮して地に足がついていないと感じる。数時間の内に倍以上の筋力体力を得るということは、色々と問題がつきまといそうだ。

そんなマリアを格上相手の戦闘に参加させるのは不安が残る。僕が魔法《ディメンション》でモンスターの一挙一動を見張っているとはいえ、初見の特殊能力からはマリアを守りきれない可能性がある。

「いや、いまのボスならマリアでもいけたかもしれないよ。けど、ボスは何をしてくるかわからないからね。もう少しレベルアップを待ったほうがいい」

「そういうときこそ、こう、奴隷の私を捨て駒にするべきじゃないんですか?」

「奴隷じゃない。それに、そういうのは嫌だ」

僕はマリアを友人のように扱っているのだが、どうしても彼女は自分を奴隷として扱う。

もしマリアの言うとおりにして、捨て駒のように彼女が死んでしまったら僕は自己嫌悪で死にたくなることをわかってくれない。

……いや、違うか。

わかっていて、言っているのかもしれない……。

「はぁ、相変わらず甘いですね」

「別に甘くない。適材適所、マリアにはもっと別のところで働いてもらおうと思っているだけだよ」

「嘘ばっかり。過保護なだけです」

そう言いながらマリアは手に持ったナイフで遊ぶ。

くるくると手の中で回したり、ジャグリングのように放り投げたりする。

レベル7になったことで技量も上がっているのだろう。その上昇した能力を感じたいがために、先ほどからマリアは身体を、せわしなく動かす。

そのマリアの態度を見かねて、僕は釘を刺そうとする。

「過保護じゃない。単純に、いまのマリアは落ち着きが足りないように僕には見える。簡単に死んでもらうと、損をするのは僕だって話だよ。こっちとしては、最低でも金貨四枚分、きっちり働いてもらいたいからね」

