作品タイトル不明
0806 ケーキ友
『十号室』対王国騎士団模擬戦の数日後。
「アベル陛下、ゴスロン公宮よりの 親書(しんしょ) をお届けにあがりました」
「おうパウリーナ船長、久しぶりだな」
スキーズブラズニルのパウリーナ船長が、自国からアベルへの親書を持ってきた。
スキーズブラズニル号は、パウリーナ船長らゴスロン公国の船員によって操られ、整備と管理もゴスロン港で行われることになっている。
ゴスロン公国はファンデビー法国の周辺国であるだけでなく、歴代の教皇を多数 輩出(はいしゅつ) していることもあり、他の西方諸国家との関係も非常に良い。
アベルは親書を受け取ると、さっそく読む。
「これは……」
内容を理解すると言葉を失う。
「下船される際、ナイトレイ王国はミトリロ鉱石を探していると、陛下はおっしゃいました」
「ああ、言った。もしその情報が入ってきたら教えてほしいとも言った」
「公宮の知り合いに、それとなく話を流したところ、そのような情報が入ってきました」
「公宮の知り合い? 親書で届けられる情報?」
「もうしわけありません、陛下。あまり詳しくは……」
「ああ、いや、すまん」
アベルは謝罪する。
状況から考えて、パウリーナ船長は公族と親しいのだろう。
文面からみて、それは恐らく公太子……。
親書には……。
「マファルダ共和国が、ミトリロ鉱石の在庫をさばく相手を探していると書いてある」
「はい」
「量などは聞いているか?」
「 精錬(せいれん) された状態で、一千キロ前後とか」
「鉱石の状態ではなく、精錬された状態?」
「はい。ですので正確には、ミトリロ塊で一千キロ前後です」
「……かなりの量だな」
アベルは想像して、小さく頷いた。
「共和国は、自国で使わないのか?」
「非公式の情報なのですが、十分に使い、この先の補修分を差し引いた残りが、その量だそうです」
「とんでもない量を確保していたんだな。さすが海洋国家」
「法国を中心とした、多くの西方諸国を相手にし続けていますから」
「そうだな。それくらいの経済力を持ってなければ飲み込まれるよな」
パウリーナの説明に、頷くアベル。
マファルダ共和国は、西方諸国唯一の共和国だ。
さらに、歴史的にファンデビー法国ならびに周辺国とは対立関係にある海洋国家でもある。
西方諸国と中央諸国の間を試験航行しているスキーズブラズニル号を造船したのは、マファルダ共和国の商会である。
そんなマファルダ共和国は、ゴスロン公国との関係も良い。
隣国の中で、唯一、一度も共和国と戦争をしたことのないのがゴスロン公国である。
また、ゴスロン公国民は同じ海洋国家である共和国市民との仲が良く、公国民が共和国で船乗りとしての訓練を受けることもある。
ある意味、共和国にとって、ゴスロン公国は他の西方諸国との仲介をしてくれる隣国なのだ。
そのためにゴスロン公国は、共和国がミトリロ鉱石……いや、ミトリロ塊をさばく相手を探しているという情報を得ることができた。
ゴスロン公国以外には、マファルダ共和国の味方をしてくれる国家はないため、大量のミトリロ塊を売る相手もいない。
もちろんそうは言っても、西方諸国と共和国間で水面下での取引は行われてきた。
密貿易だ。
しかし、大量のミトリロ塊を密貿易でさばくのは非現実的。
ミトリロ鉱石にしろ塊にしろ、一般人は使うことはない。
存在すら知らないまま一生を過ごす人の方が多いだろう。
ミトリロ鉱石が使われるのは、主に武器製造。
それも、普通の冒険者や騎士、兵士などは使わない。
となれば、一般には流通などしない。
政府同士が交渉することになる。
「共和国に人を送るとなれば、一人しかいないだろう」
「まあ、そうでしょうな」
