軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

MMP

俺の杖を使え?

天音がそう言ったのは、おそらくさっきやったように足場を作れということだろうが、しかしこの高さでは足場を作ってもなお隆起した地面の上には届かない。

「いいからいいから」

しかし天音は俺の考えをお見通しといわんばかりに、自分の胸の辺りの高さを示している。何か考えがあるってことだろう、だったらとその高さに杖のシールドを利用した足場を作った。

「ほんと便利ね、その杖。じゃあちゃんと足場出しててちょうだい……しょっと」

天音は足場の上に乗ると、立ち上がり両手を自分の胸のあたりでかざした。

「ちゃんと見ててね私のマホウ!」

すると、かざした手の前に俺が杖で作ったシールドと同じものが現われた。

「おおっ!? 九重さんのと同じのが出たよ! しかも手から! 魔法の手ってこと?」

「これが私が手に入れた力―― 再現(リプレイ) 。私の周囲で起きた現象をもう一度起こすことができるのよ。結構便利でしょ?」

得意げに口の端を持ち上げると、天音は新たに作り出した足場に乗り、二段階分の高さを利用して隆起した地面の上まで至った。

「ほら、上に登れた!」

「おおー、すごい天音さん、私も登る!」

続いて雪代も俺の杖で出した足場と雪代の再現した足場を登り、隆起した台地の上へと無事に至ることができた。

再現(リプレイ) 、かなり便利そうな力だな。

なんでも二倍にできると思えば、元になる良いものがあれば可能性は相当広がる。今は足場にしたけど、普通に盾を二重にしてもいいし、攻撃の杖を再現すれば矢を二倍撃てるわけだし魔獣退治にも便利。

他にも杖に限らずなんでもこういうことができるなら、相当幅広く利用できる。天音が行動を共にしてくれるのはかなり助かりそうだな。

「九重さんも早く来なよー」

台地の上から雪代が呼びかけてきた。

そうだな、俺も上に登るか………………あれ?

一段目の俺が杖で作ってるシールド、これって俺が杖を持って発動してないと出ないんだけど。

ということは杖を握って力を発揮しながらこの足場に乗らなきゃいけないということになるんだけど、それって不可能では。

あ、詰んだ。

「すごいわね、これ。近くで見ると本当に異様な何かを感じるわ」

台地を登った俺たちは謎の樹木の根元まで来ていた。

その中の一番根元に、見えていたアメジストのような魔石の球が収まっている。

……結局、俺もなんとか上に来ることが出来た。

無理だから二人に採ってきてもらおうかと思ったのだけれど、俺の方が身長が高い分、天音に高めに 再現(リプレイ) してもらった足場一つでなんとか足りたのだ。

先に登った二人の補助もあったし、天音じゃないけど世界崩壊からのサバイバル生活で俺たち皆が体力ついててよかった。

そうして俺たち三人無事に青い木の聳える地面に登ることができ、そして、間近まで近付いてきたのだった。

「本当に変わった木……っていうか……なんていうか……なにこれ?」

「さあ……なんだろうな」

透明な木の抜け殻のようなものの根元に、黒に近いほど濃い青紫の球があり、それが全体を照らして薄らと青紫に光らせている。

正直これが何なのかは謎でしかない。元は木だったのか、あるいは大異変によって生み出されたまったく異なる存在なのか、完全に謎だ。

しかしわかることと重要なことは、これの核に特殊な魔石があるということ。

そして、この抜け殻はスカスカ……透明なため遠くからではわからなかったが、すぐ側まで来ると、透明な殻には木のうろのような穴が多数開いていて、そこから容易に中に入ることができた。

そうなればもう邪魔するものは何もない。

俺たちは中に踏み入り、根元にあるアメジスト色の魔石球をあっさりと手に取った。

サッカーボールくらいの球体は両手のひらの上で紺紫色に静かに輝いている。不思議なことに、遠くから見ていた時と、間近で見ている今とで同じくらいの明るさの光を放っているように見える。

距離に関係なく同じ明るさで見える……さすが神秘の魔石、不思議な性質があるものだ。

「はぁー! ようやく手に入れた! 見つけてからずいぶんいろんな変な現象に足止めされちゃってたよね。障害物競走かってくらいに」

雪代が俺の手の平の上の魔石をぺちぺちと叩く。

それを見た天音もバシバシと魔石を叩いてみている。

「本当にそうね。蟻地獄にも捕まるし、ここに登るのも一工夫いったし。でも、本体はあっさり取れたけど」

「まあ、ここまで来るのに苦労したのにさらに追加で面倒ごとがあったらさすがにしんどいからな。何もなくてよかったってとこだ。これでお目当てのものも手に入れたし」

「うん、帰ろう。疲れたよ私~」

だらんと腕を垂らした雪代を先頭に、俺たちは公園の最奥を離れ、公園の出口へと向かって行った。

……と、歩き始めてすぐに天音が足を止める。

「どうかした? 天音」

「ええと……これから九重くん達は家に、マンションに帰るのよね?」

「ああ、今日はもう十分収穫あったしな」

「天音もマンションに行っていいかしら? その、遊びに行くんじゃなくて、天音も住みたいなー……って」

バツが悪そうなのは公園に来る前のことがあるからか。

だがそんなことは気にするほどのことじゃない。

なぜならうちのマンションの方針はシンプル。

「もちろん、うちは来る者拒まず、空き部屋がある限りは」

「そうそう。これからよろしく! 天音さん」

「……ふぅ、よかった。ええ、よろしく。どんなとこか見るの楽しみね!」

そして俺たちは、見たことのない魔石だけでなく、見たことのない力を持った新たな住民も得て、自然公園の探険を終えた。

「………………信じられない。どうみてもマンションじゃない」

マンションに来た天音は、驚きに言葉を失っていた。

帰り道に一通りの説明はしているが、実際に見るのとは違うよな。

「まあ、マンションだからな」

「信じられない、しかも畑もあるし芝生もあるし木陰もあるし、天音がガレキを枕にしてる間にこんなところで暮らしてたなんてずるすぎないかしら?」

「ずると言われても」

「天音もこれからはここに住めるのね。ふふ、いいじゃないいいじゃない」

明らかにウッキウキだ。

ま、こっちも住民が増えればお得だしWin-Winだな。

さて、天音が喜んでいる間にこっちは魔石を換金、いや換MPしておくか。

リサイクルボックスに行き、雪代とともに魔石を投入していく。

すると数字を表示するモニターに『45200MP』と表示された。

「おおー、すごいね九重さん!」

「ああ、一人頭じゃこの前の魔獣討伐以上か? ……ん?」

その時、数字がバラバラに砕け散った。

こんな演出これまであったか?

と思っていると、バラバラに砕けた破片が金色に輝きながら再び集まり、新たな文字を形成していく。そして、画面には金色で、

『MMP獲得。

初めて星魔石を投入したことにより、マンション機能拡張が解放されました』

と文字が表示された。

「え? 何? どういうこと?」

「MMP……?」

MPとは別のものか?

そして星魔石? マンション機能拡張?

まさか……!

確かめるために自分の部屋に駆け戻り通販端末を立ち上げる。

画面を探すとこれまでに無かった『マンション管理』という項目があり、急いでそれをタップすると。

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マンション機能拡張ツール/要星魔石/必要MMP 1

・敷地拡張

・タワマン化

・豊饒の大地

・マンション外監視

・第二マンション建設

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新たな何かが始まった。