軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あの時の!

助けてください。

この地下室にいた人はたしかにそう言った。

「それは魔獣から?」

「いいえ、違います。順を追って話すね。ここについて知りたいって言ってたから、まずはそこから」

ショートカットの女性は、手を広げてこの地下室を指し示す。

「あの大異変によって、たくさん建物が壊れたよね? それで、残ったのも半壊したりして……それだけじゃなくて、自然も変な影響受けちゃったところがあるみたいなんです」

「ああ、それなら見たことがある」自然公園のように。

「だったら話が早いですね。あのトンネルはそのせいでできたものみたいなんです。もちろん、元々あんなものあるわけないしね。ここはもとはスーパーマーケットの搬入口に続く倉庫です。でも、それが地殻変動で沈んで、見ての通り地下に埋まったんです。そして崩れた壁の奥がトンネルになっていたいう事情」

たしかに、そう言われるとそんな気がする。スーパーの倉庫は見たことないのでイメージだが。

そして元々はここは地下室ではなかったのか。今は少し沈んでいるだけで。

そう言われてみると、極めて緩やかにトンネルは上り坂になってたような気もする。深い地下から地面すれすれまで上がってきていたようだ。

「こっちに来たら搬入口との境のシャッターあるっすよ! 壊れてるけど」

と山根も言っている。

田茂も腕組みしたままじろじろと周囲を伺っている。

「倉庫なら色々製品があるんじゃないのか?」

「もう何ヶ月も経ってるから、奴らが全部持っていっちゃいました。もちろん、私たちだけが力仕事をやらされた……! 段ボールの中身は奴らが持っていったのに!」

「奴らっていうのは?」

「国道沿いを縄張りにしてるあくどい奴らです。自分たちより弱い者を奴隷にして、こき使っている最低な奴らです!」

……!

国道沿いってまさか――そうか!

「そういうことか! あのトンネルが南へ南へと伸びてたのか!」

「そうそう、理解が早い! ……って言っても、私たちはあのトンネルの先に行ったことはないんですけど。方角的には駅の方に伸びてるなって思ってただけで。山根さんから聞いて、本当に駅に行けたんだって」

全てが繋がった。

マンションから南の国道の辺りを縄張りにしてるヤバい奴らがいる。そいつらは他人を奴隷にしてこき使って、物資を集めたりしていた。

俺も以前カメレオンの能力で身を隠してたヤツ含む3人組に襲われたし、自警団の人たちの宿敵でもある。

そいつらがこき使う奴隷がいるなら、その奴隷たちを監禁する場所もあるはずだ。

それがここ。

駅前駐車場と地殻変動でできたトンネルで繋がってはいるが、トンネルにはモグラ魔獣が待ち構えているし、駐車場にもネズミやその他諸々の魔獣もいるから彼女たちはトンネルを通って逃げ出すことはできなかった。実質閉じ込められているのと同じことだ。