アベルが小さく首を振り、隣で聞いていたヒューも肩をすくめる。
パウリーナだけが首を傾げている。
「で、そのリョウは?」
「さっきイグニスと会って……コソコソと二人で出ていったな」
「コソコソと出ていった? ああ、隣だな」
アベルは、涼がどこに行ったのか理解していた。
「アベルの 凶刃(きょうじん) を逃れてカフェに来る。これほど素晴らしいことはありません」
「アベル陛下の凶刃ですか?」
「ええ。イグニスさんは貴重な人材なので大切にされているでしょうけど、僕みたいな 一介(いっかい) の魔法使いは、アベルの恐ろしい 刃(やいば) に日々 怯(おび) えながら生活しなければならないのです。それはもう、本当に恐ろしい……」
イグニスの疑問に、涼は真剣な表情で答える。
そう、表情だけは真剣に。
言ってる内容は、ただのアベルに対する風評被害を生む、 風説(ふうせつ) の 流布(るふ) である。
そんな風評被害をまき散らす水属性の魔法使いは、首席交渉官とカフェ・ローマーに入った。
今日はあまり混んでいない。
とはいえ、空いているテーブルは三つくらいだが。
二人が席に通される。
隣の席では、一人の男性が届いたばかりのケーキに目を奪われていた。
その男性をチラリと見て、涼は首を傾げる。
「ああ、確か先日……」
「その節はどうも」
涼が思い出し、相手の男性も涼を覚えていたらしい。
そう、相席になった人物だ。
「おぉ、今日はショコラ・ムースなのですね!」
「はい。先日食べていらっしゃるのを見て、今日はこれにしようと」
「素晴らしい選択をされました。その思いは裏切られません」
「そうですか! 良かったです」
笑顔の涼と笑顔のハーグ。
それを見守るイグニスも笑顔。
美味しいものは正義であり、正義は笑顔を生むのだ。
「私の記憶が間違っていたら申し訳ないのですが、先帝陛下のお小姓のハーグさんですよね?」
「はい! あ……確か、王国の交渉官のイグニスさん」
イグニスとハーグが挨拶をし合う。
「おぉ、二人ともご存じなのですね」
涼が驚く。
「いや、私がイグニスさんを知っているのは当然でしょうけど、イグニスさんが私なんかを知っていたのが驚きです」
「人の顔と名前を覚えるのは得意な方なんです」
ハーグが正直な気持ちを言い、イグニスが苦笑する。
「リョウさんは、紹介は?」
「いや、まだでしたね。僕の名前は涼、王国の冒険者です」
「おお、護衛の冒険者ですか」
イグニスが促し、涼が自己紹介をし、ハーグが頷く。
誰も、何も、嘘はついていない。
涼とイグニスが注文し、再び三人の会話が再開する。
しかし、それは長く続かなかった。
強面(こわもて) の 巨漢(きょかん) が入口から入ってきて、三人の方に向かってきたのだ。
「アベルの言う通り、ここにいたな」
「え? ヒューさん? どうしてここに」
「アベル……陛下がお呼びだ。カフェ・ローマーにいるだろうから、連れてこいだと。悪いがイグニスも一緒に来てくれ」
ヒューはそう言うと、二人の反応を待たず、涼の 襟首(えりくび) をつかんで立たせ、引っ張っていく。
「ちょ、ちょっと待ってください。僕はケーキとコーヒーを……」
涼の 断末魔(だんまつま) が響く。
驚く 給仕(きゅうじ) にヒューが告げる。
「すまんが、こいつともう一人が注文したケーキ、包んで隣の王国宿舎に持ってきてくれ。会計は宿舎で行う」
「え? それって、ケーキは使節団が 奢(おご) ってくれるってことですか?」
「あ? ああ、まあ、いい。それでリョウが抵抗しないなら奢ってやる」
「わ~い」
涼は喜びながら引きずられていった。
「呼ばれたみたいなので、失礼しますね」
「はい……」
