軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

思い出した

台詞を遮られた天音が抗議の視線を俺に向けてくる。

しかたないんだ、このままだと余計なことを話してしまいそうだったから。

「難しいとはどういうことだ? 何か事情が?」と田茂が訊く。

「一緒に来たらどうだという申し出はありがたいんですけど、俺たちはここにいる3人だけじゃないんです。俺たちが拠点にしてるところにはもっとたくさんの人がいるんです」

「なんと、そうだったのか。我々が知らないそんな大勢力が」

「大勢力っていうほどではないですけどね。ただ、それなりの人数でそれなりのルールとかやり方があるんで、他のとこに入ってやるよりは自分達の今のやり方を続ける方がいいかなと。3人だけなら身軽だから合流してもよかったんですが」

田茂は顎を撫でながらゆっくりと頷いた。

「なるほど。それもそうだな。では、お互い気になることがあったり、何かあった時は協力することにしよう。それくらいならば……」

「もちろん、こっちから希望します」

「ああ。そうしよう。それでは俺たちはパトロールを続ける。まだ奴らの仲間がうろついてるかもしれないからな。君達も気をつけたまえ。……皆、行くぞ!」

田茂の号令で、自警団達は去って行った。

俺たち三人はCDショップの前に集合する。

と、天音が俺の胸を人差し指で突っついてきた。

「なんで隠したの?」

「何を?」

「とぼけないで。天音が説明しようとしたら遮って適当なこと話し始めたじゃない。マンションのことを隠したまま」

「そんなことしてたんですか九重さん! 彼らにもマンションのことを話して、住んでいただけば喜びますよ!」

「そうよ、喜ぶかはどうでもいいけど、頭数が増えたらマンションの改装なんかも一人頭の負担減るじゃない」

俺は二人から詰められるが、まあ落ち着いてくれ。

「ちゃんと理由はある。あの人達、大人数で集団生活してると言ってただろう?」

「ええ、そうね」

「で、うちのマンションだが、空き部屋は数軒しかない。全員を住まわせるのは無理だ。そうなると、誰が住むかっていう問題になる。当然、マンションに住む方が快適だ。大勢いる中で特定の人達だけが快適な暮らしを享受できるようになり、残りの人達は不便な暮らしのまま……そうなれば不平不満で分裂しかねない」

「なるほど! 言われてみればそうかもしれませんね」

「相手が分裂するだけならまだしも、その切っ掛けを作った俺たちにまで矛先が向いてもおかしくない。黙っておいた方が無難ということだ」

二人はなるほど、と似たような姿勢で納得している。

と、日出が顔を上げた。

「でしたら、一部屋に複数人入ってもらうというのはどうでしょうか?」

「あ、それならいけるわね」

「それこそダメだろう。俺たちは個室で悠々暮らしてるのに、自分達は数人一部屋っていうんじゃ俺たちに対して不平不満がダイレクトにくる。空き部屋はもっと少人数の人のために開けておくさ」

「なるほど。誰も彼も勧誘すればいいというわけでもないのですね」

「ま、天音達に迷惑がかかるかもしれないっていうなら、そこまでして招く必要はないわね」

そういうことだ。

ただ、情報交換などで協力し合えば得なことは間違いないから、そういったことはしていこうと思う。

他の人達がいるっていうことは、必ず何かをもたらしてくれるはず。

さて、それじゃあ東側の遠征を再開しよう。

「なーんか色々あった気がするわね」

その日の遠征から戻ってきた夕方、リサイクルボックスに魔石を入れながら天音が言った。

「多くの人と会いましたし、CDも見つけましたしね。ただ、魔石はそこまで多くはありませんでしたねえ」

同じく魔石を投入しつつ日出。

「ああ。東は魔石はそれほど、その代わり物資が見つかる可能性が高めってとこか。あとで地図にメモしておこう」

俺も魔石を投入していく。

「せっかくだし、天音もCD聴けるの通販で買おうかな。いくらくらいだった?」

「1000MPもかからないくらいだ。全然行ける」

「それならアリね。せっかくCDもいい感じの何枚も手に入れたし、今日から音楽も楽しませてもらお」

俺も楽しみだ、部屋に戻って今日拾ったCDを聴くときが。

解散して各々の部屋へと戻ると、俺は早速買ってあるCDプレイヤーに今日拾ったCDのうち一枚を挿入した。

聞き慣れた、しかし今の世界では初めての歌声が鼓膜を刺激する。

やっぱりいいなこの歌手は。

アップテンポでノリがいいんだけど、ラスト30秒で切ない旋律がとって変わる、この切り替わりがいいんだよ。そこにロングトーンの歌声があわさると最高なんだ。

「曲と歌詞が完璧なフュージョンをしている。はぁ……次のCDも聞こう」

拾ってきたCDを次々と再生していく。

目を閉じていると昔の日常が帰って来たような錯覚をするな。

いかに身の回りに音楽が溢れていたかってことをあらためて認識した。

「日常が帰って来たと思うほど、充実してきたんだなマンションの状態」

マンション内にいる限りはもう以前と同じといっていいかもしれない。

まあ、スマホとパソコン(インターネット込み)がないという致命的な弱点はあるが。それ以外はもうほぼ整ってきた。

中だけじゃない、外で受けるようなサービスまでサービス通販のおかげでやれるしな。髪を切るのもマッサージも、値は張るから実質は無理だけど理論上は美容室みたいに部屋ごと整えて、そこに行くことだって可能。

「………………美容室を作れる?」

頭の奥で何かが噛み合った気がした。

待てよ、もしかしたら……。

自警団……美容室……そして星魔石。

これだ!

「これ、きっといけるぞ。明日皆に言ってみないと」

もしかして音楽が脳に刺激を与えてくれたのか、これまでにない発想が浮かんできた。

明日は朝一で会議の開催だ!