そこに俺達が偶然やってきた。

「この店の名前わかる?」

「Nマート。売り場は完全に崩れちゃってるけど」

あれか、国道沿いにある格安がウリのスーパーマーケット。俺も行ったことがある。バターロールが甘くてうまかった記憶があるな。

たしか駅からはかなり離れていた。直線距離で2,3キロあったような気がする。

まさか北から南まで地下を何キロも大移動するとは……崩壊世界は飽きないな。

「ねえねえ! このトンネルから来たってことは、魔獣を倒したってことですよね! さっきも言ってたし!」

「ああ、相手がモグラだから土の中に潜んでないとは言い切れないが、襲ってきたやつは全員倒した。なかなか魔石がおいしかったな」

「だったら、そこから逃げられるってことだよね!」

「そうっすよ! 奴らが来る前に逃げましょう! 俺達も帰りたいっす!」

奴隷にされていた人たちと山根一行たちが、どっちもここから出ていけると知って盛り上がっている。俺は田茂と視線を交わした。

「そうだな、そいつらが来ると面倒だし、今のうちに――」

ガチャ、ガチャ。

ガコン。

南京錠を外すような音が、部屋の奥から聞こえてきた。

これはまさか。

「ここ、シャッター以外のドアも?」

「もちろん倉庫だからあるよ、売り場の方への扉。南京錠で奴らが閉めてて閉じ込められてるけど――」

ギギギ、と建物の半壊で建付けの悪くなったドアが開く音がした。

そして、

「なっ!? なんだてめえらは!?」

錠を外して入ってきた四人組の、驚愕した声が地下室に響き渡った。

南の暴君どものお出ましだ。

「君たちは下がってて。ここは俺達が」

「う、うん。気をつけて!」

囚われていた人たちがトンネルの際にさがり、代わりに俺と田茂、そして山値一行の6人が前に出て暴君たちに接近した。

「なっ!? なんだお前達は……あっ!?」

「あ、あの時の」

四人の中の一人に俺は見覚えがあった。

そうだ、あれは騒音問題解決のために、天音とアンドラスといっしょに魔石のたくさん詰まったマンションに行ったときのこと。

俺達を襲って魔石を横取りしようとしてきた奴らの、あの三人組の中の筋力強化のマホウを使う男だ。

「コウモリに襲われたけど無事だったんだな」

「あの時はよくもやってくれたなあ……! いやそれより! なんでてめえが!? よく見ると……自警団の野郎までいるじゃねえか!」

「別に今日はお前たちに用があったわけじゃないが、自警団としてはこの人たちにしている仕打ちを見逃すわけにはいかない。覚悟してもらおうか」

田茂がじりじりと近づいていく。

南の四人組は「おい、どうする?」「結構多いぞ」など対応に迷っているようだ。

「弱気になってるんじゃねえよ! だいたいてめえらどこから来たんだ!?」

「もちろん、トンネルだ」

「トンネル? 馬鹿なあそこはクソッタレなモグラの魔獣がいて通ろうとしたら土の中に引きずり込まれるだろ」

思ったよりエグいことする魔獣だったんだなあいつら。

やられなくてよかった。

「それならここに来る間に倒してきた」

「なっ!?」

四人組がさらに動揺した。「あれ倒したって?」「私たちはあいつがいるからトンネルの先は行けなかったのに」「めちゃくちゃつえーんじゃ……」

トンネルは空いてたけど、魔獣で危険だから実質行き止まりみたいなものだったと。囚われていた人にとってもこいつらにとっても。

ということは、実力でいえば俺達の方が。

「ピーピー騒いでんじゃねえ!」

「でも隼人よぉ、あれ倒したんならこいつらつええし……」

おいおい、なんか向こうの方で勝手に揉め始めたぞ、

「俺はな、こいつのせいで痛い目に会ったんだ」隼人と呼ばれた、以前にも会ったことのあるコウモリにやられた男――は、俺の方に振り向いた。「てめえのせいで体中コウモリに引っかかれるわ、その後は原因不明の高熱が出るわ、幹部からは詰められるわ、散々だったんだ。今日はぜってえぶっ殺す!」

「全部自分が悪いことしたからだろ」

「うるせえ! 正論なんて聞きたくないね! お前らも怖気づいてんじゃね……え?」

隼人が振り返ったとき、しかしそこには仲間の姿はなかった。

叶わないとみるや三人はさっさと入ってきたドアから逃げ出そうとしていたのだ。

「わり、隼人。俺達ボコられたくないんだわ。じゃな」

「ば、ばかやろおっ!? 俺を一人にするな! く……く……くっそがああああ! 一人でもやってやらああああ!」

筋力増大のマホウを使い、隼人は俺に飛びかかってきた。

俺と自警団のあわせて六人はすかさず戦闘態勢に入り――。

「ち、ちくしょう……!」

三分後、隼人が縛られて地面に転がっていた。

まあそうなるだろうな。6対1だし。