笑顔で席を立つイグニス、じゃっかん状況の変化についていけないハーグ。
だが、目の前にあるショコラ・ムースを見て、驚きから立ち直った。
「リョウさんもイグニスさんも大変だ」
そう苦笑すると、再びショコラ・ムースにフォークを入れ、食べ始めるのだった。
ヒューに引きずられた涼が執務室に入った時には、すでにパウリーナはいなかった。
代わりに『十号室』の三人がいた。
それを見て、涼はピンと閃く。
「アベルが僕を呼び出したのは、ニルスたち三人への訓練量が全然足りないと言うためですね!」
「ああ、違う」
「大丈夫です。明日から、量を倍にします……え? 違う?」
「ああ、違う」
涼が首を傾げ、アベルは頷く。
『十号室』の三人が、少しだけ震えたのは内緒だ。
「パウリーナ船長経由で、ゴスロン公国から情報が入った。例のミトリロ鉱石……いや正確には、鉱石を精錬して純度が高くなったミトリロ塊を、マファルダ共和国が売りたがっているそうだ」
「おぉ!」
「それで、リョウに買い付けに行ってもらいたい」
「もちろんです! お任せあれ」
涼が 恭(うやうや) しくお辞儀する。
涼だって、優雅なお辞儀くらいできるのだ。
「その護衛を、『十号室』に依頼したい」
「は、はい! もちろんです! お任せください!」
ニルスが直立不動になって依頼を受ける。
エトとアモンも笑顔で頷く。
「国王陛下からの指名依頼だからな。最大級のギルド貢献ポイントが入るぞ」
笑いながらそう言うのは、ヒュー・マクグラスだ。
「いずれはA級にも上がれるかもしれんな」
「楽しみだ」
元A級剣士アベル、元A級剣士ヒューが笑いながら話す。
「A級……」
ニルスもエトもアモンも、あまりの遠い目標に言葉が切れる。
「A級なんて小さなところを目指していてはダメです! 目指すはSSSSSSS級、通称Sセブン級です!」
「そ、そんな級があるのか!」
「いや、無いぞ」
涼が 煽(あお) り、ニルスが驚き、ヒューが否定する。
「も、もしかしたらあるかもしれないじゃないですか! 可能性が1パーセントくらい……」
「うん1パーセントもない。存在しない。グランドマスターの俺が言うんだから、間違いない」
涼の 妄言(もうげん) を切って捨てるヒュー。
グランドマスターは冒険者ギルドのトップだ。
そんなヒューが言うのだから、無いのだ。
「だいたいA級だってめったに出ないんだぞ? 国を代表する冒険者、と言われる連中だってA級に上がらないまま引退するのがほとんどだ」
「ぐぬぬ……」
「数十年前に、かなり久しぶりにS級に上がるんじゃないかと言われた剣士がいたらしいが……」
「おぉ! その人はどうなったんですか?」
「 大海嘯(だいかいしょう) 直後のダンジョンにパーティーで潜って、戻ってこなかった」
「ああ……」
ヒューが悲しい話を告げ、涼が悲しい顔になる。
「その時からだろ、大海嘯直後のダンジョンに潜るのが禁止になったのは」
アベルが言葉を受けた。
「そういえば、冒険者って、何級が一番上なんです?」
「制度としてはSSS級というのが存在するが……SS級以上に上がった記録は、ギルドにも残ってなかったと思うぞ」
「王城図書館の記録にも残っていないな」
涼の素朴な疑問に、ヒューとアベルが答える。
「実質的にはA級が最上位と思って問題ないだろう」
「そんな最上位を、三人は目指すのですね」
「え……ああ……そ、そうなるのか……?」
ヒューが言い、涼が頷き、ニルスが慌てる。
「おっと、話を戻すぞ」
そう言ったのはアベル。
「さっきも言った通り、リョウには俺の代理としてマファルダ共和国にミトリロ塊の買い付けに行ってほしい」
「はい」
「その護衛を『十号室』に依頼する」