「それこそ嘘ばっかりですね。思ってもいない事ばっかり言いすぎですよ。以前は逃げてもいいって言ってました」

「…………」

そういえば、そんなこと言ってしまってたような……。

僕は心当たりがあるので、反論ができなくなる。

このように、迷宮探索の間、それなりにマリアと話をするが、言い合いになって勝てたことは一度もない。

マリアが口達者で僕が口下手というのもあるが、何よりスキル『炯眼』が問題だ。僕の心の声が聞こえているのではないかと思ってしまうほど、彼女は鋭い指摘が多い。

僕が口喧嘩に負けて気落ちしていると、魔法《ディメンション》の索敵でモンスターを感じ取る。

「あ、前方の右曲がり角にモンスターが一匹。こいつなら、マリアでもいけるかな?」

「来ましたか。任せてくださいっ」

四足歩行の一般的な獣型モンスターだ。

8層の獣型モンスターに特殊な能力がないことを知っていたため、マリアの練習相手にあてる。

ランク8のモンスター、バウンドドッグ。

レベル7の探索者ならば数人で囲まなければ、倒すのが難しいとされるモンスターだ。

「行きます――!」

対して、マリアは短剣一つ身一つで襲い掛かる。

それをフォローするために、僕は後ろから追従する。

曲がり角から奇襲してきた人間に対して、バウンドドッグは機敏に反応する。獣特有の動きで大きく後退し、マリアの初撃をかわす。

そして、後退の勢いを四本の足で吸収し、そのまま空ぶったマリアの身体目掛けて突進しようとする。

それを焦らずに僕は観察する。

マリアも(・・・・) 、バウンドドッグの突進が見えていることを把握する。

突進してきたバウンドドッグに対して、マリアは跳ぶ。

バウンドドッグの背中に手をついて飛び越える。さらに、その飛び越えざまに、背中を斬りつけてまでいた。

バウンドドッグは距離を取っている僕ではなく、近くにいる 敵(マリア) へ向かって何度も突進を繰り返していく。

普通の人間ならば捉えきれない速度の突進だ。もちろん、いまのマリアの速さよりも、断然速い。

しかし、それでもマリアを捕らえきれない。

マリアの身体能力はレベル7の平均か、それ以下しかない。それでも、このバウンドドッグのスピードに対抗できているのは、ひとえにスキルのおかげだろう。

スキル『炯眼』がバウンドドッグの心理を見破り、挙動を見逃さない。

スキル『狩り』が効率的な身体運び、攻撃方法を導き出す。

二つのスキルが合わさり、モンスターの弱点を的確に突く。

何度かの突進が終わる頃には、バウンドドッグの身体はボロボロだった。

大事な筋肉の腱ばかりを狙うマリアの戦い方を前に、その自慢の速さは地に落ちてしまっている。

最後には、マリアに炎魔法で焼かれ、腱を絶たれ、目を潰され、心臓を刺されて息絶えた。

マリアはステータスの割りに強かった。

僕やディアと比べてしまうと可哀想だが、平均的な探索者よりかは遥かに優秀なようだ。

僕が手出しすることなく、マリアは8層のモンスターを倒しきる。

「……はぁはぁっ。すいません、手こずりました」

「いや、初日でこれはすごいよ」

「いえ、こういった獣を相手にするのは得意なんです。といっても、村では小動物しか相手にしていませんでしたが……」

「へえ、なるほど。どうりで」

どうりでスキルに『狩り』があるわけだ。

「昔は見えていても、身体が追いつきませんでした。けど、いまは違います。身体が軽くて、力が沸いてきます。すごいです。こんなに恐ろしい獣が相手でも戦えます」

マリアは楽しそうに、血塗れた短剣を振るって血を落とす。

モンスターを倒すことに達成感を覚えているようだ。

元々『狩り』という行為に向いていたのだろう。レベル7の恩恵を得て、思い通りに動ける身体を手に入れたことで、その才能が開花していっているように見える。

その後の探索も、マリアに任せても問題は起こらなかった。

物理攻撃が効かない特殊な敵が相手でも、スキル『炯眼』で見極めてから魔法攻撃を行うため問題ない。むしろ、特殊な敵ほどマリアの能力が発揮される。その洞察力によって有効な攻撃を選択していく姿は、僕の戦術と似ている。

こうして、僕たち新パーティーは、8層を過ぎて9層まで辿りつく。

ただ、9層のモンスターとなるとマリアでは対処しきれない敵が多くなってくる。

攻撃自体が通らなければ、目が良いだけのマリアではどうしようもないのだ。そういった場合はマリアに《ファイアフライ》で援護させ、僕が戦うことになる。

適当にモンスターを狩り、マリアの援護が通用していることを確かめて10層まで進む。

アルティの守る層。

燃え盛る炎の部屋だ。

辺りに誰もいない事を確認して、僕は実験のために炎へ近づく。

「アルティ、聞こえるか。アルティ」

電話しているような感覚で炎に語りかける。

マリアが頭のおかしい人を見る目で僕を見ている気がするけれど、気にしない。

「おい、アルティ。本当に聞こえて――」

『ああ、聞こえているさ。そこは私の家だからね』

語りかけた炎が口の形になり、返答する。

後ろでマリアが「えっ」と驚いているのがわかる。

「半信半疑だったが、本当に反応するんだな」

『ああ。だが、ちょっと本体が忙しいんだ。悪いけど、手短に頼むよ』

「わかった。ここに僕の魔法を置こうと思っているんだが、構わないか?」

『ついさっき話していた次元魔法だね。構わないよ。場所を用意しよう』

そうアルティが言うと、炎の一角が消えて道ができる。

『その先に炎のない空間を作ったから、試してごらん』

「やってみる」

僕はできた道を歩いて、炎のない空間で魔法を唱える。

「――魔法《コネクション》」

イメージする。紫色の魔力の塊、魔法の扉の構築。

僕の手のひらから漏れ出した魔力が集まっていき、扉としての形を模り――固定化されずに消えてしまった。

単純に、魔法を留めておくことができない。

「くっ……。アルティ、部屋の魔力が強すぎて扉を作れない」

《コネクション》が脆すぎるのもある。

そのせいで、『正道』上では結界に作用されて扉を保てない。それ以外のところでは、モンスターに破壊される。だから、結界もモンスターも存在しない領域のある10層に狙いをつけたのだったが……期待が外れてしまった。

