軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔獣狩り

翌朝。

俺たちは【マンション】の空間から出る門をくぐった。

まぶし、朝日がもろに来るな。

太陽は世界が滅んだ後でも変わらない。【接触】は地球だけだったみたいで不幸中の幸いだった。太陽が紫色になったら気持ち悪いからな。

【マンション】を出た俺たちは太陽の方に向かって歩いて行く。

目的地は昨日見た角の生えた狼。

いた。

「またガレキに鼻ふんふんしてるよ」小声で雪代が言う。

「こっちには気付いてないな、よし。気付かれる前に手早くやろう」

俺は両手で杖を持ち、宝石のついた方を角狼へと向けた。

杖の使い方は【マンション】の庭で練習済み。

杖は、ごつごつした捻れた古木の先に青い宝石を取り付けた形状をしていて、体の中心から手を伝って力を送るようなイメージをすると、輝き始めた。

さらに時間をかけて集中していくと、宝石はより明るくなっていく。

まだだ、もう少し力をチャージする。

さらに集中を続けると青色の宝石は水色になり、ほとんど白色になるまで明るくなった。よし、これで最大威力。

「あとは狙いを合わせて――」

と照準を合わせようとしたその時、角狼はこちらに目を向けた。

気付かれたかと思うやいなや、キキッと甲高い鳴き声を上げて鋭い前歯を剥き出しにしながらこちらに走ってきた。

「ねえ魔獣こっちに来てるよ! まずくない!? ああ待ってちょっと立ち止まってでか狼くん!」

雪代が早口でまくし立てている。

「距離があるから慌てなくていい。そのために高いMP出して遠距離武器を買ったんだから。なんならガレキから出て狙いやすくなった――よし」

杖の先が角狼の脳天にぴったりとあった瞬間、ためた力を解き放つ。その瞬間、青い光の大矢が杖の先から放たれた。

光の航跡を残して飛んでいく大矢は流星のようで美しい。

戦闘中だというのに一瞬見とれてしまったのは俺だけじゃないのか、光の大矢は俺に真っ直ぐ襲いかかっていた狼の二本角の間を正確に射貫き、空中に光の粒を残して消えた。

そして射貫かれた角狼は、ガレキの上に勢いよくつんのめるように倒れ絶命した。

「よし、うまくいったな」

「ふぁ……」

ぺたんと腰が抜けて尻餅をつく雪代はひとまずおいておいて、角狼の様子を確認しておこう。

紫の二本角の間に貫かれた傷がしっかり残っている。

しかしこの角の色、魔石と似ているな。

なんだ、紫色の光が?

観察しているとすぐに魔獣の体から紫色の粒が立ち上り、蒸発するように消えていった。その後に残ったのは、紫色の角だけだった。

死ぬときえるなんて、やはり普通の動物とは違う。

しかし角は残るのか。

ふむ、この角の色、魔石と似てるな。触った感触も魔石に似ている。

魔獣。魔石。まさか。

「はぁもう九重さん、1人でやってないでよ。私が腰抜かしてたんですけど!」

「マンションに戻ろう雪代、試したいことがある」

「はぁ!?」

「もう歩けるなら戻れるだろう、行くぞ」

「ちょ、待って! マイペースが過ぎるぞ九重ぇ!」

俺たちは勝利を祝いながら楽しく【マンション】へと戻っていった。

【マンション】に帰ると、リサイクルボックスの中へさっきの角を入れてみた。

少しの間を置いて――モニターに表示された。

『MP+300』

やっぱり、思った通りだ!

「魔獣の角を入れたらMPもらえた? なんで?」

「あの角、魔石と同じような性質を持ってるんだ。色も似てただろう」

「あー言われてみれば。マホウの力を持ってる獣だから魔獣。その魔の力が角に集まってたって感じなのかな?」

「そんなところだろう」

これは嬉しい誤算だ。

魔石を獲得する道のりの障害物を排除するつもりで魔獣を倒したけど、そこにおまけでMPまでついてくるとは。まさに一石二鳥。

「え、待って! じゃあ魔獣を倒せば倒すほど、MPが増えて色々通販できるってこと?」

「そういうこと」

「めちゃおいしいじゃん! どんどん行こう九重さん」

雪代に手を引かれ俺は【マンション】を再びあとにした。

それから俺たちは昨日魔獣を見つけたポイントに行き、同じように遠距離狙撃で魔獣を倒して行った。魔獣は同じ角狼もいたし、別のものもいたが、皆角や尻尾などに魔石の部位を持っていて、それは魔石と同じ働きをしてくれた。