「承知いたしました」
「とりあえずリョウには、先に使節団に渡しておいた五千億フロリンの信用状と、俺が新たに出す五千億フロリンの信用状、合せて一兆フロリン分を渡す。正直、一千キロ前後のミトリロ塊というのが、いくらになるか分からん。足りない場合は、さらに追加で俺が信用状を発行する」
「一兆……」
アベルの言葉に、さすがの涼も絶句する。
『十号室』の三人など、口があんぐり開いたままだ。
ヒューですら、無言のまま小さく首を振っている。
「近寄ってくる者は敵とみなして、全員凍らせます!」
「うん、以前も言った気がするが、それはやめろ」
「大丈夫です。全てを終えて聖都に戻ってくる途中で、凍らせた人たちは解凍してきますから」
「大丈夫じゃないからな、それ」
お金に目がくらんだ涼がたわごとを言い、アベルがたしなめる。
お金は人を狂わせる。
「買い付けたミトリロ塊は、なんとかしてゴスロン公国に運んでくれ。最終的にはスキーズブラズニルで王国まで運ぶことになるから、それまでゴスロン公国内で預かってもらえるように話を通しておく」
「分かりました。やっぱり大量の物資を運ぶのには、船が一番ですね」
「陸上を、馬車を連ねていくよりはいいな」
涼が何度も頷き、アベルも同意する。
西方諸国と中央諸国の間を馬車……想像しただけでも現実的ではないと思える。
「グラハムには、明日にでも話をつけにいく」
「そうでした! 絶対ですよ? 以前なんて、共和国から船を買っただけで、『 利敵(りてき) 行為だ!』って言われて怖い四人の司教に襲われちゃったんですから」
涼は顔をしかめて首を振る。
ゴスロン公国で手続きをして、聖都に戻る途中で『教皇の四司教』に襲われたのだ。
「もう、そういう暗殺者的な者たちはいないと聞いたぞ?」
「そんなわけないでしょ。表に出てこないようにしただけです。まったくアベルは甘すぎます」
チッチッチと人差し指を左右に振る涼。
「だいたい、暗黒大陸でグラハムさんの周囲を守っていた異端審問官の人たちが、そもそもその系統の人たちじゃないですか」
「対ヴァンパイアのための集団だろ?」
「そうですけど、ヴァンパイアと戦えるということは、人間なんて簡単に殺せるということでしょう?」
「まあ、そうだな」
涼の主張を受け入れるアベル。
否定する根拠は持っていないので。
「共和国に行くまでに、いくつか西方諸国を抜ける必要があるだろう。身分証明みたいなのがなかったか?」
「『聖印状』ですな。教皇庁が発行する身分証明書みたいなものだと」
「今回も、それを出してもらえるように言っておく」
ヒューが答え、アベルが頷く。
「グラハムさんに直接言ってくださいね! 涼が欲しがっているから、絶対出してくれって。出してくれないと、僕が教皇庁の中で暴れるって言ってたって」
「うん、そういうことを言うのはやめろ」
アベルは首を振りながら言う。
「まったく、アベルは経験していないから、そんなことが言えるのです。魔法使いが魔法無効空間で戦うのって大変なんですよ?」
「その戦いで、その魔法無効化の錬金道具を手に入れたんだろう? それでミトリロ鉱石が必要になっている」
「全ては繋がっていますね」
なぜか偉そうに腕を組んで言う涼。
「出発は一週間後だ」
出発までの一週間、涼たち四人は思い思いに過ごした。
ある者は剣の訓練に明け暮れ、別のある者も剣の訓練に明け暮れ、さらに別のある者は杖術とエンチャントの魔法に磨きをかけ……。
別の一人、水属性の魔法使いも決して遊んでいたわけではない。
しばらく聖都を離れるための準備をいくつも行っていた。
それは例えば、大切なゴーレムを預けている王国騎士団に挨拶に行ったり……そこでは、衰えないどころか以前以上に溶け込んでいた四号君の人気を確認し、嬉しそうに頷いたり。