「むむっ。こっちも先ほどから魔力を避けようとしているのだが、上手くいかないな。この部屋は、私の生きている証そのものだからね。炎はともかく、魔力に穴を空けるのは難しいようだ」

「なんとかできないか? ここにこれを置けるのと置けないのでは、大きな違いなんだ」

僕にとって10層までの迷宮は価値が薄れてきている。

今回はマリアがいるから利用をしたものの、おそらく次からは必要がなくなる。ここまでの移動時間はできるだけ短縮したい。

「むぅ……。すまない、無理そうだ。それは私に息を止めろと言っているのと同じだ」

「そうか……」

アルティは申し訳なさそうに、不可能であることを告げた。

そして、次の案を僕に提示する。

「だが、ティーダの部屋ならばいけるかもしれないな。なにせ、もう主がいない。部屋の魔力が失われている可能性は高い」

「ティーダ……? となると20層か。ちょっと遠いな……」

「キリストなら20層なんてすぐだろう? ちょっと行って、試してくるといい」

「簡単に言わないでくれ。そもそも、いまはマリアがいるし、時間も厳しい」

「ふむ。そうかい」

「でも、後日、試すよ。今日はありがとう。一応礼は言っておく」

「いや、礼は要らない。協力者同士助け合うのは当然だ。何かあれば、また頼ってくれたまえ」

それを最後に炎の口は形を失い、ただの炎に戻る。

10層では《コネクション》を使えないことはわかった。次の目標は20層だ。

「終わりましたか? ご主人様」

後ろで静かにしていたマリアが声をかけてくる。

「ああ、終わりだ。とりあえずは今日できることは終わった」

「いまの声は、お昼のアルティさんですか?」

炎の口から喋っているとはいえ、声色は本体と変わらない。僕が名前を呼んでいた以上、炎の主がアルティということは誤魔化せないだろう。

「ああ、アルティだ。あいつは炎魔法のスペシャリストだからな。こういったことができる」

「スペシャリストじゃすみませんよ、これ……。一体何者なんですか、彼女……」

「僕も詳しくは知らない。得体の知れないやつだが、知識があるのは確かだ。こと迷宮に関しては右に出るものはいないから、いまみたいな相談役には適している」

アルティがモンスターであることは黙っておくことにした。

曲がりなりにも協力し合っていることになっているのだから、害となるような情報の拡散は控えておきたい。なにより、ばれたら、後が怖い。

「へぇ……、相談役……」

アルティの情報を伏せているのを察したのか、マリアは短く相槌を打つだけだった。

マリアがそれでいいのなら、僕もこれ以上の説明はしない。

軽くステータスの確認をして、残りのMPから探索の切り上げを決める。

「それじゃあ、家に戻ろう」

「あれ、もう戻るんですか?」

「ああ。もう僕のMPが残り少ない」

「なるほど。それでは、帰りのモンスターは私に任せてください」

まだマリアは力が有り余っているようだ。

スキル『炯眼』『狩り』はMPを使わない 常時(パッシブ) スキルなので、それも当然だ。僕の魔法《ディメンション》は常にMPが消費されているのを考えると、とても羨ましい話だ。

――そして、帰り道は宣言通り、ほとんどのモンスターをマリアが相手した。

いくらか危ない場面もあったが、僕がフォローすることで大怪我になることもなく地上に辿りつく。

すぐに僕たちは今日の拾得品を換金しに向かう。

その換金したお金を見て、マリアは驚愕していた。このたった一日の探索で数か月分もの生活費相当を稼いでいるのだから、いままでの彼女の常識からでは考えられないことなのだろう。