おかげで魔獣を倒すだけで【MP+2000】ほど稼げた。

「とりあえず近くの魔獣はこれで片付いたかな。安全も確保できたし」

「MPももらえて、いいこと尽くめだね。その杖強いねー」

「買って良かった魔法の杖。そうだ、聞きたいんだけど雪代、雪代は一ヶ月くらい彷徨ってたんだよね、その間魔獣って結構見たの?」

「うん。かなり。基本的にずっと魔獣からは隠れてた。襲われたこともあって、危なかったなああの時は。なんとか逃げ切れてよかったけど。珍しく無事なお店があったのに魔獣がいて入れなくて食べ物も飲み物も手に入らず……」

「それもあって飢え死にしそうになってたのか」

「そういうこと。……なんか九重さんは魔獣あんまり見たことなさそうなこと聞くね。一ヶ月もあれば結構見かけると思うけど」

「ああ、そういえば言ってなかったっけ。俺、一昨日まで寝てたんだよ。マンションを作ってからずっとその中で意識をなくしてた。だから感覚的にはまだ二日しか経ってないんだよね」

「え?」と瞬き高速の雪代。まあいきなり一ヶ月眠っていたといわれたら無理もない。俺も驚いたし。

俺は親切にも雪代にもう一度ゆっくりと丁寧に『接触』から目覚めるまでのことを話した。

すると。

「信じられない……」

「そりゃそうだ、俺も信じられない。一ヶ月も寝るなんて。人生最長記録だよ」

「違う違う、それも信じられないけど、九重さんがこの崩壊した世界でまだ三日目ってとこだよ」

雪代は俺の正面に立ち塞がって目を見上げてくる。

どうかしたのか?

「いや本当だけど」

「別に嘘だと思ってるわけではなく! でも嘘みたいだよ、なんでさあ三日目でそんな落ち着いてられるの?」

「?」

「いやなんでそんな、『何言ってるのか理解できない』みたいにちょっとかわいく小首を傾げてるのよお前さん。普通の人間は世界が崩壊してマホウ使えるようになって三日じゃまだわけわからなくて大混乱だからね?」

「ああ、なるほど。……そうかな? 三日あれば落ち着かない?」

「落ち着かないから! 私ぜんっぜん落ち着いてなかったから。ていうか昨日の時点ですでに貫禄あったから三日かかってないよね。というか一ヶ月この世界で生きてる私より貫禄あるのなんなん? モンスターが突進してきたとき、すごい普通に落ち着いて武器構えてたし。現代日本人のメンタリティじゃないのよ」

はははそんな戦国時代みたいだなんて大げさな。

ただ鈍感で物事深く気にしない性格なだけだ。

って、笑ってる俺を怪訝な目で雪代が見ている、なぜ。

「まあ真面目に見習いたいとこではあるんだよね。魔獣が来た時にビビって動けなかったら困るし」

「見習っていいぞ。コツは、起きてることに対して考えること。起きてることに対して思うのではなく」

「難しそうなことさらっとやってるねー。やはりただ者ではないな、九重さんと同じマンションに来れてラッキーだった。崩壊した世界じゃ頼りになるよ、絶対。これからもよろしくお願いします」

半分独り言のように言うと、謎に神妙にぺこりと礼する雪代。

1人より2人の方が生存しやすいだろうから、よろしくされるならいいことだ。

それに……。

俺は雪代の肩を叩いて顔をあげてもらった。

「こっちこそよろしく。早速、あの電信柱の上の魔石を念動力でとってもらいたいな。よろしくね」

「え、めちゃくちゃ傾いてるけど……今にも倒れそうだけど……」

「これからも一緒にやってく仲間だろ♥大丈夫、その方が効率いいから♥」

「…………アンラッキーだったかも」

俺たちはそれから、魔獣を排除したフィールドで思う存分魔石を集めていったのだった。