軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

提案

「くそったれぇ……てめぇら汚えぞ一人によってたかって! 恥ずかしくねえのか!?」

隼人は悪態をついているが、結束バンドで手足を縛られているのでもちろん何もできない。

「君の方が汚いと思うけどなあ。こんなとこに人を閉じ込めてさあ」

「山根の言うとおりだ、どの口でそんなことを言っているんだ? まあ、喋る元気があるのはいいことか。色々聞きたいことがあるんだ」

山根と田茂が隼人に言う。

たしかに、貴重な南の奴らの一味なんだから尋問しないという道はないだろう。しかし、だ。

「あんまり時間をかけてると、逃げた奴らが仲間を引き連れて戻って来るかもしれませんよ。話を聞くとしても、ここは一旦離れた方がいい」

山根と田茂は俺の方を見て頷いた。

俺達は早々にデパートの倉庫をあとにして、トンネルを引き返していった。

このあたりは南の国道沿い、奴らの縄張りだから地上を歩くよりは来た時同様トンネルを通っていくほうがアクシデントは少ないだろう。

それに……。

「やっぱりここすごいっすねえ! 魔石たっぷりっすよ!」

このトンネルは地下駐車場と同じく、いやそれ以上に魔石が豊富だった。

天井から鍾乳石のように魔石が垂れ下がっていて、大量に取り放題。

行きは山根達がどうなってるかを早く知る必要があったし、魔獣の相手に時間も取られたので、トンネルが予想より長いとわかってからは取る暇がなかったが、無事合流できたからにはもう見逃す手はない。

俺と自警団は魔石を根こそぎ取りながらトンネルを戻っていった。

幸いモグラの魔獣も新たにやってくることはなかった。このトンネルに近づくと危険だとモグラ仲間の間で噂になっているのかもしれない。

無事に地下駐車場に戻ったころには、魔石は魔法の鞄から溢れんほど集まった。

情けは人の為ならず、という諺は正しかったな。ちゃんと俺にとっても大きな利益があった。

とはいえまだ油断はできない。

駅前には魔獣が多いので、地下駐車場から外に出るときにも注意しなければいけない。

と思っていたのだが、そこで監禁されてた人が活躍してくれた。

5人いた中の一人、ショートカットの女性が「外のこと知りたいなら私に任せて」と言ってマホウを使ったのだ。

それは彼女が『ソナー』と呼んでいる聴覚拡張能力で、彼女の言葉を借りるなら「音が視える」力だ。本人しかその感覚はわからないが、音の反響によってまるで目で見ているのと同じように地形や物の有無がわかるという。

音が伝わる範囲なら、地下からでも地上のこともわかるということで、地上の様子を地下駐車場にいながら探り、魔獣たちがいないタイミングで外に出ることができた。

結構いろいろなマホウを見てきたつもりだったけど、まだまだ未知のマホウがあるんだな、面白い。

そうして地上に出た俺達は、無事に美容室のところまで戻って来たのだった。

「ふうううー! 無事帰って来れたっすね!」

山根がお腹に手を当ててながながと息をついた。山根チームの面々も山根と同じく、清々しい表情で深呼吸をしている。

あのトンネルの先に元々監禁されていた人たちは、第二マンション空間に戸惑いつつ興味津々で美容室の中をガラス越しに見たり、芝生の地面の感触を踏みしめている。

「ああ。全員生還できたのは彼のおかげだ」

「そうっすね! ありがとうございます九重さん。ほんっとに、何かあったらいつでも言ってくれっす、どんなことでも協力しますから」

山根と仲間たちが頭を下げた。俺は手を少し上げて答える。

田茂が続ける。

「それに、南の奴らも捕まえられたし、これで情報を引き出せれば彩草市の平和を今より守れるかもしれん」

不貞腐れた顔の隼人に田茂は目を向ける。

「それで、その南の奴らに囚われていた五人のことなんだが――」

田茂がついにそのことを口にした。

きたな、と思っていると五人も集まってきて、話の推移を覗っている。

「彼らの身は自警――」

「俺達のところに招きたいと思ってます」

田茂が驚いた顔を俺に向けてきた。

五人も俺に視線を一斉に向けてきた。

「九重君、それはどういうことだ?」

「そのままの意味です。俺達は俺達で何人かでまとまって暮らしてるって言ったの覚えてますか?」

「ああ、山根の毒を直してくれた彼やその他の人たちと同じ場所で生活してると言ってたな」

「そこに彼らを招きたいんです。もちろん、彼らの意思が一番尊重されるべきですけど、俺の意思としては」

田茂は小刻みに頷きながら何かを思案しているようだが、おもむろに口を開いた。

「なぜ彼らを招こうと?」

「うちは、自警団に比べたらだいぶ人数は少ないです。10人くらいしかいない。単純に人手が多いほうができることも増えるじゃないですか。シンプルにそれです」

俺は招きたい五人の方も見て告げた。

「一応衣食住はあるからそこは心配しなくていいですよ。その点では問題なく俺達は生活してます」

田茂はしばらく首をヒネっていたが、山根と目配せをすると頷いた。

「ああ、それでいいなら異論はないな。うちも衣食住はあるが……正直なところ大所帯になって、少し大変なとこもある。人数が増えれば増えるほど必要な物資もスペースも増えるからな。それに…………これが一番の理由だが、今後収容人数が一気に増える可能性が出てきた」

そう言いながら田茂が視線を向けたのは隼人の方だった。

何か考えていることがあるらしいが、その内容までは口にせず、田茂は監禁されていた五人組に歩み寄りながら次の言葉を言った。

「九重君の言う事なら信用できるはずだ。衣食住はしっかりあるだろう。俺もどこに住んでるかは知らないが、彼は嘘をついたことはないし、助けられっぱなしだ」

田茂と俺の言葉を聞いた五人はしばらくひそひそと小声で話し合っていたが、3分ほどすると、ボロボロのジャケットを着ている短髪の男が一歩前に出て来た。

「よくわかんねえけど、飯が食えて寒さがしのげるならどこでも俺達はオッケーだ。あんた……九重だっけ? に皆ついてくよ。よろしくな!」

短髪の男は俺と顔の高さでガッチリと握手をしてきた。

俺もその手を力強く握り返した。五人を助けてトンネルを歩いているときから考えていたことがうまく運んだんだからな。まさにガッチリ握手をする場面だ。

そして話も済んだので、俺は自警団の人と別れ、五人組をマンションへと案内しつつ帰っていった。

しばらく歩いて、俺は五人とともにマンションの門に無事たどり着く。

「ここが、俺達が暮らしてるところだ」

そして門を次々にくぐっていった。