軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新商品入荷

「これ気に入った、一日頑張ったって気になるじゃない」

リサイクルボックスのモニターを見つめながら綾瀬が言った。

公園から退散した後も俺達は魔石集めを続け、一日かけて結構な魔石を集められた。

今はそれを持ち帰り、リサイクルボックスに入れてMPに変換しているところだ。

綾瀬は続ける。

「ここに石を入れる時のジャラジャラいう音とさ、その後にこのモニターに数字が出てくるのがたまんないよね。ほら今日は4260MPって出てる、4260も一生懸命働いたんだなあっていい気分」

なるほどそういう見方もあるのか。

俺は慣れてしまって、いちいち投入するの面倒だ魔石を手に取った瞬間に直接MPになったら楽でいいのに、と思っていたが、情緒を忘れてしまっていたかもしれない。

「これが俺達の稼ぎってことだよな!? これで好きなもん買えるってことだよな!?」

やはり俺は情緒を忘れていたようだ、久我はこんなに喜んでいるのに。

「ああ。三人で探索したから三等分、1420MPずつだな。それでマンション通販で必要なものを各々買えばいい」

「うっわ、クソ楽しみ。早く分配してくれよ、買うもの決めたいから!」

「九重早く、うちも早く通販したい!」

二人に急かされながらMPを分配し、今日の探索はお開きとなった。

久我は一階の廊下をダッシュし、綾瀬は階段を駆け上り各々の部屋へと帰っていった。

五人の新入居者が加わって一週間ほどが経った。

もう五人ともすっかりマンション生活に適応し、自分でMPを稼ぎ、それで暮らしをどんどん改善していっている。

俺が引率したり教えたりする必要もすでに全然なく、各々のことを自由にできる現状だ。今日も一人で探索に行き、魔石を稼いできた。

さて、今日の晩御飯は何にしようか。

『より発展的な商品』

晩御飯を注文しようと通販端末を開くと、端末の右上に、見慣れない表示があることに気づいた。

「…………このパターン! まさか通販が進化したのか!?」

久しぶりに来たな。

マンションを進化させるために新入居者を募った効果が早速表れてくれた。

ああ、本当に久しぶりだ、美容室みたいなのも面白いけど、やはり新商品も欲しかったからな。

いったいどんなのが追加されたのか――。

俺はタッチ操作をして『より発展的な商品』とやらを見てみる。

・チョコレート

・缶チューハイ

・スパゲッティ

表示されたのはそういうものだった。

「え? なんだそれ?」

こんなものは前からあったぞ。

間違いなくあった。チョコレートがないわけない。

じゃあいったい……。

疑問は、チョコレートの欄をタップしてページを遷移すると解きあかされた。

・ミルクチョコレート ・ビターチョコレート ・ホワイトチョコレート ・カカオ70% ・カカオ80% ………………

板チョコレートの通販に、それだけ種類が色々あったのだ。

以前はミルクチョコレートとビターチョコレートしかなかったのに、だ。

また缶チューハイには以前はレモンサワーとグレープフルーツサワーしかなかったが、今見ると、

・レモンサワー ・グレープフルーツサワー ・ぶどうサワー ・梅サワー ………………

と種類が大幅に増えている。

こういうことだったのか。

他のものも種類が大幅に増えている。体を洗うタオルも、普通のタオルだけだったのがふわふわ泡を作れるタオルなんかが追加されていて、充実のラインナップだ。

理解した、今回の通販の進化は細かいところまで希望が叶うようになる進化なんだ。

個人的にこれはかなり嬉しいな、チョコレートの中で俺はホワイトチョコレートが一番好きなんだよ。

と、ただでさえ喜んでいたのだが、これで終わりはなかった。

種類追加以外に、新項目まで追加されていたのだ。

『新武装』

それが新項目――つまり武器が追加されていた。

これも嬉しい進化だ、俺みたいな戦う系のマホウじゃない者にとっては、通販の武器が一番の頼みだからな。魔法の杖も通販で買ったものだし、ああいうものでさらに強力なものが手に入れば、駅前の魔獣密集地帯も怖くなくなる。

「さて、どういう武器があるんだ?」

・カプサイシンスプレー

・スタンガン

・ネットランチャー

「……これまたずいぶん現代的な」

上から見ていってまず目に入ったのがこの3つだった。

何かの間違いかと思った。誰だって思うだろう、魔法の杖とのギャップに。

けれど、どうも本当にそのものが買えるらしい。

カプサイシンスプレーは、いわゆる催涙スプレーで、唐辛子の成分から作ったもので、強さによっては熊も逃げ出すようなものまである。

スタンガンはあの有名なやつだ、ミステリー漫画でもよく出てくるバチってやるあれ。

ネットランチャーはよくわからなかったが、個別ページを見てみると、ワンタッチで網を発射して拘束できる装置のようだ。

武器というよりはどれも護身具のような感じだな。

非殺傷で相手を無力化する類のもので、単純な武器とはまた違う用途がありそうでこれはこれでいいかもしれない。

それと、防具も追加されていた。

・鎖帷子

・鉄の盾

・プレートメイル

なぜ防具はファンタジーなんだ?

武器は現代的なのに防具は中世ヨーロッパ的なのがかなり謎だ。警察や特殊部隊が持ってるような盾とか防弾チョッキの方が使い勝手良さそうなんだが、残念なことにそれはなかった。

こんな防具着て探索するなんて重すぎて無理だし、使えそうなのは盾かな? でもそれも魔法の杖の魔法の盾で十分な感じがするし、防具の方は趣味って感じだな。

ただ武器の方は結構便利そうだし、買ってみてもいい気がする。

魔法の杖は使うのに精神を集中する必要があるけど、スプレーや網はワンタッチで使えるし、非殺傷だと魔獣以外に使う時にはむしろ使い勝手がいい。

なかなか当たりの追加販売と言っていいだろう。

「後で役に立ちそうなのを買っておこう。でもまずは……」

俺はチョコレートの項目に戻り、ホワイトチョコレートを3つタップした。

すぐにマンションの宅配ボックスに行き、箱を回収して開けるとそこには雪のように白いホワイトチョコレートの板チョコが。

パキッ、と音を立てて板チョコに齧りつく。

「やっぱりこの味だよ」

クリーミーで甘くて滑らか、やはり俺はこの味だ。

久しぶりに食べることができた、この味を、ホワイトチョコレートを。

マンションが進化して本当に良かった。

入居者がたくさん来てくれて本当によかった。

チョコレートの甘さとともにその思いを俺は噛み締めた。