軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フワフワスポンジ

100均という最高の生活支援設備を見つけた俺は、翌日も行き店内を探索した。

昨日は到着したのがもう午後だったので、取りやすい場所にあるものしか見ていなかったが、今日は朝から来ているのでできる限りガレキも掘り起こしたりして商品を探して行きたい。

土ではないがスコップを使いテコの原理でガレキをどかし、下に壊れた製品がないかを見ていく。結構な重労働だが、最近は涼しくなってきたので真夏に外で色々やっていたころにくらべればだいぶマシだ。

「ふう……この水だけで汚れを落とせる繰り返し使えるパンダ型スポンジはなかなか良さそうだな。わざわざ洗剤使うほどじゃなあって時に使える」

100均ってなぜかこういう動物モチーフの商品多いよな。かわいいからいいけど。

「あー、なんでこういうデザインかなー。もっとシンプルでクールな方が俺好みなんだよな~」

とその時、背後から聞き覚えの声が聞こえてきた。

後ろにある棚を回り込んで声の方を見ると。

「久我。久我も来てたのか」

「おっ、九重じゃん! 九重も見つけてたかー、ここ。なんかいつの間にか100均っぽいものがマンション通販に載ってたから、どこかにあったのか? って思ってたらここ見つけて入ったんだよな」

「それ追加したのが俺だ」

商品を復活させた場合、それはその人だけじゃなく、マンション通販自体に商品が追加される。なので、誰かが追加した商品は、住民全員が買えるようになる。ありがたい話だ。

「えっ!? マジか!? やるじゃねえか、さすが大家だな」

「関係あるかそれ? まあ久我も来てるならいいことだな。一人で探すより多く商品が見つかる」

「ああ、もちろん俺はゴリゴリのゴリに働くからな。つか本当に便利だよなー、壊れてたり腐ってたりしても、商品が追加できるなんて」

それは本当にそう思う。これまでのマンションの進化で一番嬉しいかもしれない。

だが、久我の表情はなぜか晴れない。

「でもさあ、一つ文句言っていいか?」

「え、ダメだけど」

「なんでだよ! 言わせろよ! 言うからな!」

「どうせ言うなら確認しなくていいのに」

「うぜー。ガチでうぜー。ていうか、商品追加するなら、金もかからないようにしてくれよ、って話よ」

「金も?」

「そう。色々追加されたけどさあ……なんか寿司とかさ。高ぇんだよ! MPねぇんだよ! 追加するだけじゃなくて手に入るようにしてくれよ」

「無茶言うな。買うにはMPがいる。それはマンション通販の絶対のルール。というか社会のルール」

「そりゃそうだけどマホウだろ? ルール破ってもいいじゃねえか」

「マホウだからってなんでもできるわけじゃないからな」

はあ、と肩を落とす久我。

久我はまだマンションに入居してから日が浅い。

部屋を整えるためにMPを使わなきゃいけないから、余裕はほとんどないだろう。それはかわいそうだが、まあ俺も他の皆も通ってきた道だ。しばらく魔石集めれば快適になるんだから、そこまでは我慢ってことで。

「…………」

と、なんともいえない目つきで久我が俺を見てきた。

「なんだ? 何か言いたいことが?」

「金貸してくんね?」

「え、ダメだけど」

「なんでだよ! 俺は入居してすぐだからMPないんだって。九重みたいに溜め込んでないんだから、ちょっとくらいいいじゃねーか」

「だから生きてくのに必要な分は貸しただろう。というかその分まだ全部返済されてないぞ」

「人間って生きる以上のモンが必要だろ? な? そのうち返すから。一回貸すのも二回貸すのも同じじゃね? うん、同じだな」

「絶対同じじゃない。最低限ならともかく、それ以上の分は地道に魔石を集めることを推奨します」

「ちっ。丸め込めなかったか」

久我は放っておいて100均探しだ。

まだまだいいものはあるは……ず……?

「…………なあ、久我」

「なんだ? 気が変わったか?」

「気は変わらない。けど、なんか変わってないか?」

「なんだよなんかが変わったって………………は? はぁ!? 浮いてっぞ!?」

浮いていた。

ガレキから掘り出した倒れた商品棚にあった、スポンジ5個セットが空に浮かんでいた。 ふわふわと、 漂っている。

「なんだこりゃ? 九重が何かしたのか?」

「いや俺は何もしてない……見ろ、他にも浮いてるものがあるぞ!」

栓抜き、缶切り、洗剤、そんなものがふわふわと浮かんでいた。

まるで無重力になったかのように。

無重力……まさか……いや、間違いない。

俺の体も。

とん、と地面を蹴ると普段の何倍もジャンプし、高い天井に手がついた。

それを見た久我が目を剥いて驚いている。

ゆっくりと落下してきて、俺は久我に言った。

「重力がおかしくなってる。ジャンプしてみな、宇宙みたいにふわふわ飛べるぞ」

「そんなアホな……ってマジじゃねえか痛ぇっ!」

久我も勢いよくジャンプし、勢い良すぎて天井に頭をぶつけた。

そして頭をさすりながらゆっくりと落ちてくる。

「なんだなんだよ? 何が起きたんだ?」

「わからない。突然重力がなくなるなんて――」

「九重さん! 久我さん!」

とその時、上前方から声が響いた。

そこには今まで気に止めていなかったが天井に穴が空いていた。

声につられてそちらを見ると、穴から見知った姿がひょっこりと顔を出した。

「楓です! 上まで来てください! なんだかすごいことになってるんですよ!」