軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

星魔石と輸入品

俺達は最後の道路を進んでいく。

道路はさらに急勾配に天へと登っていき、もう30%以上の勾配になってそうだ。これが普通の重力ならとても登っていけないだろう。

たとえ低重力でも転けたら下までノンストップで落ちていきかねない。慎重に坂道を登っていく。

ぐるぐると回りながら登ること20分、ついに最後の道路の頂点に俺達はたどり着いた。

そこにはアスファルトが蓮の花のようにめくれた中心に、黒紫の真球が高貴な輝きをたたえている。

「下から見えてた輝きはこれだったんですね」

「見たことない魔石の輝きだなぁこれ? 丸すぎ黒すぎ輝きすぎじゃん」

「はい……でもちょっとおかしいですね。下からでも光が見えるほどなら、こんなに近かったら眩しくて目を開けてられないはずですけれど……」

「この特殊な魔石はそういう性質があるみたいなんだ。距離が近くても遠くてもなぜか同じ明るさに見える。おかしな話だけど」

「九重さん、前にも同じようなものを見たことがあるんですか?」

「ああ、一度。北の自然公園に行った時に。あそこも環境がぐちゃぐちゃになってたし、そういう場所に生まれる魔石みたいだ」

初見の楓と久我は、興味深そうに星魔石をまじまじと見ている。

見た目もだが、マンションに捧げた時の性能も特別だし、美容室のために一つは使ってしまったから、ずっと見つけたかった。

それがついにここにある。俺がここに来た目的は達成できたな。

それに、星魔石の周りには普通の魔石もたくさんあり、普通にMPを稼ぎたい久我も納得の成果だった。

「それじゃあ、これで目的達成、だな。あとは……」

「おい待て待て待て……ここ引き返すのかよ!?」

久我のうんざりした叫び声が、空中に吸い込まれていく。

そう、長い長い登山の後は、下山があるのがお約束だ。

「待ってください、妙なものがあります!」

長い長い帰り道を下っている時に、そういったのは楓だった。

どうかしたのかと楓を見ると、下方を指さしている。

その指が指ししめす方向には――。

「建物がある? あんなところに?」

地面ごと浮き上がった建物が空中をただよい、国道に横付けしていた。登る時にはなかったから、空をふわふわ漂いつつ、今になって国道の横に流れ着いてはまったんだろう。

「ははっ、ちょうどいいじゃねぇか。国道の脇に店があるなんてお誂え向きってやつだ、ついでに何かあるか戦利品探しと行こうぜ」

「そう言われれば普通の光景か……いやそうか?」

どっちにしろ、ちょうどあるなら行ってみることに依存はない。ちょっとショッピング程度なら時間の余裕もある。

店のところまで降りていき、看板を見ると、「あっ! ここ私がよくコーヒー豆買ってたところです!」と楓が突然興奮しはじめた。

「豆? 結構本格的にやってるんだな楓」

「本格的というほどではないので恥ずかしいですけど、コーヒーは好きなんです」

「だったら、ここにうまいコーヒーがあったらラッキーだな。見てみよう」

俺達は建物の中に入る。

すると、

「おっ! ここちょっといいツマミがある店じゃねぇか! 思い出した、高くて滅多に買えなかったけど美味かったな」

「久我もこの店の愛好家だったのか。別の目的らしいけど。しかしふたりとも褒めてると、俺も興味出てくるな……」

「もう目的は果たしましたし、ゆっくり見ていきましょう、九重さん」

楓の言う通りか。

俺達はその店にいいものがないか見てみることにした。

「あっ、この豆は……! こっちも残ってます」

「おっ! カシューナッツにマカダミアナッツ、ハニーローストピーナッツもあるとか最高かよ! さすが乾物だな!」

二人が嬉々として店内を見て回っている。

たしかに売っているものは乾燥していて、袋に密封されているものが多い。建物さえ無事なら、賞味期限は1年後ってものもざらだから、今でもまだこのまま食べられそうなものが多い。

だったら俺も何か欲しくなるな。

店内を見て回ると、あまり普通のスーパーじゃ見ない珍しいお菓子がたくさんある。あとはレトルトカレーなんかも。

マンゴーチップス、バナナチップス、トルティーヤチップス……それに何語かわからない言葉が書いてあるお菓子の袋が色々。

食べたことないから謎だが見た感じは結構おいしそうだし、新しい経験ができそうだし、これはいい店だ。

「思わぬご褒美だな、頑張って高いところを登りきった俺達への」

「はい、帰ってコーヒーで一休みするのが楽しみです!」

それからしばしの間、俺達はショッピングを楽しんだ。

そして――。

「よーやく! 地に足ついたっしゃあ!」

登頂から2時間後、俺達は再び地上に戻ってきた。

うきうきで久我が足踏みを繰り返している横では、楓がつかれた顔をしている。

「なんだか体が重く感じます。これが重力なんですね」

「ああ、よくわかる。こんなに俺って重かったっけって感じだ。たった数時間でこんなになるんだから、宇宙飛行士が立てなくなるのも納得するよ」

「そうですね、宇宙は飛行してませんけど……国道飛行士ってところでしょうか……あ」

笑っていた楓がげんなりした表情を見せた。

珍しいな、こんな露骨に嫌そうな顔をするなんて。

「どうしたんだ?」

「ここからマンションまで、1Gで帰らなきゃ行けないんですよね……」

「あ……」

本当に辛いのは、低重力の冒険よりも、そこから戻ってきたあとだった。