他にもいろいろ頑張った。
その中には、『調査』を意識したものもあった。
「共和国に旅立つ前に、もう一度、カフェ・ローマーに寄っていきましょう。『ショコラ』の食べ比べ調査のためです!」
涼はそう思い立ち、周りを見回したが『十号室』の三人は見つけられなかった。
小さく首を振ってお隣に行く。
「ああハーグさん、こんにちは」
「リョウさん、どうも」
混んでいたカフェ・ローマーでは、再び相席となり……その相手は、再びのハーグであった。
今日は、果物がいっぱい入ったショートケーキ系のようだ。
「この後、また聖都を出発することになったので、ここに寄っておこうと思いまして」
「おぉ、ハーグさんもですか」
「リョウさんも、どこかに行かれるので?」
「はい、お仕事でちょっと外国に。ですので、その前にケーキをと」
「分かります、分かります」
涼の言葉に、何度も深く頷くハーグ。
旅に出る前には、一番好きなものを食べておく……これは当然のことなのだ。
聖都においてそれは、ケーキ。
少なくとも二人にとっては、このカフェ・ローマーのケーキセットなのだ。
「以前行ったことのある場所ではあるのですが、今回は他の人も連れていくんです。しかも以前行った時は、いろいろトラブルに巻き込まれましたので……」
「ああ、それは心配ですね。やっぱり心配を解消するには、甘いものですよね」
「そうなのです! さすがハーグさんは分かっていらっしゃる」
「いやいや、そんな」
涼が上機嫌で言い、ハーグも照れながら 謙遜(けんそん) する。
そこで少しだけ 逡巡(しゅんじゅん) してから、ハーグは言うことにした。
「実は、リョウさんの正体を知ってしまいました」
「はい?」
「ナイトレイ王国筆頭公爵、ロンド公爵リョウ・ミハラ殿だったのですね」
「ああ~」
頷く涼。
「実は私はハーグ以外に名前がありまして……」
「いえ、ハーグさんはハーグさんです」
「え?」
涼が止め、ハーグが驚く。
「たとえ、帝国に戻った場合の名前がハーゲン・ベンダ男爵で、<転移>や<無限収納>を使える方だったとしても、この西方諸国での名前はハーグさん。先帝陛下付きの小姓で、カフェ・ローマーが好きな、僕にとってのケーキ友です」
「私のこと、知ってて……」
「イグニスさんが教えてくれたとか、そんなことはありません。今僕が言ったのも、ただの独り言です。ほら、勝手に身分を明かしたらフィオナ様とか、爆炎のなんとかに怒られるかもしれないでしょう? だから今のは僕の独り言です」
「はい……感謝します」
涼の言葉に、小さく頭を下げるハーグ。
ハーグの心には、申し訳なさがあったのだ。
ちゃんと正体を告げるべきなのではないかと。
だが自分は、帝国全体でも非常に特殊な位置付け……帝国軍付き男爵。
身分を明かすのも、自分の意思だけでは難しい。
しかし目の前の王国筆頭公爵は、それら全てを理解した上で『ケーキ友』と言ってくれた。
ハーグには、それが本当に嬉しかった。
かたや王国の筆頭公爵、かたや帝国の軍付き男爵。
王国解放戦の際は、戦場でまみえたこともある……もちろん、直接剣を交えたわけでも魔法を撃ちあったわけでもないが。
しかし、そんなことは関係ない。
ケーキの前では無意味。
帝国に対して良い感情を持っていない涼ですら、ケーキ友たるハーグに悪感情は 欠片(かけら) も抱いていないのだ。
「ケーキって、すごいですね」
「まったくです」
ハーグがしみじみと言い、涼も深く頷く。
涼は確信している。
世界平和をもたらすのは、美味しい食べ物だと。
間違いなくこのテーブルの上には、平和が訪れていた。