「――す、すごい。迷宮の魔石が高価だとは知っていましたが、ここまでとは……。これが高給取りと噂の探索者様の実態なんですね……」

換金したお金の入った袋を手に持って眺めながら、マリアは呟いた。

「そうだよな。こんなに簡単にお金が稼げるのはおかしいよな……」

僕はマリアの言葉を聞いて、本来ならばありえない稼ぎであることを実感する。

そして、せっかくなので、その感覚をマリアと共有したいと思った。

「半分はマリアのものでいいよ」

「え?」

「手伝ってもらったから、半分で分けようと思っているんだけど……」

「いや、いやいや! それはおかしいです! だって、何もかも、ご主人様のおかげで! ご主人様がいたからの話じゃないですか!」

マリアは首を振りながら、お金の入った袋を僕に突き返す。

だが、この程度の小金に僕は魅力を感じない。

ボス狩りで得たお金、ティーダを倒して得たお金――それらを経て、僕の金銭感覚は狂い切ってしまっているようだ。

ここは自分ではなく、小市民であるマリアの意見を取り入れたほうがいいと考える。

「流石に半分はおかしいか。それじゃあ、マリアはどのくらいがいいんだ?」

「いや、私はご主人様のものですから、給金も何もないですよ……。ここに置いてくれるだけでいいんです……」

マリアは当然のようにお金はいらないと言う。

依然として、僕の奴隷というスタンスを崩そうとしない。今日の朝は冗談ですませたが、ここまで頑なだと困る。

僕は仕方がなく、自分の内情を吐露していく。

「それは 僕が(・・) 嫌なんだよ。マリアならもうわかっているだろう? 僕は奴隷を囲えるほど器の大きい人間じゃない。だから、もっと気軽な関係になって欲しいんだ」

「……そんなことないですよ。ご主人様は器の大きな方です。普通じゃありません」

正直に懇願しているというのに、それをマリアは受け付けてくれない。

僕が器の大きい人間というのは納得がいかない。そうだとすれば、ここにマリアはいないのだから。

だが、ここで言い争っても言い負かされるのは自分という予感もある。

迷宮の中では、散々な結果だったのだ。

「わかった。なら、 間(あいだ) を取ろう。それならいいだろ?」

「間、ですか」

「マリアは命を賭けて協力してくれてたんだ。無給だけは避けたい」

「確かに……。特に朝のあれは酷かったです」

「だろう? だから、五割とは言わないから、少しは受け取って欲しい」

「……わかりました。そこまで言うのならば、少しは受け取りましょう」

マリアは意を決して、給金を受け取ることに同意する。

そして、意を決したマリアは、大きく息を吸って、できるだけ不遜であることを心がけるようにして、額を提示してくる。

「それでは……。銅貨五枚ほど、よこしやがりなさい」

銅貨五枚。

食事一回分ほどだ。

こいつ、何もわかってねえ……。

マリアは僕の無言の反対を、にやりと笑って答える。

いや、やっぱりわかってて言っているのかもしれない。

僕は肩を竦めながら、彼女の望む交渉に――談笑に入る。

「いいや、銅貨なんて駄目だ。銀貨数枚が妥当だ」

「どこの貴族ですか、ありえません。ありえても銅貨十枚までですね」

「なら、銀貨一枚だな。これが最低ラインと言えるだろう」

「上がっても銅貨十一枚ですね」

「一枚しか上がってないじゃん……。もっと僕との間を取れよ……」

「ふむ。では十五枚」

「銅貨なら八十枚は受け取れ。命を賭けての報酬だってことを忘れるな」

「そうですね。命を賭けてですから十五枚です」

「いや、そこは少しは上げてよ。こう、間をとってくって話になってるだろ……」

「仕方ありません。では二十枚――」

「ようやく重い腰を上げ初めたな。じゃあ――」

冗談半分の交渉は長時間に及んだ。

マリアはこういった話をするのが楽しいのか、家に辿りつくまでの限界まで粘りに粘った。

最後は呆れ顔で僕から銅貨を受け取ったので、これでマリア個人の買い物もできると僕は安心する。

そして、そのまま、僕はマリアを家に残していこうとする。

その直前、マリアにどこへ行くのかと聞かれてしまう。それに僕が「酒場で下働きしてる」と答えたら、今日一番の呆れ顔で返された。

「これだけお金稼いでるのに、なんで雑用で小金を稼いでるんですか……?」

正論である。

しかし、なんとなく――正論だとは認めたくなかった。

僕は酒場での情報収集の大切さをマリアに説いて、仕事場に向かう。

その僕を見送る最後まで、マリアは呆れ返っていた。